ラヴィット!出演者を独自の視点で寸評してみた(5) 〜金曜レギュラー編〜

・野性爆弾 くっきー! (吉本興業)

 ラヴィットが従来の情報バラエティ番組とは一味違うその際立つ特徴を語る際、欠かせないのはこのくっきー!さんの存在になる。思い切って言えば、この番組の「らしさ」を象徴する人物。荒唐無稽な彼の芸風と番組の方向性が限りなく一致しているところが、ラヴィットが多くのファンから人気を得ている理由だと僕は思う。
 くっきー!さんと関係が深いMC川島の存在も確かに大きい。だが、これまで放送されていたワイドショー的な番組、あるいはヒルナンデスのような主婦層をメインターゲットとするような番組であれば、くっきー!さんがレギュラーとして選ばれることおそらくあり得なかっただろう。逆に言えば、くっきー!さんを選んだその時点で、番組が目指す方向性、すなわちその「色」は決まっていた。従来の常識にはとらわれない、これまでになかった「朝に面白い番組」を作りたかった。くっきー!さんの抜擢はまさにそのシンボルと言っても過言ではない。
 自前の小道具を使ったネタはもちろん、その独特のワードセンスやマニアックな題材を活かしたボケなど、生放送番組でもその「らしさ」を存分に発揮。そうした独自のボケを川島を含む周りの後輩から突っ込まれるのがお決まりだが、ただ好き勝手ボケるだけの芸人にとどまるほどこの人の実力は低くない。意外と言うほどでもないが、実はくっきー!さんはツッコミにも優れている。その独特なボケよりもさりげなく放つツッコミの方が個人的には印象に残る。30年近い芸歴を誇るベテランの力を感じるのだ。
 こうした唯一無二というか、少々荒くれた見た目、及びそうしたタイプのネタをする芸人は、実際は案外真面目というか、芸風ほど変わった人ではないというのが、これまで長い間お笑いを見てきた筆者の見解になる。裏ではしっかりしているというか、いわゆる「ちゃんとやればできる人」というやつだ。その芸風ほど実際はおかしくない人。そう言われてパッと名前が思い浮かぶのは、ハリウッドザコシショウだ。この人の芸風も言わゆるくっきー!的なタイプだが、R-1グランプリでは審査員を務めるなど、実際は真面目そうな常識人だというのが個人的な印象だ。あくまでも見た目やそのネタが突飛なだけで、キチンとしたトークで笑いを取ったり、周りに鋭いツッコミもできたりする、芸人として非常に優秀なタイプ。荒れているのはあくまでもキャラや芸風というだけで、本来キチンとなんでもできる人。ザコシショウ以外で言えば、ランジャタイの国崎和也にも似たような印象を受ける。実際、その芸風ほど国崎はおかしな人には見えない。あれ(芸風)はあくまでも計算で、本当は空気を読んだ立ち振る舞いもできるトークスキルに優れた優秀な芸人。僕にはそう見えて仕方がない。
 くっきー!さんも実際はしっかりしているというか、その芸風やイメージとは反対の、いわゆる真面目そうな芸人というのがこれまでに抱く率直な印象に他ならない。こうした生放送番組のレギュラーとして出演しながら、本来の姿、その優秀さを隠し続けることは難しいのだ。
 芸人としてそんな奥ゆかしさも併せ持つくっきー!さんの存在が、バラエティ番組としてのラヴィットのレベルアップに貢献していることは間違いない。

・太田博久&近藤千尋夫妻 (吉本興業[太田]、エイジアプロモーション[近藤])

 人気お笑いトリオ・ジャングルポケットのリーダー兼ネタ作り担当の太田と、ファッションモデルでありタレントの近藤さん。結婚したのは2015年。太田はジャングルポケットとして比較的早くからある程度活躍していたが、一方の近藤さんも、その結婚前からテレビにも多少は露出するそれなりのタレントだった。結婚前も両者の知名度はそれなりにはあっただろうが、結婚後、彼らのタレントしての活躍度、及びその知名度が大幅に上昇したことだけは間違いない。
 両者における報酬の差、その詳しいギャラ事情などは知る由もないが、タレントとしての活躍度が高そうに見えるのは太田だ。稼いでいるのは近藤さんのほうかもしれないが、このラヴィットを含め、バラエティ番組で思わず使いたくなるタレントに見えるのは、お笑いトリオのなかではイマイチ地味な存在に見える彼女の夫のほうである。
 近藤さんはひと言でいえば元気キャラ、もう少し詳しく言えば、ある程度おかしな発言も許された、いわゆるおバカなキャラだ。そんな隣に座る妻に合わせてベタにボケたりツッコミを入れたりする太田は、ともするとお安い存在に見えるかもしれない。だが、そうしたベタな夫婦芸がこの番組で抜群に効いていることも事実なのだ。レトロなタイプのネタではあるが、逆にいまでは新鮮というか、面白く見えたりする。それを演出する太田、いまどきの人気芸人では珍しい夫婦での共演を続ける彼の姿に、その懐の深さを感じずにはいられない。
 繰り返すが、太田はジャングルポケットのネタを手掛ける、いわゆるトリオの頭脳だ。その頭脳としての才能が、このラヴィットで存分に活かされている。トリオのエースである斉藤慎二、飛び道具的な存在のおたけ、この2人がいないにも関わらず、その活躍度は率直に言って金曜レギュラーではナンバーワン。大袈裟ではなくそう思う。
 ボケてよし、突っ込んでもよし。ややベタなタイプではあるが、それを確実に発揮できるところがこの人の強みだろう。お笑い界のなかで最も過小評価されている芸人のひとりと言ってもいい。トリオの中ではそこまで目立ないが、太田がピンで出演する番組ではいつどこでも確実にその存在は効いている。滑っているところを見たことは実際ほとんどない。この先、年齢を重ねても十分独り立ちできる芸人だと見る。
 世間的にその評価はまだまだ低そうだが、実は芸人としての太田は滅茶苦茶優秀。ラヴィットを見ていると思わずそう言いたくなる。芸能人としての格は夫婦どちらが上かはよくわからないが、今後の可能性、タレントとして才能は明らかに太田のほうが上回る。このラヴィットでの活躍で太田は芸人としての自らの商品価値を確実に上げている。はたしてどこまでいけるのか。夫婦内の格差を含め、その今後に目を凝らしたい。
  

・東京ホテイソン ショーゴ たける (グレープカンパニー)

 2021年3月に番組が始まったラヴィットは、時期的に見てその直近に行われたお笑い賞レースによる影響を強く受けている。現在のレギュラー及び準レギュラーの顔ぶれを見れば一目瞭然。なかでも特に色濃く反映されていると言えるのが、(番組が始まった3ヶ月前に行われた)M-1グランプリ2020だ。レギュラーの見取り図(水曜日)とニューヨーク(木曜日)、そして準レギュラーのおいでやすこが、マヂカルラブリー、インディアンスなど、当時のファイナリストの多くが俗に言うラヴィットファミリーに名を連ねている。
 東京ホテイソンももちろん、そのM-1グランプリ2020のファイナリスト組だ。初出場だった決勝での結果こそ最下位に終わったが、その決勝進出がなければ、少なくとも毎週出演するレギュラーに選ばれることはなかったはずだ。
 M-1との関わりが深いMC川島の存在が東京ホテイソンの抜擢にどれほど関わっているのかは知る由もないが、ここまでの活躍をひと言でいえば「まずまず」となる。ボケ担当のショーゴと、ツッコミ担当のたける。言ってもまだ両者ともに20代の若手コンビだ。その割にはよく頑張っているというか、レギュラーとしてよく持ち堪えているというのが正直な感想になる。同じ金曜レギュラーのEXIT、宮下草薙(隔週交互に出演)と比べるとわかりやすい。この2組が隔週レギュラーであるのに対し、繰り返すが東京ホテイソンは毎週出演しているわけだ。その分だけ消耗は激しいというか、引き出しの中身はなくなりやすい。若手芸人ならなおさらに、だ。そうした視線を傾ければ、少なくともそこまで悪くは見えてこない。存在感をそれなりに保つことが、少なくともここまでは十分できている。
 コンビ2人のうちどちらが効いているように見えるかといえば、ツッコミのたけるとなる。早い話が活躍が目立つほうだ。ツッコミ兼イジられ役としてうまく機能しているという印象だ。一方でコンビのボケ担当、相方のショーゴの活躍度は率直に言えばいまひとつ。お笑いコンビのボケとしてショーゴがそれ相応の活躍をした場面を目にした記憶があまりない。もちろんゼロではないが、ラヴィット全曜日のレギュラーを見渡すと、その印象、キャラクターはあまりにも薄い。少なくとも存在感という点においてはツッコミの相方に大きく上回られている。
 東京ホテイソンの弱点はここにある。目立つのはボケではなくツッコミ。たける独特のあのツッコミは一時期流行ったこともあるが、それを除けば他に武器らしい武器は特段見当たらない。話術、トークセンスもまだまだだ。いまは若手枠で十分通るが、現状のままではこれより上にはそう簡単には進めない気がする。
 たけるが一人で他の番組に出演する姿はたまに見かけるが、ショーゴのピンはまず見ない。たけるは特徴的だが、ショーゴは悪く言えば普通。当面はショーゴの頑張り次第だと思うが、その今後に目を凝らしたい。
 
 
・EXIT    りんたろー。 兼近大樹 (吉本興業)

 芸能界のヒエラルキに従えば、EXITは隔週ではなく毎週でもおかしくはない。だが、この隔週のほうがキャラ的に彼らには合っていたと見る。毎週だと味が濃い。もっと言えば、毎週の出演はEXITの2人にとってもたぶんキツかったはず。タレント的な華はともかく、芸人としての活躍度はこれまでも決してそれほど高くない。あえて言えばその存在は半分“お飾り”のようなもの。少なくとも僕にはそう見える。
 元々こちらのEXITに対する評価はそれほど高くなかった。彼らが演じるキャラクター(チャラ男?)と“お笑い”との相性がよくない、そう言ったほうがしっくりくる気もする。少なくとも僕は彼らが現在の活躍に見合うような会心の活躍をしている(面白い)場面を目にしたことがあまりない。もちろんそれなりに上手いコメントを繰り出すこともあるが、彼らのビジュアルやキャラクターがその面白さにブレーキをかけているようにも見える。レベル7ぐらいに見えるコメントでも、実際は6程度に感じてしまうことが多々ある。ビジュアルに優れた兼近の場合は特にそんな気がする。「イケメンとお笑い」は水と油ほどではないが、その相性の悪さを思わずにはいられないのだ。
 EXITに関して言いたいことはもう一つ、最近始まった彼らの冠コーナーについて。これまで2度ほど目にしているのだが、率直に言ってつまらない。見ているのが少々辛いといえば少し厳しすぎるだろうか。盛り上げようという気持ちは伝わるが、印象に残る面白いコメントやフレーズなどがない、内容の薄いロケというのがここまで見た筆者の感想だ。実力派コンビのニューヨークやコットンらとの違いをそこに見る気がする。
 あえて良いところを挙げれば、番組的に効いているのはりんたろー。の存在だ。ツッコミ兼イジられ役。東京ホテイソン・たけると似たような感じだ。一方、相方である兼近の将来の芸人像が、少なくとも僕にはそう簡単には思い浮かばない。兼近は現在32歳。若手の顔ができるのもあと数年だ。彼から男前を除いたらいったい何が残るのか。内容の薄いコメントではなく、もう少し重みのある、パンチの効いた面白いコメント(例えばモグライダー・芝やコットン・西村のような)が吐けなければ、この先は苦しくなると見る。
 タイプ的に見て、EXITはこの先賞レースで活躍して“もうひと跳ね”するようなコンビではない。パッと見た感じ、現在がピーク。これより上の階段を昇る姿はいまのところ見えてこない。ラヴィットでの活躍度もその人気と知名度の割には物足りなく見える。芸人的に底が見えつつある彼らの行く末やいかに。


・宮下草薙 宮下兼史鷹 草薙航基 (太田プロダクション)

 宮下草薙がブレイクしたのは2018年後半から2019年頃。草薙のネガティブな思考とその言動が注目され、若さとその勢いで「第七世代」の一員に名を連ねるとともに、多くのバラエティ番組で活躍した。
 現在はブレイクからおよそ4年が経過。最初は独特のキャラで注目を浴びたのは草薙だったが、実際にキャラが濃かったのはその影に隠れていた男、一見地味そうに見えた宮下のほうだった。少々変わったその性格やキャラの濃い彼の両親など、宮下が単なる“○○じゃない方芸人”に収まらなかったことが、結果的にコンビとして奏功した。彼らがここまで生き残ることができた要因のひとつだと考える。さらに言えばこのラヴィットでも、宮下のほうがいろんな意味でその持ち味は活かされている。
 ブレイクした頃の宮下草薙といえばまず真っ先に「ネガティブな草薙」を連想したが、現在はどうだろうか。少なくともラヴィット視聴者である筆者ならば「ゲーム(おもちゃ)好きの宮下」を一番に想起する。芸人としてそれはそれでどうかという気もするが、ことラヴィットにおいてはゲームという宮下の趣味が存分に活かされていることは事実だ。何を隠そう、筆者も実際に番組で宮下が紹介したゲームをいくつか購入させてもらっている。
 宮下のゲーム好きキャラはラヴィットで大ハマりしたのはもちろん、他の場所(番組)でもよく目にする。だがその一方、相方の草薙も含め、芸人としての力はブレイクした頃と比べどうなのか。極端に落ちているとは言わないが、決して上がっていもいない。いわば現状維持。だがこの世界、現状維持は後退を意味する。草薙は一時期ロンドンハーツで田村亮(当時謹慎中だった)の代わりに何度もサブMCとして起用された男だが、そんな当時の勢いはどこへやら、だ。いまはブレイクした時の貯金でなんとかしがみついている状況にも見える。
 とはいえ、例えば彼らに今後MCクラスのポジジョンを狙おうとか、ネタでもっと売れてやろうとか、そうした芸人特有の野心的な気概を感ないこともまた事実だ。そもそも2人ともそうした貪欲そうなタイプに見えない。ある程度売れれば十分というか、現状に十分満足しているように見える。特に宮下は自身の趣味であるおもちゃ・ゲーム関連の仕事ができればそれで十分という感じだ。
 この先、お笑いコンビ「宮下草薙」としてはどうなのか。少なくともこのままでは近い将来、いわゆる過去の人になりかねない。太田プロなのでそう簡単に消えることはないと思うが、他に勢いのある若手が出てくれば、いまのポジションに居座り続けることも案外難しいのではないか。芸人路線というより、趣味や特技を活かしたタレント的な路線。その進む行き先に個人的には興味を覚える。5年後の姿を早送りして見てみたい気持ちだ。

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