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リライト論[第五章]リライトの定義(4) 一定の情報を追加・削除して文章を変える。

一文を削除し文章を変える

4つのリライトの定義の最後「定義(4)内容は変えずに一定の情報を削除あるいは追加して文章を変える。」である。
定義(4)は、定義(2)における文章を増減する指示に“ある条件が付く”
場合とも言えよう。作業内容自体は変わらないが、削除する内容が
規定されているだけに、リライト後の整合性を図るのに作業時間はかかる。

※よろしければ、これまでの章をお読みいただいてから
    第5章をお読みください。
[第一章]「リライト」について

[第二章]リライトの定義(1)トーンを変える  

[第三章]リライトの定義(2)字数を変える 

[第四章]リライトの定義(3) 文章を整える。

「基本文(元となる一つの文章)」は定義(1)(2)と同様だ
(<3>はよりリアルにするために他の文を使用した)。

さて今回は、この基本文から「日本社会がいま直面する超高齢化という
課題のために」という一文について、「高齢者以外のターゲットに対象を
広げたいから特定の課題にはふれないでほしい」というオーダーがあった
場合を想定して実際にリライトを行う。
広告・販促の分野では、このようにクライアントの方針転換により訴える
ポイントが変わり、リライトの必要が生じる場合がある。
もちろん超高齢という課題にふれない分、文字数を減らしてリライトする
場合もあるが、ここでは、上記24文字分の情報を削ったうえで、
なお166文字を維持するリライトを行う。主としてレイアウトの都合上、
このように“情報の一部を削除したのに文字数は維持”することも多い。

★基本文(元となる一つの文章)
日本の風土と時代に適した住まいをつくり続けてきたXY住宅の技術を、日本社会がいま直面する超高齢化という課題のために広く役立てていきたい。 ゴールド住宅「PLENTI」は、私達のそんな思いから出発しました。
高齢者の皆様が心身共に健やかに暮らせる住まいへ。「PLENTI」というブランドには“豊かさ”あふれる人生という願いを込めています。
 ↓
【リライト後のコピー】
日本の風土と時代に適した住まいをつくり続けてきたXY住宅の技術を、より広く役立てていきたい。 ゴールド住宅「PLENTI」は、私達のそんな思いを叶えるために出発しました。
この空間が生活の基点となる皆様にとって、心身共に健やかに心地よく暮らせる住まいへ。「PLENTI」というブランドには“豊かさ”あふれる人生という願いを込めています。


もう一つの文章を加えてリライト

次は「一定範囲の情報を付け加えて」の「一定範囲の情報」がもう一つの
新たな文章となる場合である。もちろん、そこで「一定範囲の情報」 が
長くなればなるほどリライトの基本的な定義からは外れ、それだけ手間が
かかることは理解していただきたいと思う。そしてもちろん
「内容は変えずに」という私が設定したリライトの定義も逸脱せざるを
得ない。

たとえば下記のような231文字もの「一定範囲の情報」を「元となる一つの文章」に加える場合、文章は以下のように変化する。

これはもう“ほぼ二つの文章”を結合するに等しい。


文章量は定義(2)の文章量増の 場合と同じく166文字を200文字(約121%)にする、とした。

(追加された『一定範囲の情報』231文字)
「1960年7月、住宅のコンサルティングを行うエックス住宅産業として設立された当社は、70年、東京・高輪に新本社を建設し住宅建設部門を新設した。そして翌年、米国内第三位の売上高を誇っていたXYカンパニーとの
合併に伴い社名をXY住宅に変更。72年に「XY」ブランドを基幹商品として
売出して以降、高い評価を得てきた住宅づくりの視点は「PLENTI」の
スロープ付きの玄関や手すりを施したトイレ・バスルーム、オール電化に
対応した操作パネルの使いやすいデザインに生きている。」

【リライト後のコピー】
「1960年の創立以来、日本に合った住まいを提案してきたXY住宅の技術を、社会が直面する高齢化のために役立てたい。ゴールド住宅「PLENTI」 は、
30年以上「XY」シリーズをお届けしてきた私達が、新たな時代への視点から生んだブランドです。
スロープ付き玄関や手すりを施したトイレ・バスルーム、使いやすい操作パネルなど、「PLENTI」という名には心地よさを通した“豊かさ”ある 人生への願いを込めています。」

以上から分かる通り、“ほぼ二つの文章”を合わせたコピーの内容は、
基本文から大幅に変化している。これは基本文を踏まえて書き直していた
定義(1)(2)とはかなり異なる。二章で述べた通り、リライトは
「元となる一つの文章」に手を加える場合と定義していたのだが。

ここで書く際に留意したポイントは(1)創立年を残して歴史を語り
(2)「30年以上」と記述することで「XY」シリーズの歴史も語り、
一方で(3) 「70年、東京・高輪に新本社を建設し住宅建設部門を
新設した。そして翌年、米国内第三位の売上高を誇っていたXYカンパニーとの合併に 伴い社名をXY住宅に変更。」という部分は基本文の「PLENTI」
ブランドに直接関わらない、より沿革的な色彩の強い内容なので削除し(4)「高齢者の皆様が心身共に健やかに暮らせる住まい」という抽象的な記述の代わりに「PLENTI」の具体的な特長を入れた。

以上4つの留意点を反映させるために、前後の文章は大幅にその構造を
変えている。
しかし、これに類した作業の多くも広告業界の常識としては 「リライト」の範囲に含まれるのである。

もちろんゼロから文章を作成するのではなく「元となる一つの文章」がある以上、論理的にはリライトと言えるのだが、現実的には“手間がかからない” という印象のあるリライトの範囲を超えており「本来はリライトとは言うべきでない」と言いたい。
そしてこの作業はウィキペディアのリライトの定義「ある一定の目的を持ってほぼ全部を一から書き直すこと」(第一章参照)とも異なる。

つまり、既にこれは、新たに別の文章を書く行為に近い。

※もう一度、よろしければ、これまでの章もお読みください。
 コピーライターの仕事の一端もお分かりいただけます。

[第一章]「リライト」について

[第二章]リライトの定義(1)トーンを変える  

[第三章]リライトの定義(2)字数を変える 

[第四章]リライトの定義(3) 文章を整える。


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