ノンフィクション作家神山典士

96年「ライオンの夢、コンデ・コマ=前田光世伝」で小学館ノンフィクション賞優秀賞。12…

ノンフィクション作家神山典士

96年「ライオンの夢、コンデ・コマ=前田光世伝」で小学館ノンフィクション賞優秀賞。12年「ピアノはともだち、奇跡のピアニスト辻井伸行の秘密」で全国読書感想文コンクール課題図書。14年「佐村河内事件」報道で、第45回大宅壮一ノンフィクションン賞受賞。異文化、アウトロー、表現者を描く

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  • 人間と人生を味わい尽くす~神山典士作品集

    音楽、スポーツ、演劇、芸能、ビジネス、料理等、あらゆるジャンルの人間ドラマを描くノンフィクション作家神山典士作品集

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TheBazaarExpress119、『ペテン師と天才~佐村河内事件の全貌』10章、メディアの狂宴

・いい加減な取材ならお断り 「佐村河内とは取材中に何回も喧嘩しました。彼は『徹底的に取材して本当のことを書いてくれ』という。『それができないなら取材してくれなくていい』と言うんです。こちらも喧嘩腰になって、『だったら徹底的に取材させてもらいます』と言い返しました。まるで私と勝負するかのようでした。その姿勢を見て、私は自分と似ているなぁと思ったものです」 ジャーナリストの塩田芳享が語る。塩田は2010年の春に佐村河内のことを知り、光文社の「女性自身」編集部に企画をあげた。「

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    • TheBazaarExpress118、『ペテン師と天才~佐村河内事件の全貌』、9章、2つの三角形の完成、障害児とのかかわり

      ・お仕事は作曲家です 「はじめまして。佐村河内守といいます。守さんのお仕事は作曲家です。一緒に送ったDVDを見てくださいね」 2009年の初夏のこと。習志野市に住む大久保家に、一通の手紙が届いた。宛て先は、小学校3年生の長女、みっくんになっている。大きな封筒には、何枚かのDVDも入っていた。手紙はこう続いていた。 「守さんはみっくんだけのピアノ曲『左手のためのピアノ曲』を作曲してみっくんにプレゼントしたいです。世界でただひとつだけの、みっくんのためのピアノ曲です」 突

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      • TheBazaarExpress117、『ペテン師と天才~佐村河内事件の全貌』、8章、交響曲第一番HIROSHIMA、最初の三角形の完成

        ・ゲーム業界とクラシック界 「近年、交響曲第一番に着手」 2001年1月11日発売の「鬼武者オリジナル・サンドトラック、交響組曲『ライジング・サン』」の二枚組CDに添えられたパンフレットに書かれたその言葉。 それこそが、佐村河内から新垣に与えられた次のミッションを予告する言葉だった。 佐村河内は「次は交響曲です」という言葉を、99年の段階でお茶の水のホテルに籠もって「ライジング・サン」を書いていた新垣に告げている。この時新垣は、目の前の作業に熱中していて受け流していた

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        • TheBazaarExpress116、『ペテン師と天才、佐村河内事件の全貌』7章、貧しくても好きな道を歩む幸せ~N極・早熟な才能

          ・驚愕のフルオーケストラ・スコア ―――この子の才能はどうなっているんだ。小学校6年生でオーケストラのフルスコアを書いてくるとは。しかも独学で20分もの曲だ。尋常じゃないな。 1982年のとある日、東京目黒にあるヤマハ音楽振興会目黒センターで指導教官をしていた作曲家の南聡は、千葉県船橋市の教室から送られてきたある子どものスコアを見て信じられない思いだった。 この頃南は東京芸大の作曲家コースの大学院を卒業し、ヤマハと契約して子どもたちに作曲の指導するために週に何日かこのセ

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          TheBazaarExpress115、『ピアノはともだち~奇跡のピアニスト辻井伸行の秘密』青い鳥文庫版、あとがき

          拝啓 辻井伸行様  日本では山滴る季節となりました。  今日はどこの旅の空ですか? 演奏会は順調に進んでいますか? お客様の反応はいかがでしょうか。各地で美味しいものを食べているのでしょうね。  君の本を書かせてもらってから、5年の月日が流れました。あの頃君は世界での演奏旅行が始まったばかりで、いろいろな国の音楽祭や小さな街のコンサート・ホールで演奏を繰り返していましたね。  それが今ではロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールやニューヨークのカーネギーホールなどで

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          TheBazaarExpress114、『ペテン師と天才~佐村河内事件の全貌』、6章、とにかく大きなことをしでかしたい~S極・野望に満ちた男

          ・高度成長時代の申し子  「佐村河内とは小学校時代の同級生でした。家も近かったから、小学校1,2年のころはお互いの家をしょっちゅう行き来して遊んでいました。明るくてやんちゃなやつでしたよ。あの時代だから遊びといえばウルトラマンやゴジラごっこだったり粘土遊びでしたね。佐村河内はうちの庭の池に落っこちて、パニックになったこともありました。彼の家に行ってもピアノは見たことはありませんでした。自叙伝の中には『四歳の時から母親から厳しいレッスンを受けた』と書いてあるのを私も読みました

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          TheBazaarExpress113、『ペテン師と天才~佐村河内事件の全貌』、第二部、二つの三角形、転機、メディアの饗宴、5章、出会い、96年8月

          ・自分をアピールする男 その年は、例年に比べれば比較的凌ぎやすい夏だった。猛暑の日は少なかったがその代わり雨が少なく、秋の作物の収穫には不安が残った。 プロ野球界では、松井秀喜はまだジャイアンツでプレーしていた。夏場になって4番の落合博満の打撃に陰りが見え始め、ライオンズの清原和博のFAトレードの噂が出始めていた。 パリーグではオリックスのイチローが健在だった。右袖には前年に起きた「阪神淡路大震災」からの復興を目指す「がんばろうKOBE」のワッペンがついている。 8月

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          TheBazaarExpress112、『ペテン師と天才~佐村河内事件の全貌』、第3章、2013年の軋轢、その2、大人は嘘つきだ

          ・新垣さんは来ますか? 大久保母から佐村河内に久しぶりにメールが打たれたのは、9月6日のことだった。 「第67回全日本学生音楽コンクールヴァイオリン小学生の部が9/7(土)8(日)とあります。まんまんは7日に出ます。課題曲はパルティータです」 この頃佐村河内は、新垣との「活動区切り騒動」は口止め料を強引に渡したことで一応一件落着し、「鎮魂のソナタ」のCD発売作業は進み、「交響曲第一番HIROSHIMA」の全国コンサートも順次続いていた。 この間メールが途絶えていたとは

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          TheBazaarExpress111、『ペテン師と天才~佐村河内事件の全貌』、第二章2013年の軋轢、その1~不協和音

          ・なぜ撮影に協力しないんだ 2013年の正月から2月にかけて、大久保家には一つの憂鬱が蔓延していた。 それまでずっといい関係を築いてきていた佐村河内の周囲から、不穏な話が伝わるようになってきたからだ。 ―――みっくんがなぜ撮影に協力してくれないのか、佐村河内さんはかなり怒っている。 遠回しないい方であっても、そのような意味のことを、例えばNHKの撮影スタッフや周囲の音楽関係者が、何気ない会話の中で囁くようになった。 そう言われても困ってしまう―――。 大久保父母も

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          TheBazaarExpress110、『ペテン師と天才~佐村河内事件の全貌』、第一部第一章・奇妙な出会い、二重人格、衝撃の告白

          1章、 バランスの悪い会話 ・日曜日の居酒屋  その日、私の目の前で展開されていたのは、とても奇妙でバランスの悪い、不可思議な光景だった。 「まず生ビールにしましょうか。4杯ね。子どもたちは何にするの?」 「オレンジジュース」「私はグレープフルーツジュース」  千葉県船橋市と習志野市に挟まれた、JR津田沼駅に隣接したビル内の大衆居酒屋。その個室には、二人の少女を含む4人家族と私、そしてもう一人の男性の6人が集まっていた。夕食時だったため、子どもたちはまず空腹を訴えた

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          TheBazaarExpress109、「新世界三大料理~和食は世界料理足りうるのか?」第三章・世界が憧れる食材大国、日本料理

          1、 世界に広がる日本の食文化 ・コペンハーゲンでの偶然の出会い  その店との出会いは、本当に偶然のことでした。  広い店内はごてごてした飾りはなくシンプルなしつらえで、大きなテーブルが整然と並び、床も壁も天井もぴかぴかに磨き上げられています。私が入ったのは午後3時ごろでしたが、それでも店内の約半分、30人ほどの家族連れやカップルたちが食事を楽しんでいました。カウンターの向こうに広がるのは、ステンレス製の調理台やマシンが並ぶ広々としたオープンキッチン。働いているのは白や

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          TheBazaarExpress108、『みっくん、光のヴァイオリン』4章、5章、あとがき

          第4章 みっくん、カンタービレ! 《ソナチネ》 「美来ちゃん、五年生でコンサートが開けるなんてすごいわね。お客さんの前で何曲も演奏するのは大変だけど、がんばってレッスンをしましょう」  石川先生はそう言って、コンサートの開催に賛成してくれました。もしこのとき石川先生が、「五年生でコンサートなんて無理です、早すぎます」と言っていたら、このコンサートは開けなかったかもしれません。なんに対しても前向きな石川先生がいてくれたからこそ、みっくんはコンサートに挑戦することができたの

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          TheBazaarExpress108、『みっくん、光のヴァイオリン』4章…

          TheBazaarExpress107、それでも「ソナチネ」は弾いていきたい~少女の叫び

          「私はそれでも『ソナチネ』は大好きだからこれからも弾いていきたい。でも、嘘の作曲家のクレジットが入るのはいやだ」  義手のヴァイオリニスト大久保みっくん(愛称、現中1)がそう言ったのは、正月半ばのことだった。この夜集まっていたのは、大久保家4人(両親と妹)と私、そして神妙な表情でうなだれている作曲家・新垣隆氏。すでに新垣氏は前年暮れに、大久保家4人の前で「実は私が佐村河内の曲を18年間つくり続けてきました、申し訳ありませんでした」と、告白していた。  私は、13年正月に上

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          TheBazaarExpress107、それでも「ソナチネ」は弾いていき…

          TheBazaarExpress106、貴族になりたかった男を支えた妻~辻調理師学校辻勝子

          「今も心に残る、料理に対する主人のあの言葉」 私、恥ずかしながら初めて主人に出会ったときにいただいた名刺を持っているんです。娘や息子にも見せたことがないんですが、ちょっと言えば、私の宝物です。 「読売新聞記者」って書いてありますでしょう。あの日、もう50年以上前のことになりますが、アメリカの交換留学生が10名ほど父が経営していた料理学校をみたいということで、主人は記者兼通訳としてやってきました。 黒塗りの車で社旗を立ててやってきて、私はその当時、サラリーマンの奥さ

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          TheBazaarExpress105、「ゴーストライター論、第二章」

          著者の人生をデザインする喜び~黄金のゴーストライティング作品、「矢沢永吉激論集成りあがり」が生れるまで  2000年のこと。「長崎ぶらぶら節」で直木賞を受賞したばかりの作家・作詩家のなかにし礼氏をインタビューしたとき、のっけからこう質問して少々怒らせてしまったことがあった。 ―――作詞家は、いくらヒットを生み出せても、最終的に作品は歌手のものになってしまう。それが寂しかったのではないですか?  なかにし氏は、少し乱暴な口調でこういう内容のことを語りだした。 ―――確か

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          TheBazaarExpress105、「ゴーストライター論、第二章」

          TheBazaarExpress104、奇跡の読書感想文~佐々木風美

           その読書感想文との出会いは鮮烈だった。2012年、第58回青少年読書感想文全国コンクールの小学校高学年向けの課題図書に、拙書『ピアノはともだち 奇跡のピアニスト辻井伸行の秘密』(講談社)が選ばれた。全国から寄せられた感想文は約445万通(小学校低中高3部門、中学、高校と計5部門総計)。その中から小学校高学年の部で内閣総理大臣賞を受賞したのは、宮城県名取市那智が丘小学校6年生(当時)佐々木風美さんの書いた『今日の風は、どこまでも青色』だった。  その内容こそまさに奇跡だった

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          TheBazaarExpress104、奇跡の読書感想文~佐々木風美