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もはや終身雇用は終わった・・・サラリーマンを辞めて起業する前・スタートアップに入る前に知っておくべき5つのこと

 2014年に公開し10万PVを超える反響があった「サラリーマンを辞めて起業する前にしっておくべき5つのこと」の改訂版です。 

 私はいきなり海外で起業することを選んだ人間です。起業してから2019年5月現在で6年半が経過しました。今のところ、数多くの友人知人の助けもあり、難なく生き延びています。これまでに7社(海外5社、日本で2社)を創業してきました。調達してきた資金の合計は10億円を超えました。2社イグジットも経験しています。立ち上げた会社が2年と少しで60人を超えるまで急拡大し、そこから20人縮小するというハードシングスもありました。

もはや終身雇用はありません。自らのスキルで生き延びねばならない。特に海外に出た場合、それはより顕著になります。終身雇用が保証されない以上、どこにいても、生き延びる術を身につける必要性が高くなってきていると思います。

今から言うことは、起業することだけに言えることではなく、スタートアップにこれから飛び込む人、社内でリーダーとして立ち向かっていく人にも考えるキッカケになると思います。ここで述べる5つの視点が皆さんの日々の努力、頑張り、葛藤、悩み、逡巡に少しでもお役に立てれば幸いです。

 10億円調達。どこかの若い起業家が創業間もないにも関わらず、そんな金額の資金を調達するニュースをよく見かけます。10万円ボーナスアップ。死に物狂いで働いて、その結果得た報酬。こんな身近な金額もまた、よく見かけるのではないかと思います。新聞を読んでも、起業家をもてはやす風潮の記事が毎日のように載り、事業で世界を変えることを目指さないのかと言う論調も少なくありません。

 私はどっぷり普通のサラリーマンを長年続けていました。転職も経験したことがあります(野村総合研究所からグリーへ)。そして、今起業して自分の会社を経営しています。今のところ、上場!というところまでは行っておりませんが、小さくとも経営者ではあります。

 そんな私ですが、起業家の中ではかなりサラリーマンのことを熟知していると思います。長年やっていただけに。また、過去何年にもわたって、様々な起業家と会ってきました。日本、アジア、アメリカ、欧州。その数1000人はくだらない。そこから得られたことを書いてみたいと思います。

 もし、あなたが10年くらいサラリーマンを続けていて、起業を迷っている。

 10年くらいサラリーマンを続けていて、創業間もない企業への参画を迷っている。

 10年くらいサラリーマンを続けていて、次のキャリアとして海外に飛び出すことに迷っている。

 または、10年くらいサラリーマンを続けていて、この先の将来が不安で気持ちが暗くなっている。

 そういう20代後半から40代の方々(もしくは50代)なのであれば、これから述べることを事前に把握しておくことは非常に有効だと思います。

1 あなたには、今もらっている給与の価値はない

 のっけから、カウンターパンチを浴びせたことを言いますが、現実です。あなたの価値は、今もらっている給与の価値はありません。野球に例えて言うならば、人の能力価値は安打数ではなく、打率のようなものです。上下するのです。起業したとして、創業間もないスタートアップにジョインしたとして、あなたの価値は、今もらっている給与の価値より確実に低くなります。

 今もらっている給与が50万円か、100万円か、どのレベルなのかは分かりませんが、その給与がなぜ発生するか?

  会社(おそらくある程度大きいでしょう)全体を効率的に動かしていくための、一部の役割をあなたは担っているはずです。そして、それを効率よく推進することをこの10年追求し続けてきたはずです。その限定された役割を効率良くこなすからこそ、会社全体が産み出す利益の中から、あなたのその価値=給与が生まれるのです。

 しかしながら、そこで追求した効率性を上げるスキルは、ゼロから価値を産み出す際に、多くの場合役に立ちません。残念ながら、これもまた事実です。もちろん役立つスキルもありますが、それは一部のスキルに限られます。

 繰り返しになりますが、あなたの価値は、今もらっている給与の価値ほど高くないのです。しかし、これは何もあなただけに当てはまるわけではありません。起業であれ、創業間もないスタートアップへのジョインであれ、はたまた新しい国で働き始めた場合、今もらっている給与分の付加価値を即座に出すなど、ほとんどの人が出来ないのです。

 仮に100万円の給与を欲しいのであれば、月に300万円の売上を最低限は弾き出さなければ、その給与には届きません。単なる個人事業主や、プロブロガーなどで良いのであれば、100万円の給与を手に入れるために必要な売上はもっと小さいかもしれません。しかし、起業して会社を大きくし、事業によって、変革を起こすことを目指すのであれば、その後の事業投資、人材を採用することによって会社を大きくしていくための余力を会社に残す必要があります。

 会社はオフィスの賃料、パソコンなどの機器、事業を進めるために必要不可欠の事業投資、外注費、広告費など様々な経費がのしかかってきます。大雑把に言って、欲しい給与の3倍稼がねば、その給与を手に入れることは出来ません。

 逆の見方をすると、仮にこれから成長する企業に飛び込み、今の半分程度の給与レベルになったとしましょう。半分になることを容認できるのは、もちろん将来のリターンを期待しているからだと思います。そんなとき「自分の実力の半分も出せば、この給与分の付加価値は出せる」などという価値観を持っているとしたら、それは即座に捨て去るべきものです。新しい境遇では、今までの半分の価値すらも出せていないことの方が多いのだから、むしろこれまでの2倍以上性根を入れて望むべきところです。

 いや、そんな価値観は持ちあわせていない。

 多くの人はそう「思う」かもしれません。しかし、残念ながら10年もサラリーマンを続けていると、自分が思わなくとも、行動がついていかない場合が極めて多い。行動が、俺/私は本来もらうべき給与をもらっていないから、実力を発揮していないだけ。心の奥底でそういう考えがあると、それは行動となって現れてしまうものです。

 納得の行かない状況という理由で、全力を出しきれない人間は、満足の行く環境に行ったとしても、全力を出せはしません。

2 自らの役割を規定してはいけない

 通常の会社に勤めていると、各人には役割というものがあります。それなりに大きな会社の場合には、自分の役割を超えたことをやろうとすれば、他の組織から釘を刺されることも少なくありません。よって、サラリーマンという職業で長年働くと、自らには役割というものが存在し、その中での効率性を追求するというDNAが出来上がってしまうのです。

 このDNAが起業や社会の変革を目指すと謳うスタートアップで戦う際には、非常に邪魔になります。起業をする場合、創業まもないスタートアップの一翼を担う場合、不透明な市場環境である途上国で働く場合、役割などあってなきが如しです。自らの得意分野から派生する「大きめ」の役割を勝手に規定し、それの付加価値の最大化を図る。それはとてつもなく典型的なサラリーマンDNAなのです。

 青天の霹靂のような役割をも模索し、推進し、転げまわる。日々思いもよらない役割を開拓し続ける。そうした領域へ、毎日毎日、いや、毎時間毎時間踏み込む事こそが起業するということであり、スタートアップに参画するということなのです。

 自らの得意分野から派生する「大きめ」の役割を推進するということは、決して悪ではありません。例えて言うならば、売上100億円の会社を110億に成長させるためには、そうしたリーダーシップある人が何人もいなければ達成できないでしょう。一方、100万円の売上の会社を1億円にしようとする場合、「自らの得意分野から派生する大きめの役割を推進する人」というのは、残念ながらほとんどの場合、役には立たないのです。

 起業して推進していくためには、これまでの経験で培ってきた行動原理そのものを変えなければやっていけない。つまり、あなたの業務には終わりなどないのです。やってもやっても、次から次へとぶち当たる壁を乗り越え続けなければなりません。まったくお門違いの壁がいくつも立ちはだかる。それを楽しめる心理状態へと変わらなければ、やっていくことは困難でしょう。敢えて規定するとすれば、それは、役割を決めないこと。それが肝要なのです。

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3 ベストではないと承知でも、やらなければならない

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