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優れた戦略とはどういったものか?

「経営」というと経営戦略を作ったりM&Aを推進したり、といった活動のことだと考えている人は多いと感じる。

そういう「派手な」活動にある種のカッコよさを感じて、それこそ経営だと感じる気持ちはとてもよくわかる。ただ、事業を実際に日々経営していく上で重要なのは、「V字回復の経営」「企業変革の実務」といった本が詳述しているように、「自律的な課題解決メカニズム」が現場の隅々まで浸透しているか、だと思う。

ハイレベルの戦略や方針をきっちりと作り込むことはもちろん重要だ。ただ、経営の実践でもっと大切なのは、その戦略や方針が現場での日々の会話や意思決定に貫徹されていること、そしてそれが具体的な成果に結びついているか、ということ。

なのに、イケてないマネジメントはすぐ「戦略を作ろう」「組織はどうする」みたいな形式論から入りがち。そんなことの前に、まず現場で直接顧客と向かい合い奮闘している人たちに直接話を聞いて、そこでの会話や意思決定の背後に潜む「課題解決のメカニズム」のどこに課題があり、またどこに希望があるのかを徹底的に考え抜く必要がある。

また、「現場の話は聞いた」と言いつつ、単に「聞いただけ」の人もすごく多い。相手の言っている表面的な内容だけでなく、そこに込められた意図や感情、相手の表情や雰囲気、その発言から透ける組織の力学、など一つの発言を多様な観点で捉えて、そこから立体的に課題を抽出できているか、といったことこそマネジメントの本質的な力量が問われるところ。

よく「戦略は良くできていたけれど現場が動かなかった」的な話がある。でも、それって、戦略そのものが良くできていなかった、のだと個人的には思う。だって戦略策定の段階で、現場の「自律的な課題解決メカニズム」を生み出すための制度設計、という経営における一番大切な要素の一つが抜けていることになるから。

私も、自分が担当している事業の次の一手を考えるときに、実際の現場の話を聞いたり、組織を駆動しているメカニズムをよく考えることなく、つい過去の成功体験をもとに抽象的に考えてしまうことがある。「顧客から」「現場から」考えること、そして、それを経営の意思決定に的確に反映していくこと、というのは案外難しい。この点を自戒しておきたいと最近あらためて考えている。

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★ボーナス・トラック★
私が働いている「外資系」の世界でも「現場から乖離したマネジメント」というのは大きな課題です。そのことについて書いてみました。

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