“かまいたち”への道険し

 「ポストかまいたちを探せGP」と題して放送された、昨日のロンドンハーツ。その企画内容をザックリと言えば、いま勢いのある若手芸人を何組か集め、その悩みや現状などをそれぞれに話してもらう、いわゆる芸人深掘り的な企画だった。アメトーークで言うならば、「もっと売れたい芸人」的な感じといえばわかりやすいか。

 以下はひな壇側のゲストとして、今回集められた芸人たちになる。

 わらふぢなるお、ザ・マミィ、ジェラードン、ランジャタイ、金の国、幸せのトナリ、太田博久(ジャングルポケット)。

 このなかではジャングルポケット・太田だけ、企画の趣旨とは異なる存在として呼ばれた感じだった。だが、太田以外の顔ぶれは極めて妥当。こうした番組では初めて見かけるような新鮮な芸人もいた。いったいどんな活躍を見せるのかと、放送開始直後から、こちらの期待感は高まることになった。

 しかし、いざ見終わってみると、開始当初に抱いた期待を上回るような満足感を得ることはできなかった。もちろんつまらなくはなかったが、こちらが望んでいた弾けるような面白い内容とはならなかった。

 「ポストかまいたち」というタイトルがついた企画だったものの、それに相応しい活躍を見せた芸人がいたかと言えば、答えはノーだ。5年後や10年後はわからないが、少なくとも2,3年後に「かまいたち」になれそうな芸人は見当たらなかった。

 わらふぢなるお、ザ・マミィ。今回の出演者の中で、実績的にかまいたちに近いのはこの2組になる。ともに賞レースでの最高成績はキングオブコント準優勝(わらふぢなるおは2018年、ザ・マミィは2021年)。今回最も筋が良いトークを披露したように見えたのも、個人的にはわらふぢなるおの2人だった。

 惜しかったのはザ・マミィだ。10月に行われたキングオブコントでは見事に準優勝。同じく同率準優勝の男性ブランコ同様、メディアでの露出を大幅に増やすことに成功した。ロンドンハーツの前日に放送された「アイ・アム・冒険少年」(TBS)では春日(オードリー)と共に海峡サバイバルという企画に挑戦するなど、まさに旬を感じさせるような活躍も見せている。だが、タラレバ話をすれば、もしキングオブコントで優勝していれば、その活躍はもっと華々しいものになっていたはずだった。過酷なロケに挑戦することもなければ、ロンドンハーツで比較的地味な存在で終わることもなかったと思う。

 年末に控えるM-1グランプリの後は、今度はそこで活躍したコンビがバラエティ番組を席巻するだろう。マヂカルラブリーやおいでやすこがのような存在が必ず現れる。そうした番組を想像することは容易だ。1,2ヶ月後、漫才師たちが押し寄せてくる流れのなかで、ザ・マミィやジェラードンはどれほど存在感を発揮することができるか。注目に値する。

 そうした視線を傾けたとき、今回、ロンハーに出演したゲストのなかで可能性を感じるのは、グレープカンパニー所属のランジャタイだ。M-1では現在、準決勝に進出。決勝に進出する可能性は決して高くないが、それでも存在感だけは際立っている。独自性溢れる彼らのスタイルは、あえて言えばマヂカルラブリー以上。仮にもしM-1で決勝に進出すれば、大きな話題を集めると見てまず間違いない。今年に入り、こうしたトーク系のバラエティ番組に出演する機会も増えている。いま見逃せないコンビの一組だと思う。

 芸人掘り出し系の企画だった今回のロンハーだが、この日の放送で最も僕が印象に残ったのは、ゲスト側の芸人ではなかった。有吉弘行と山崎弘也(アンタッチャブル)。ご意見番として出演したこの2人によるワンポイントの“ガヤ”が、僕の目には最も優れて見えたシーンだった。

 この日一番の若手コンビ、金の国・渡部おにぎりが、ルックスとは裏腹に良い奴ではないという話になった際、「おやきのパターンだもんね」と例えた有吉。「まだ“おにぎり”だからいいよ、いまはまだ」と、すぐさまそれに被せた山崎。これらのひと言にこそ、有吉と山崎の魅力は、それこそふんだんに詰まっていた。この両者の特徴がよく出た、かなり秀逸な例えツッコミだったと僕は思う。

 こうした真似が出来る人は決して多くない。思わず「巧い!」と思わせる、センスのあるひと言を素早く発することができる人物。川島(麒麟)とか千鳥の2人なども、そうした能力を備えていることは言うまでもない。芸人として飛躍する条件だと僕は思う。

 もちろん、かまいたちにもそれはある。それに加えて、キングオブコント優勝、M-1グランプリ準優勝という、芸人の中で最も優れていると言いたくなる結果も残している。実績と実力。この2つが高次元で融合されたのが、現在のかまいたちの姿だ。

 「ポストかまいたち」への道のりは、決して易しいものではない。簡単に名乗れるようなものではない。この日のロンハーを見て、その名前の偉大さを改めて感じだ次第だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?