「3.11」に長野県の高校生がお互いさまの街ふくしまへ舞い降りた ペイ・フォワード記事Vol.31
高校生の心を掴んだ「お互いさまの街ふくしま」
恩送り文化を拡散するインターネットの力
ここ最近、「お互いさまの街ふくしま」や「お互いさまチケット」とはどういうものなのか知りたい、体験したい、という方たちが福島市、福島県を訪れて、お互いさまスポットを体感してくださる方が多数いらっしゃいます。これまでに来福してくださった方、興味を持ってくださった方、どうもありがとうございます。私たちはいつでも皆さんのお越しを心よりお待ちしております。
ところで、このような取り組みが福島県で先駆的に行われているのか、どうやって認知されるのでしょうか?
これまでお互いさまチケットを導入している店舗さんに聞いた話によると、SNSでのハッシュタグなどによる拡散の力が大変大きいようです。
試しに、「ペイ・フォワード」というキーワードで検索してみると、ヒットした検索件数は約 1,000,000 件、「恩送り」という検索ワードでは、約 2,470,000 件もヒットします。この二つの言葉はかなり認知度が高いようです。
さて、気になる福島関連のキーワードではどうでしょうか。検索ワード「お互いさまの街ふくしま」では、ヒット数約 29,000 件。そしてなんと、「お互いさまチケット」では約 924,000 件もヒットし、元祖「ペイ・フォワード」という言葉のヒット数に届きそうな勢いです。
このようにインターネット検索のヒット数で見てみると、これらの言葉の広がり、興味関心、文化が徐々にではありますが着実に拡大していることがわかります。
国際的な視野を持つ長野県の高校生が「恩送り」に出会った
このように、インターネットで簡単に検索できる時代なので、「お互いさまチケット」や「お互いさまの街ふくしま」といったユニークな取り組みは注目されやすいと言っても過言ではありません。
このインターネット社会の賜と言えましょうか。この度「お互いさまの街ふくしま」は、長野県にあるUWC ISAK JAPANという日本初の全寮制国際高校似通う高校生四人組の目にとまりました。
彼女たちは、国際バカロレアのカリキュラムの一環である『CAS』と呼ばれるプロジェクトに取り組んでいます。
https://ibconsortium.mext.go.jp/about-ib/
(↑国際バカロレア(IB)とは??)
このプロジェクトにおいて彼女たちは、自分たちが解決したい社会問題や探求したい分野について、社会にポジティブなインパクトを与えるための行動を起こすことをゴールに見据えているのです。そして、何に取り組んでいるかをまとめた展示会をすることになっていてそれに向けての準備をしていたそうです。ところがこの先が彼女たちの情熱の成せる業。『展示会を開催するにあたって、恩送りの活動が盛んである福島でより恩送りの知識を深めたい』という想いが強まり、福島への視察を決定したというのです。
ISAKのこの学習では、生徒が学びをどのように進めるかを自由に決めることができ、学校から必要な予算を支援していただけるとのこと。その制度を利用し、4名の未来を見つめた若者が、初めて福島の地を踏むことになるのです。
さて、この4人が集まったのも、あるYouTubeの動画がきっかけでした。 メンバーの一人が恩送りについて調べに調べ、最後に日本語で「ペイフォワード」と検索した時にヒットしたのがこの動画です。
このビデオをみて感動した4人は、恩送りの活動をしようと決めたといいます。『 だからこそ、その原点である福島を訪問させていただきたいと思いました。』と語るメンバー。
これほどまでにFUKUSHIMAに期待を寄せてくれている若者がいるということ、そしてFUKUSHIMAが「原点」と呼ばれていることに喜びと誇りを感じているのは、私だけではないでしょう。
VUCA時代の今、若者に求められる「問う」力
ここで、彼女たちのように社会課題に取り組むという実践について少し触れておきます。現在高等学校では、「探求学習」に力を入れる流れとなっています。「探求学習」とは一体なんでしょうか。「総合的な学習の時間」という言葉を聞いたことがあるかも知れません。現在、小中学校では「総合的な学習の時間」、高校では「総合的な探求の時間」というものが開設されています。文部科学省のHPからこのようなデータをダウンロードすることができます。
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/sougou/main14_a2.htm
端的に言うと、総合的な探究の時間とは
かみ砕いて言うと、VUCA時代とも言われる現代は、変化が早く、不確実、複雑、曖昧といわれているので、正解などない。そんな時代に生きる若者たちは、多角的なものの見方をしながら、自己のあり方を見据えた上で、世界をよりよくしてくための「問い」をたてて課題を解決する力が必要だというのです。
https://fora.or.jp/report-inquiry/
そういう意味では、「恩送り」や「お互いさまの街ふくしま」、「お互いさまチケット」という言葉に惹かれ興味を持ってくれたということは、これらの取り組みが今後の世界を希望に満ちた方向へ導くだろうという直感が高校生に働いたのではないかと推察しています。
そしてそれが単なる夢物語ではなく、現実に存在している社会を体感してもらうことで、間違いなく彼女たちの糧になるでしょう。
お互いさまの街ふくしまを堪能した高校生四名
3.11に合わせた福島訪問
彼女たちが福島市に到着したのは2024年3月11日。2011年の同日に起こった東日本大震災から13年目のことです。今回、「お互いさまの街ふくしま」を体感して学びを深めるということでしたが、ちょうどこの日からツアーが始まったことは偶然ではないでしょう。
「お互いさまチケット」の発案者、今は亡きハグさんが、東日本大震災4日後に体験したことをまとめたこの動画をご覧ください。
このような経験をした福島の人たちだからこそ、「困ったときはお互いさま」、「できる人が、できる時に、できることを」という精神が身についているのだと思います。そしてそれが後に「お互いさまチケット」として形となったのだと信じています。未曾有の大震災を経験し、そこから這い上がってきた福島の方たちから私たちが学ぶべきことは想像以上に大きいのです。
お互いさまの街ふくしまを体感するツアー
さて、今回「お互いさまの街ふくしま」を体感するツアーを企画されたのは、NPO法人チームふくしまさん。
チームふくしまさんは、「お互いさまの街ふくしま」という言葉を広めており、このようなHPも開設しています。
チームふくしまさんの理事さんたち、連携をされている方たちは、とにかく人がよく、世界文化遺産ならぬ「世界人遺産」?にノミネートされそうな方たちばかりです。今回高校生4人組は、チームふくしまさんの全面的な支援により、福島のよい場所、よい人、よい文化を余すことなく体験してもらいました。(福島はいいとろこなので、一度来たらまた行きたくなる、行く度に新しい発見がありますのでまた来てくださいね!)今回はこの4人が体験したお互いさまの街ふくしまを、ダイジェストで紹介しますね。
お互いさまの街ふくしまDAY1
初日の研修を終え、所感を次のようにまとめてくれました。
私はこの所感から、彼女たちが体感したもののインパクトの大きさ、福島の人々の心に染み入るような優しさ、それを吸収する彼女たちの器の大きさを味わうことができました。
お互いさまの街ふくしまDAY2
私は彼女たちの福島旅2日目にご一緒させていただきました。まずはチームふくしまさんの事務所にて顔合わせ。朝食を取りながら、なぜお互いさまの街ふくしまに興味を持ったかなどの話を聞きました。
その後早速とある高校に訪問です。このときは私が青年海外協力隊としてマレーシアでの経験をもとに多様性社会について考えるトークとワークショップをしました。
この講義に参加してくれた四人からは次のような感想をもらいました。
彼女たちにとって日本の他の高校生と交流する機会は貴重だったようです。訪問先の高校生も彼女たちと一緒にワークショップに取り組むことで考えを深めたり、福島のいいところを教えたりと心の交流を深めていました。
次に向かったのはくつろぎ納屋 森のキッチン。ランチに美味しいピザをいただいてから、店長の森口さんに「みんなの食糧庫」の活動などについて熱心にインタビューしていました。
その後は株式会社クラロンに移動し、工場見学をさせていただきました。また田中会長に障がい者雇用の実態について説明を受けたり、質疑応答をしたりしました。この内容については、私自身とても学び深かったので、次回改めて考察して記事にしようと思います。
私はこの日、ここまで一緒に行動しました。そして終始彼女たちの溢れ出る好奇心と正義感にこちらも刺激を受け、明るい未来のために私はこれまで何をしてきたのか、今何をしたいのか、これからどんなことをしたいのかについて向き合う機会となりました。
彼女たちが共有してくれた2日目の所感がこちらです。
自分が何かを人にしてあげられるときには「お互いさま」と言うことはたやすいけれども、何かしてもらうときにその言葉を言うことに抵抗があると感じることはないでしょうか。(お互いさまチケットの文脈でいうと、誰かのためにチケットを買うことはいとわないけれど、使うことには抵抗がある、とも似ていますね。)彼女たちの言葉を借りれば、「自分の力で困難を切り抜け、成長すること」と、「時には周りの人に頼ってもいいという許し」という両輪が、お互いさまの街のコミュニティを強めていくことに必要なのかも知れません。むしろこの二つを切り離す必要もないのではとすら思えます。完璧な人間など存在しないのだから、誰しもが頼られ、頼るべき存在です。だから、肩肘張らず自然体で生きることが、実はすでに「お互いさま」の姿勢になっていると思うのです。
お互いさまの街ふくしまDAY3
お互いさまの街ふくしまDAY4
四人の高校生に幸あれ!世界に幸あれ!
ここまで彼女たちの足跡を写真でたどってきました。彼女たちの真剣なまなざし、無邪気に「今」を楽しむ表情、全力で前向きに学ぶ姿勢などを感じとれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実際彼女たちは、出会う人たちに真剣に話を聞き、メモを取り、聞いたことを自分の言葉で理解して「こういうことでしょうか?」と確認すると言うことを繰り返していました。「一を聞いて十を知る」という言葉がありますが、彼女たちは「一を体験して十を作り出す」人たちなのでしょう。なぜなら、『「お互いさまの街ふくしま」を体感したのだから、これをもとに私たちの信じる方法でこの世の中をよりよくしよう』という彼女たちの熱い心を感じられたからです。
最後に、彼女たちの(移動を含めて)五日間の視察の感想の一部を抜粋してご紹介いたします。
数日のうちに、お互いさまの街ふくしまは、4人の高校生に希望の種を蒔きました。それがどんな花として開花するか、見届けたいです。彼女たちの活動を応援したい方は、こちらからinstagramをフォローしてくださいね。「リール」に分かりやすい動画がたくさんアップされています。福島での体験を動画で見られますよ。
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