今回のタンカー攻撃について(連ツイまとめ)

今回のタンカー攻撃について。「攻撃はイランによるもの」という報道が出ていますが、ボルトン大統領補佐官や英国は従来通り「イランの責任」という言い方をしています。これは「証拠がなくても状況的総合的に考えて背後に何らかの関与がうかがえる、従って全体として責任がある」という意味です。

いうならば、イランという国家の意志(指示)がない所で起きた偶発的事故であっても米国側は「イランの責任」とする事になっています。いかなる偶発的事故に対しても米国側は報復する事ができるという図式です。既に英国も同じ見解を発表しているので、すでにインテリジェンスで合意が取れているように思われます。

今回の安部首相の来訪はイラン現地で非常に注目され高い期待があり、イランとして歓迎していました。だからこその最高指導者ハメネイ師との対談があり、「核兵器は持たない」との強い発言を引き出せたわけです。このイランにとって、このタイミングの(直接間接問わず)攻撃にメリットはほぼないです。

この図式では、イラン以外の第三者が証拠を残さず事件を起こしてもイランの責任にすることができます。すると、やはり緊張緩和をよく思わない勢力や反イランの別の勢力の仕業のような気がしてしまいます。

5/12のフジャイラ沖のタンカー攻撃事件の場合も、イランを犯人とする確たる証拠はなく、イランもフーシー派も関与を否定。これはベトナム戦争の「偽旗作戦」、つまり米国側のヤラセではないかとの疑惑がありました。

それでは、安部首相のイラン訪問による緊張緩和に水を指したい勢力は誰か。一つは、「偽旗作戦」、つまりイランを潰そうとする米国側そのもので、イスラエルやサウジなども含まれます。もう一つは原油価格を上げたい勢力という見方もあります。しかし正直やり方やタイミングが政治的過ぎます。

最近では原油市場はテロなどに鈍感で、今回直後に4%上がりましたが、原油価格は直前に急落していたので、大した上げではありません。物理的な途絶はほぼないので、軍事衝突の緊張が高まった効果しかありません。原油価格を上げるならもっと効果的なポイントがあります。

今回、オマーン側から攻撃があったという情報がありますが、カタールやバーレーンにもシーア派の反米グループがあります。ロシア説もありますが、ある意味この攻撃は米国を利するとも言えるので、正直ちょっと考えにくいです。

これ以上犯人探しをしても仕方がありません。恐らく真相は出てきません。わかっているのはこの事件は米英側にイランの責任として処理されるという事だけです。今後はイランの原油輸出はほぼ止まり、イラク電力向けの天然ガス供給も停止。そこに露が手を差し伸べる(原油と物々交換等)でしょう。

そして安部首相の訪問はイランや中東諸国民には好印象を残しますが、緊張緩和の役割は限定的。米国のイラン潰しは既定路線で止めるのは難しいです。背景にあるのは米国のシェール革命ですが、その分析は20日発売の月刊FACTAに寄稿しました。

因みに今回は魚雷(torpedo)によるものと言われています。秘匿性の高い攻撃なので、もしかしたら、最近開発が噂される生きた魚に爆弾をつけて遠隔操作するタイプかも知れません。地の魚を使えばほぼ証拠は残りません。妄想ですが。

5/12のフジャイラの件について、「機雷(naval mine)」によるものとの報道がありますが、ペンタゴンは「革命防衛隊(IRGC)による磁石吸着式水雷(limpet mine)」と発表しています。

いずれにせよ「ほら攻撃された!」とか「原油価格上がる!」、「安部首相のイラン訪問は無意味だ!」みたいな条件反射的な反応はしないことですね。

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