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最近の記事

自作台本を音声作品にしていただきました

 先日、お知り合いの台本作家さんが企画に絡んでいる台本コンテストで入賞しました。  なにか貰えるわけでもないのでスルーしようと思ってたんですが、最終日に急遽思い立ってスマホで書いてスクショで応募というやっつけ仕事で入賞。  なので少し申し訳ない気持ちも・・・。  入賞後、色んな演者さんが、台本に声をつけてくれました。  その中でも抜群によかった音声作品をこちらでご紹介します。  賞金や賞品がなくても、こんなに素晴らしい音声作品にしてもらえるなら、それが何よりのご褒美で、飛

    • 鳥獣戯画ノリ #毎週ショートショートnote

      昔々、高山寺に鳥獣戯画という一巻の絵巻物がありました。 絵巻物の中には、人間のように喋ったり笑ったりする動物たちが描かれていました。 彼らは絵の中で仲良く暮らしていました。 ある夜のこと。ウサギは仲間たちに内緒で絵巻物から飛び出し、お寺を抜け出してしまいました。 初めて見る世界はウサギにとって驚きと感動の連続でした。 山や川や森や草花。 空と太陽と星と月。 ウサギは沢山の動物や人間と出会い、色々なことを学び、友達を作ったりしました。 そして、この体験を誰かに伝えたいと思い、筆

      • 告白水平線 #毎週ショートショートnote

         ある日の夕暮れ。水平線の向こうから、女性の声が聞こえた。優雅な音符のように響くその声は軽やかさと魅惑的な響きが宿っていた。  夢なのか、現実なのか。  いつしか、夕日が沈む瞬間に声を聞くのが習慣になった。  知らない言語だけれど、その言葉には僕への特別な気持ちが込められている気がした。  声の主はきっと、あの美しい声にふさわしく、優雅で情熱的で素敵な女性に違いない。  ついに僕は決意した。  夕暮れの中、彼女の声に応えるように、水平線に叫んだ。 「あなたが好きだー!」

        • 未来断捨離 #毎週ショートショートnote

          未来断捨離をすれば未来が約束される。 息子が生まれた時、すぐにそのシステムを利用した。 野球選手、医者、教師、あらゆる未来の可能性を手放すことで、たった一つの夢を叶えるために真っ直ぐ努力することが出来る。 こんなに素晴らしいことはない。 私のように脱サラして起業を考えたのでは遅いんだ。私も未来断捨離をしていたら、幼少期の頃から努力し、この会社をもっと大きく出来ていたはずだ。 だから私は息子の未来を二代目社長に決め、それ以外の可能性を切り捨てた。 「僕の夢はお父さんの会社を継

        自作台本を音声作品にしていただきました

          最後のマスカラ #毎週ショートショートnote

          鏡を見るのが嫌い。 冴えない顔を見るたびに自分自身を否定する言葉が頭を埋め尽くす。 無理に笑顔を作る。 鏡の中から不気味な笑い声が聞こえた。 ある日、封筒が届いた。 中にはマスカラと手紙が入っていた。 大切な自分へ  これを使ってみて   きっと素敵な変化が訪れる    未来の私から愛を込めて 半信半疑でそのマスカラを使い始めた。 鏡の中の少しだけマシな自分。 浮かべた笑顔は、少し柔らかくなった気がした。 いつしか、周りが変化していた。 世界が優しくなった。 褒められ

          最後のマスカラ #毎週ショートショートnote

          響く礼節をペンペンしてみる #毎週ショートショートnote

          演奏を終えた時にどうして泣いていたか? 嬉しかったの。 私の楽譜に音符が戻ってきてくれた。 あれは10年前。ショパン国際ピアノコンクールで優勝し、ピアニストとして世界的に認められた年だった。情熱の赴くままに指先を鍵盤の上で踊らせていた。楽譜に敬意を。ピアノが響かせる音色に礼節を。 そう思っていたはずなのに、ある日の演奏中、楽譜に音が足りないと感じてしまい、不思議な魔法に導かれるようにペンペンと高い音を2つつけ足していた。 その瞬間、楽譜から音符が消え去ってしまった。私が楽譜を

          響く礼節をペンペンしてみる #毎週ショートショートnote

          秘密警察を宣伝してみる #毎週ショートショートnote

          「おのれ、またしても秘密警察か」 激しくテーブルを叩く音が広間に響いた。 「サイアック様、言ったではありませんか。ワルイ・コトスキーには期待するなと」 サイアックがギロリと視線を向けた先で、インボウが眼鏡に指先を添えた。 「次は私にお任せください」 「何か策があるのか」 インボウが大きく頷く。 「秘密警察は秘密だからこそ価値があるのです。奴らを宣伝し、その秘密が公になればただの無能集団。恐るるに足りません」 インボウは秘密警察の存在を明るみにするため、電柱にポスターを貼り、駅

          秘密警察を宣伝してみる #毎週ショートショートnote

          半笑いのポッキーゲーム #毎週ショートショートnote

          ポッキーゲーム決勝トーナメント。 優勝の賞品は私とのキス。いや、私とのポッキーゲームだ。 予選を勝ち抜いた8人はいずれも早食いの猛者ばかり。マッチョにオタクにデブにブサイク。 そんな男たちの中でミツルだけは違っていた。端正な顔立ちと涼やかな瞳。沢山の女子からのアプローチを全て断ってきた難攻不落の氷の王子。そんな彼が私とのキスを望んでいるなんて。 「優勝した男が嫌だったらポッキーを折って逃げればいい」 そう友達に言われたけど、ミツルが優勝するなら話は別だ。 彼は準々

          半笑いのポッキーゲーム #毎週ショートショートnote

          壁持ち強襲女 #毎週ショートショートnote

          扉は石壁で固く閉ざされていた。 「タカシの壁を壊してください」 母親の悲痛な頼みに私は小さく頷く。 心を閉ざした時に発せられるエネルギーフィールドが実体化し自室の扉を塞ぐ。まさしく「壁持ち」の症状だ。 「任せてください。お母さんは後ろに」 壁に向けてピッケルを振り下ろすと、ガキンと音を立てて弾かれた。 ライフルを構え、ババババッと乱射する。 壁はびくともしなかった。 後ろの母親の悲鳴を無視して、手榴弾のピンを抜いた。手榴弾は正確に着地し、その一瞬後に爆発した。

          壁持ち強襲女 #毎週ショートショートnote

          金持ち教習所 #毎週ショートショートnote

          僕の家は貧しかった。毎日、夜遅くまで働いている両親は幸せそうには見えなかった。 お金持ちになれば家族が幸せになれる。幼い僕はそんなことばかりを考えていた。 だから僕はお金を貯めて、お金持ちになれる教習所に通った。そこで僕は財務管理や戦略投資、ビジネススキル、起業のノウハウ、人脈形成、マーケティングの極意、様々なことを教わった。 しかし、必要なスキルや知識を身につけるうちに僕の中に疑問が生まれた。 他人を蹴落として得た幸せは本当の幸せなんだろうか。常に財産やステータスに

          金持ち教習所 #毎週ショートショートnote

          ほんの一部スイカ #毎週ショートショートnote

          ある朝、僕の手が半分に切ったスイカになっていた。 僕の手は未来予知をして形状が変化する。スイカになってしまったのにも何か理由があるはずだ。 外に出ると街の大通りが騒がしかった。どうやら信号が壊れてしまったらしい。 そうか。今の僕なら信号の代わりになれる。 僕の手がスイカになったのはこのためだったのか。 僕は交差点の中央に立ちスイカになった両手をクルクルと反転させた。 車や自転車や歩行者が僕のスイカの赤と緑に合わせて動いた。 みんな僕のスイカの手に感謝してくれた。

          ほんの一部スイカ #毎週ショートショートnote

          サラダバス #毎週ショートショートnote

           そこはバスの中だった。 「起きたかい?」  レタスに話しかけられて僕は驚いた。 「どうしたの?」  玉ねぎが心配そうに言った。 「どうして野菜が喋ってるの?」 「ここがサラダバスだからさ」  そういえばママが言ってた。「好き嫌いしてたらサラダバスに乗せられちゃうよ」って。  見ると、トマトやパプリカ、その他にもいろんな野菜がいた。  バスが停止して、コーンとブロッコリーが茹でバスから乗り継いできた。  玉ねぎは色んな事を僕に話してくれた。薄くスライスされてサラダになりたいこ

          サラダバス #毎週ショートショートnote

          カミングアウトコンビニ #毎週ショートショートnote

           その客は長い髪をかきあげ、僕に顔を寄せると、艷やかな声で「カレーパンひとつ」と囁いた。  突然のことにドギマギしながら僕は揚げたてのカレーパンをトングで紙袋の中に移し、それからトングの先でカレーパンに切れ目を入れた。  うちのコンビニ特製のカミングアウトカレーパンだ。  きっかけは中身が飛び出してしまった失敗作だった。それを買って食べたお客が家族にカミングアウトしたことがSNSで話題となり、これを食べると腹を割って話せるという都市伝説が生まれた。  この美女も誰にも言えない

          カミングアウトコンビニ #毎週ショートショートnote

          涙鉛筆 #毎週ショートショートnote

           鉛筆の私が自我を持った理由は使用人である愛莉が愛着を持って私を使ってくれたからに他ならない。物に魂が宿るという考え方は、八百万の神を信じる日本古来のものだ。だとすれば私という存在は付喪神の一種なのかもしれない。  私は愛莉のためならいくらでも芯を削ろうと思っていた。  21g。  これは、かのダンカン・マクドゥーガル博士が人の死に立ち会い、魂の重さを計測した結果だ。ではその魂はどこに宿っていたのか。頭か。心臓か。  その答えはわからない。が、鉛筆の私の魂は、どうやら

          涙鉛筆 #毎週ショートショートnote

          ショートショート王様 #毎週ショートショートnote

          「探したぞ。貴様がショートショート王か」            私の言葉に男は眼鏡の奥の瞳を大きく見開いた。 「……僕が?」 「そうだ。貴様に勝って私が新しいショートショート王になる!」  男は少し考えるような表情をした後、「ああっ」と手を打った。 「この前、沖縄に行った時に参加した『背負う人祭り』のことですね?」 「ショート祭り?」 「はい。もちろんご存知ですよね。あの祭り、沖縄が琉球王国だった頃、台風があった時に王様が怪我人を背負って助けたことから始まったらしいですよ。前

          ショートショート王様 #毎週ショートショートnote

          バックヤード

           いきなり首筋に冷たいペットボトルを押し当てられて、思わず僕は「ひゃあ」と高い声を出した。振り向くと、イタズラに成功して嬉しそうに笑う先輩が立っていた。 「お疲れさま。これ私のおごり」 「ありがとうございます」  それを受け取って、ゴクゴクとスポーツドリンクを喉に流し込んだ。 「バイト初日はどうだった?」 「はい。楽しかったです」  正直な感想だった。遊園地のアルバイトがこんなに楽しいとは思わなかった。人を笑顔にする仕事は僕の天職なのかもしれない。  それはよか

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