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「データ経営」の前にまずマネーボールを観よう

映画「マネーボール」はデータ経営を考える上でとても良い教材。いまや、猫も杓子も、という感じで「データを経営に活用すべきだ」とみんな大騒ぎしている。ただ、経営にデータを活用する上では、優れたデータ分析家を揃えるだけでは不十分。いくら高度で有益な分析ができたとしても、それが「現場」を納得させ、彼等が自律的に動くように仕掛けなければ成果は出ない。この課題とその解決策の示唆をマネーボールを与えてくれる。

アスレチックスのGMビリーは、エール大卒のピートを雇い入れ、セイバーメトリクスをもとにしたチーム作りに乗り出す。しかし、監督は統計をもとにした、突飛ともいえる選手起用(故障でキャッチャーとして使えなくなった選手を未経験の一塁手にコンバート、など)に激しく反発。自分の意に沿った選手起用を続けチームは不振を極める。

ここでビリーがとったアクションがポイント。彼は「分析家」であるピートに、言いにくいトレードを彼自身から選手に告げさせると共に、チームに常に帯同するよう命じる。この場面は、データ分析それだけで成果を出すことは難しく、分析者の「結果へのコミットメント」と「深いコミュニケーション」が決定的に重要であることを見事に描いている。ピートはビリーの鼓舞に応え結果を出すことに彼自身深くコミットし、選手それぞれに統計的洞察がプレーで持つ意味を丁寧に、直接のコミニュケーションを使って紐解いていく。その結果チームは大躍進を遂げる。

そして、これらは経営の現場にも当てはまる。データサイエンティストが、優れた洞察や示唆を与えても、それだけでは現場は動かない。逆にデータサイエンティストがロジックを振り回すほど現場はそれに懐疑の目を向けたり、感情的に反発してくる。データ経営、というと最新の経営手法に聞こえるけれど、具体的な成果を出すには、コミットメントとコミュニケーションというビジネスのあらゆる場面で必要となる要素が不可欠、ということをマネーボールは分かりやすく教えてくれる。

このこと以外にも、組織をまとめるマネジメント手法、経営における「物語」の重要性、コミュニケーションの「科学」、など最近個人的に関心を寄せている要素が多く含まれている作品。ビッグデータや人工知能、データサイエンティスト、という言葉が一人歩きしている今こそ観る価値があるのでは。

注)この記事は別のブログに書いたものを加筆・修正しています


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