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やっかいでめんどくさい自分の感情、でも、それが愛らしい|51冊目『パラドックス思考』

舘野 泰一 安斎 勇樹(2023,  ダイヤモンド社)



「仲間だけど敵」ってこの気持ち何?

4月、新年度ですね。

部署を異動されたり、転職されて新しい職場で頑張ろうという人がいるかと思います。
新たにリーダーの役割を与えられた人もいることと思います。

新しい職場や新しいチームでは、こんなチャレンジをしたいとか、こんな改善をしたいとか、きっと意気込んでいますよね。

ポジティブでモチベーションがあることはとても良いことだと思います。
その熱意だけで十分なのに、人はとかく他者と比較して相対的に自分の良さを誇張しようとします。
そのため不必要に前任のリーダーの批判や悪口を込めて、自分のビジョンを語ったりします。

会社は、経営が順調ならまだしも、たいへんな時期を迎えていて、みんなで協力して乗り越えていかなくてはならない状況かも知れません。

大学業界では多くの大学がそんな局面を迎えています。

だからみんな一緒に頑張っていかなくてはならないのですが、「頼りたいけど負けたくない」「仲間だけど敵」という複雑な感情が生じてしまっています。

どうやら感情パラドックスなるものが存在しているようです。

今回は自戒の意味も込め、本の内容にアプローチして読書メモを綴りたいと思います。



『パラドックス思考』との出会い

noteで時々書いていますが、僕は昨年から今年にかけて「産学連携教育イノベーター育成プログラム」の「リーダーシップ開発力育成コース」を受講しました。

リーダーシップ開発力育成コースを担当しているのは、リーダーシップ教育を売りとして人気を集めて看板学部となった立教大学の経営学部です。

立教大学経営学部には、舘野先生という若手の准教授の先生がいます。
舘野先生は僕が勤務する学校法人の学校の一つ、女子聖学院中高でリーダーシップの特別授業をしてくれています。

その舘野先生の『組織変革のパラドックスを乗り越える「新時代のリーダーシップ」』というオンラインのセミナーがあるというので視聴させていただきました。

オンラインセミナーは、本の共著者でMIMIGURIという会社の代表取締役、安斎さんとのセッションで、基本的に舘野先生が講義を進め、安斎さんがコメントを挟むというスタイルでした。

「頼りたいけど負けたくない」「仲間だけど敵」
というのは、このセミナーで説明された矛盾する二つの感情のことです。

「立場」や「状況」の変化が感情パラドックスが生まれるきっかけになるというので、新年度のはじまりはきっと感情パラドックスの大量発生の時期ですね。

とても興味深いセミナーだったので、セミナーの元ネタになっている、昨年出版されたという著書『パラドックス思考』を読むことにしました。


めんどくさいけれど愛らしいのが人間

問題の背後に矛盾する主張Aと主張Bが存在することを論理パラドックスと言います。

矛盾するものが「主張」でなくて「感情」になると感情パラドックスとなります。

感情パラドックスはおおよそ次の5つにまとめることができます。

問題がこのように整理されて、それぞれに名前がつけられると、それは「外在化」と言いますが、安心しますし、解決の糸口が見えてきます。

基本パターン
①素直⇄天邪鬼
②変化⇄安定
③対局的⇄近視眼的
④もっと⇄そこそこ
⑤自分本位⇄他人本意

感情パラドックスの5つの基本パターン

例えば、あるリーダーが「自分がいなくなっても機能する組織を作りたいと」考えます。
でも、実際に自分がいなくても組織が機能してしまうと、自分の存在が不要みたいで、心の奥では「なんか嫌だな」と思っています。
なので、少し仕事がうまくいかない状況が見られると、黙っていられず、やっぱり自分がいなきゃだめだと仕事を部下から引き上げて、自分が処理をしていい気分に浸ります。
これはメサイア(救世主)コンプレックスというそうです。

新しい職場での新しい仕事はワクワクしますが、今までと違う仕事を覚えなくてはならないので不安にもなります。
今の職場に不満がありながら、別の職場を探すことをしないというのは「変化」を望む感情Aと「安定」を求める感情Bのパラドックスです。

ある部署のリーダーになって、今まで実行できなかった組織改革をガンガンやりたいと思う反面、極力、他のメンバーや他部署の人たちの反感を買わないように、悪目立ちすることを躊躇する気持ちもあります。

こんなご時世なので、みんなと協力して尊重しあって仕事をしていかなければ組織自体がうまくいかないと思いつつ、自分の能力を相対的に(絶対的な自信がなくて)誇示したいために、前任のリーダーの悪口を言ってその評価を低め、足を引っ張ります。

これは、無意識の行動のことが多いですが、このような、卑しくて器の小さな複雑な感情が自分にあることを、実は薄々自分でも認識しています。
しかしネガティブな気持ちを自分が持っていることを認めたくないので、自分以外のところに原因を求めようとする「防衛規制」が働きます。
それで同僚や仲間を否定して、バカにしたりします。
矛先を会社に向けて、会社批判をしたりもします。

本当に人間はめんどくさいです。

しかし、人間はめんどくさいけれど愛らしい存在なんだと開き直り、自分の感情に素直に向き合ったなら「ああ、このパターンだな」と自分自身をメタ視点で俯瞰して見ることができて、もっと気楽に過ごせるようになるのではないかという作戦です。


自分本位と他人本位の両立案

新年度を迎えて、うちの部署のメンバーも入れ替わりました。
手慣れたメンバーが抜けて、人数も減ったので、昨年と同じことをしようとすれば、一人ひとりの負担が今までよりもずっと大きくなります。

でも、良い機会なので、気負わずに、例年同様という考え方を捨てて、新しいやり方でチャレンジしてみようと思っています。

僕がチームのみんなに求めている働き方は次の2つです。

①組織のビジョンの実現によって実現できる自分のビジョンを描くこと。
②仕事自体を楽しむこと。

内発的動機とは「その行為そのものに動機があること」で、外発的動機とは「その行為とは別に動機がある」と説明されています。
シンプルな説明ですが、なるほどその通りだと、目からウロコです。

「自分本位」か「他人本位」かということをトレードオフで考えるのでなく、自分のためにすること(=仕事を楽しむこと)が他者(=組織やチーム)のためになり、他者のためにする(=組織のビジョンをめざす)からこそ、自分のためになる(=自分のビジョンの実現)というチームづくりができたらいいなと思っています。

最後までおつきあいいただきありがとうございました。
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