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支援者の真の課題。それは、黙って待つ勇気を持つこと。

 2023年6月22日、中小企業庁がとあるガイドライン(...ってもうタイトルで言ってるけど)を公表しました。その名も「経営力再構築伴走支援ガイドライン」。今般、全国の中小企業・小規模事業者の支援者の方に向けて(中略)、地域経済を支える中小企業・小規模事業者の伴走支援に取り組まれるよう願っております(中企庁HPから)。
 そう、私たち支援者の教科書なのである。ということで、早速ナナメ読みしてみたよ、というのが今回のお話。

氷山モデル。経営課題は芋づる式に多岐にわたり奥も深い

 「売上が伸びない」「社員が主体的に動いてくれない」。そういうときの課題って、ところで何なんでしょう?営業部隊を増強することなのでしょうか?社員とじっくり話し合ってみることとかなのでしょうか?
 例えば理詰めで考えると…
 ①会社は5年後、こうなっていたいんだ(ビジョン)
 ②でも今こういう状態だろ?(バリュー)
 ③だからこういうことに取り組もうと思ってる(ミッション)。
 ④ぜひあなたにも一緒に頑張って欲しい(共有)。
  ⇒そうか、そういうことだったんだ、分かりました!
  ⇒こうして初めて主体性が生まれ、売上UPに貢献する
 ...いやいや、きれいごと言うなよって?うんそうなの、これは後継者問題がクリアになってないとできなかったりする。だって後継者がいなかったら先のこと考えられないでしょ?経営課題は芋づる式に多岐にわたり、奥も深い。まさに「氷山モデル」なわけです。

ガイドラインP11より

私たちに求められていること。対話と傾聴、課題設定。

 それじゃあ、私たちに求められていることって何なの?というと、それはプロセス・コンサルテーションだと説きます(中小企業支援の現場で使いたくない言葉あるある、それはカタカナ用語)。そのプロセス何だかってやつは、経営者等との「対話と傾聴」を通じて、事業者の「本質的課題」に対する経営者の「気づき・腹落ち」を促すことにより「内発的動機づけ」を行い、事業者の「能動的行動・潜在力」を引き出し、事業者の「自己変革・自走化」を目指す支援方法(ガイドラインP13)、ということでしてこれがまさしく”経営力再構築伴走支援”であると。
 図を見た方が分かりやすいです。

ガイドラインP18より

 そう。結局、難しいことは書いてない。ただ、「対話と傾聴」をちゃんと分解する必要がある。
 ①傾聴...相手の話をちゃんと聞く。
 ②対話...相手の想いをちゃんと引き出す。
 ③対話と傾聴...信頼関係を構築して、気づいて納得してもらう。
こういうことでしょ、きっと。

私たちが意識すべきこと。傾聴から「敬聴」へ。

 これはもう、抜粋(スクショ)した方が早いな。これです(↓)。

ガイドラインP41より

 ①相手に敬意を持って、②じっくりと、③共感しながら、話を聞く。これを「敬聴」というそうです。「先生、先生」って呼ばれると、意識しようが無意識だろうが、何だか上から目線に勘違いしそうになりますが、違うんだぞ!という中企庁からの警告ですな、これは。

でもでも傾聴し過ぎると...

 ただ、傾聴だろうが敬聴だろうが、あんまりやりすぎると、どうなる?って話です。せっかく相手は貴重な時間と貴重なお金を使って、助言をもらおうと思って、私たちに会いにきてくださってるんですが、「そうだね」「うんうん」「分かる分かるぅ~」と聞き上手に徹していると...

ガイドラインP42より

そりゃそうだ。そうなるわ。でも「必要に応じて、事業者の質問等に適切に対応することが求められます」って、サラッと言うけどあんた、これかなり高度なことをもとめてますよ。だって今まで、とりあえず話を聞けって言っといてちょっと、あんた、ここで意趣返ししてくるなんて...

いやいや冷静になろう...

 ちょっと取り乱したけど、冷静になろう。さっきの「敬聴」のところ(P41)をちゃんと読むんだ(ナナメ読みすんな(笑))。

ガイドラインP41より。①の続きがあった。

 ごめん、①の下にも大事なこと書いてあった(笑)
 ②ポジティブな要素を引き出し、未来志向へ誘導する
  立ち止まってもいい。前を見よう。前進あるのみ。
 ③キーワードを聞き逃さず、しっかり掘り下げる
  それってあなたの感想、ではないですよね?強みですそれ。
  もう少し教えてください。どゆことですか?って感じかな。
 ④想いをロジカルに整理し、相手の理解を深める
  社長がおっしゃりたいことは、こういうことでしょうか(理路整然)?
  それってきっと、こうすれば、こうなりますね(パズルのピースを組み合わせる感じ)。
 ...こう考えると、対話と傾聴ってのは、なんだか深いな。

「対話と傾聴」の先にあるもの。自己変革・自走化。

 大分読み進んでから、やっぱりこれなんだなって立ち返ったのが、最初の方にあったイメージ図です。※ナナメ読みはたまに読み返すのが大事です
 対話を繰り返して、一緒に課題を設定したら、モチベーションを高めて、自分で解決してもらう。その好循環を繰り返してもらう(自走化)。じゃないと、いつまでたっても支援者が必要になっちゃう。そゆことなんですね。

ガイドラインP16より

私たちの真の課題。黙って待つ勇気を持つこと。

 上司と面談するとき、会議のとき、沈黙って耐えられませんよね?何か話さなきゃって、焦っちゃいますよね(笑)
 ただ、この沈黙って大事なんですってね。沈黙するってことは、相手も何か言わなきゃって考えてるってことで、沈黙を打ち破ろうとしてるってことで、そこから何かが変わるサインなんですって。そこで私たちが我慢しきれずにベラベラしゃべったら、せっかくの沈黙が台無しになっちゃうわけです。やっぱり、沈黙は金なり、なわけです。
 その先も一緒で、自分の会社のことなんだから、当然、自分が一番危機感を持ってるわけで、得意げにベラベラしゃべったり、自慢げにすんごい資料を作って見せても、相手が納得しないと意味がないわけで。
 そりゃ、人前で雄弁に話せるだろうし、分かりやすい資料も作れるだろうし、アイデアもいっぱいあるだろうけど、とりあえず私たちの真の課題は、対話と傾聴、つまり黙って待つ勇気を持つこと、これなんだなと思いました。

...とはいえ、何にもしないと、「何にもしてくれねーな」ということにもなっちゃうから、匙加減が難しいなって思いながら、でもでもそうだよな、と納得したガイドラインなのでした(おしまい)。

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