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反・空想科学読本~空想を愛していれば無理とは言わない~

「パパ、めっちゃおもろい本みつけてん!」
小六次女が図書館から借りてきたのは「空想科学読本」シリーズ。アニメ、漫画、特撮の描写を「科学的」に説明する本だ。
僕も昔読んだ。そして、好きになれなかった。
というかはっきり言ってこの著者のスタンスが嫌いだ。
科学を武器にして、上から目線でフィクションの描写を切りまくる。

基本的な文脈はこんな感じ。

『こんな描写があります。これは現実にするとこうなります。だからこれは無理です。』
それを科学の視点から語るのが人気の理由なんだろうけど…無理なんは知ってる!というのがSFファン、オタクの気持ちだ。
無理をどうやって理論武装してもっともらしく描写、説明、解釈をするのか。SFの歴史はそれの積み重ね。それが現代のアニメ、漫画、特撮の描写の豊かさにつながっている。
科学的に無理といってしまうのはある種の思考停止。決して知的ではない。
知的というのは、その描写をまず受け入れて、どうすればその描写が説得力を持つのか、その解釈を考え続けること。

空想科学読本の1巻目で切られていたのは、ゴジラとガメラの体重。ゴジラ2万トン、ガメラ80トン。身体の大きさはほとんど変わらないのに、体重差がありすぎる。
『ゴジラは重すぎて、ガメラは軽すぎる!』と空想科学読本では指摘をしていた。それだけ。

そんなん知ってるし、誰でも言えるし。言うだけじゃなくてその理由を考えるのが特撮を愛するオタクの使命だ。
見事な解釈の一つはSF作家山本弘の「MM9(モンスターマグネチュード9)」に載っている。
空想科学読本の「科学的な」解釈だけじゃなくてMM9の「SF的な」解釈を合わせて読んでいただきたい。

もう一つだけ例を挙げる。
『SF映画で真空の宇宙で音がするのはおかしい』
定番の突っ込み。定番過ぎて面白くもなんともないけれど、未だに真顔でこの突っ込みをする人は多い。
まず一つだけ言っておこう。真空の宇宙で音がする理由は作品ごとに違う。だから作品別に真空の宇宙で音がする理由を考える必要がある。
たとえば僕の解釈。スターウォーズの宇宙で音がする理由。スターウォーズはこの宇宙の物語ではない。遠い昔、遙か彼方の銀河での話。
スターウォーズの宇宙は我々の宇宙ではない。スターウォーズ世界の宇宙には空気がある。だから音がするのだ。

コケた?
でも注意深くスターウォーズを見ていると、宇宙に空気がある証拠が音以外にもたくさん描写されている。マスクだけで船外に出たりとか、宇宙船から高く炎があがったりとか…
作品内の描写の全てを鵜の目鷹の目で見て、解釈するのがオタク的、SFファン的な見方なのだ。

そもそも「空想科学読本」というタイトルがいけない。アニメ、漫画、特撮はたしかに空想から始まる。でも制作を進める中で、制作者たちは空想を描写に落とし込んで作品として現実化するのだ。
空想科学作品は空想だけでは作品として結実しない。

製作者は説得力のある描写や説明を一生懸命考えて、作品にする。それでもどうしても説明不足な部分は出てくる。その部分を解釈するのは読者、視聴者の責任だ。それが作品を愛するってことじゃない!?
科学なんていう一つの尺度だけで切るのはいただけない。

僕がこの著者を嫌いなのはしょうがない。
だけど次女がこれを面白いというのはわかるし、ここから出発してくれればいいと思う。
空想科学読本を「めっちゃ面白い!」という小六女子はステキだ。

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