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スターウッドの人事は「顧客体験」向上にどう貢献したのか?

マリオット・ホテル傘下でシェラトンなどをグループに持つスターウッドの人事トップ(CHRO)へのマッキンゼーによるインタビューが、データの活用、アジャイル的な組織運営といったいまの組織運営のトレンドについてコンパクトに語っているので訳してみました。(以下強調部分は訳者による)

Q: ウォルト・ディズニー、ナイキ、ウェンディーズといった顧客体験に大きな強みを持つBtoC企業で経験を積まれてきています。スターウッド・ホテルは違うところはありましたか?

A: キャリアを40年前にスタートして、常にどうやったら差別化できるかということを意識してきました。仕事をはじめた頃に、10代のスタッフのマネジメントを通じて気づいたのは、EQの高い社員を集められかが鍵ということ。ただ、その時は勘に頼るしかなかったんですよね。

それからあっという間に30年が過ぎ、スターウッドに来て、ここには求めていた質の高いデータがある!と思いました。私のチームにはきわめて優秀な産業心理学の専門家が複数名いましたし、飛び抜けて素晴らしい顧客体験と人事が果たす機能にはつながりがあることを示したいと考えたんです。

Q: 最初に見つけたことはなんでしたか?

A: ホテルの各部門が自発的に協力し合うことが、顧客クレームを減らし、客室稼働率を上げてくれることに気づきました。従業員の振る舞いが顧客満足度に影響していることは何となく分かっていましたが、それを実データで裏付けられたんですよ!

Q: コラボレーションが鍵だとして、具体的にどんなことをしましたか?

A: みんなが協力し合うために本当に役立つもの、仕事を楽にしてくれるものから始めたいと考えました。一番良い例は、フロント、ハウスキーピング、エンジニアリング/メンテナンス部門間のコミュニケーションについてですね。まずはリアルタイムでコミュニケーションするためのデバイスをみんなに渡しました。その上で、動機づけを高めるために、みんなが自由に自分の裁量で仕事ができる範囲を広げました。これらの施策によって、自分たちのやっていることが成果を生んでいるというフィードバックがチーム間にすぐ広がるようになったんです。

Q: それらの挑戦を乗り越える上でなにが重要でしたか

A: 4つの重要なポイントがありました。1つ目はCEOがその挑戦にコミットし、サポートを惜しまなかったこと。2つ目は、人事部門、ゲスト・インテリジェンス、マーケティングの各部門が、顧客中心の文化を作ることに継続的にコミットし、互いに強い協力関係にあったこと。3つ目は各部門のトップと経営陣が同じ方向を向けるようインセンティブ設計したこと。ゲスト・インテリジェンスチームが、新たに宿泊客の体験に関する指標を作ったんですが、その指標には「従業員体験(Employee Experience)」の要素も入れて、そのどちらも報酬体系と紐づくように設計したんです。最後に「データ、データ、データ」です。実際の、計測可能なデータを収集できるようになったことが文化を変える上できわめて重要でした。

Q: 規模の問題にはどう対応しましたか

A: 全世界に20万人を超えるスタッフがいて、彼らに納得してもらい、さらに働き方を変えてもらう必要がありました。

なので、我々はパイロットから始めることにしたんです。一つの領域で、パイロットを作り、それをまずテストし、調整をかけながら改善させていく。そしてうまくいったら広げていく。このやり方でコラボレーションを促進する方法論を固めていきました。さらにその進捗を四半期ごとにみんなが集まる会議できちんと発表しました。

宿泊客の体験を示す指標(Guest Experience Index)を浸透させるまで約2年かかり、そこからさらに1年かけてそれを「使いこなす」ための方法論を広げていきました。人事部門は、データを読み解き、それを踏まえて方法論を定義し、従業員を教育していく上で重要な役割を果たしました。

Q: 2年間とは長期間ですね。変革が中だるみしないように心がけたことはなんですか

A: マーケティング、ゲスト・インテリジェンス部門と、とても良い協力関係を築けていました。具体的な成果が出ていたのも大きかったです。常にデータをもとに考え、コミュニケーションすることにこだわったこともポイントです。情熱は必ずしも成果に結びつかないときがあるけれど、結果が出ていればそれが情熱を生み出してくれます!このことが変革の勢いを保つ上でとても大切でした。

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★ボーナス・トラック★
このスターウッドの事例は各部門が「サイロ」になりがちな米企業の特徴を踏まえてうまくやっているなと感じました。そのことについて書いています。

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