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早期審査が選ばれるとき

【稼ぐ経営者のための知的財産情報】
 
 弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
 今回は、「早期審査が選ばれるとき」をお伝えします。
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 1.出願から特許査定までの期間

 特許出願をしてから特許査定まで(又は拒絶査定まで)どれくらいの期間がかかるのでしょうか?
 これは出願人の意思次第でありまして、早期審査をすると出願から数ヶ月後には査定が出ます。
 
 中小企業の場合、早期審査は基本的に無条件に認められますので、早期審査をかけやすくもあります。
 さらに、スーパー早期審査というものあり、これだと1月くらいで査定が出るようです。
 
 一方、審査着手を伸ばせば4~5年後に査定がなされます。
 さらに言いますと、拒絶査定が出ても審判請求して、そこでもダメなら知財高裁に提訴とか最高裁まで争うとかすれば、もっと引っ張ることができます。
 
 さらにさらに言いますと、拒絶査定が出た後に分割出願をして子出願を作る、子出願が拒絶査定になったらまた分割出願をして孫出願を作るとかすれば、永遠に引っ張れそうですね。
 とはいえ、特許の存続期間が原出願の出願日から20年なので、限度はあります。 

2.なぜ査定までの期間を延ばすのか?

 なぜ、査定までの日を引っ張るかと申しますと、特許出願中の地位があれば、他人をけん制できるからなのです。
 明らかに新規性がないダメな出願は別として、特許調査をするようなきちんとした会社ほど、他人の特許出願中の案件には手を出してこない傾向があります。
 
 理由は、他人の特許出願中の案件を真似して、それが特許査定になれば侵害になってしまい面倒だからです。
 
 このような理由で、特許出願しても査定までの期間を長くすることが一般的です。
 特許出願中の間、他人をけん制できれば仮に拒絶査定になったとしても利益がありますもんね。 

3.早期審査をするときとは

 でも早期審査をするときもあるわけでして、それはどんなときなのかを述べてみます。
 
 (1)その出願が流行りの技術分野であるとき
 いわゆるブームになっている技術分野では、自社の技術的な地位を固めたいという心理が働くのか、早期審査の割合が高くなります。
 最近流行っているAI関連の特許出願もそうですし、坂岡が過去に出願の代理をした金属空気電池も当時は早期審査が比較的多かったです。
 
 (2)スタートアップ企業が出願人のとき
 これも自社の技術的な地位を固めるという意味から、早期審査が多いです。
 あと、出資を募るときも、特許が何件ありますというと資金が集まりやすくなるので、特許になった件数を増やすために早期審査が選ばれます。
 
 (3)思い切った投資や販売促進活動をかけるとき
 社運をかけたプロジェクトのような場合、多大な投資をしたあとに拒絶査定となると、けっこうなダメージを受けます。
 特に、拒絶理由を構成する引用文献の特許権を侵害していることが分かった場合、会社が傾きかねません。
 
 余談ですが、特許出願前にも類似の先願がないか、他人の権利を侵害していないかの先行技術調査をします。
 しかし、予算の関係上そこまで精密な調査ができないことが多く漏れが起こり得ます。
 これは、調査の精度を上げようとするとかなり高価になり、調査費用だけで出願費用を超えてしまい現実的ではないからです。
 
 それに対して、特許庁がする調査は、審査請求費用の印紙代である20万円弱ですみますので、お値打ちです。
 しかも、国が認める調査です。
 そういったことから、特許庁に対する審査請求が最も安価で確実な先行技術調査といわれています。
 さらに中小企業ですと審査請求の減免があり、印紙代が1/2になりますので、かなりお値打ちです。
 
 そういった安心を買うという意味で早期審査をするときがあります。
 
 (4)海外出願の前に日本で特許になるか否かを見る
 特許の審査は基本的に各国で行われており、国や地域によって特許査定と拒絶査定とに分かれるときがあります。
 しかし、日本で特許になっていればある程度は海外でも特許になりやすいだろうとの期待を込めて、先に日本の早期審査で特許になるか否かを見るときがあります。
 そういったときも早期審査が使われます。
 
 早期審査をするのは主に上記の理由があるときですね。
 他にも、経営者がせっかちで早く結果が欲しいときも早期審査にします(^_^)
 
 皆さまも、出願時にその効果や目的を考えて早期審査にするのか、期間を延ばすのか決められてください。
 その方が、同じ特許出願でもずっと有効活用することができると思います。
 
 この記事が御社のご発展に寄与することを願っております。
 
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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