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階段は、無料のジム。

メトロの駅はジムの宝庫だ

タイトルの言葉を実感しながら私は、日々、駅をはじめとする様々な
階段を、この2本の足で上がり下りする。

この5か月、仕事で東急大井町線の「大井町」駅から、りんかい線に
乗り換えて「天王洲アイル」駅まで通っていた。
りんかい線のホームは地下にあり、地上から改札口までの階段数は129段、ここから1番線・大崎駅方面まで55段下り、さらに2番線・新木場駅方面には68段下りる。したがって私は、行きには2番ホームまでの全252段を小走りに下りていた。帰りはその上の1番線に着くので、地上まで出るには184段
上がればいいのだが、それでも一気に歩くと相当な運動量になる。

都営地下鉄大江戸線「六本木」駅ホームから俳優座前「6」番出口までの
階段数は数年前、201段
あったが、六本木の打合せでは、
「青山一丁目」から大江戸線を使って、よくこの階段を上がっていた。
改修工事が頻繁に行われる都内の駅で、環境が変わっていなければ
そのままのはずだ。

しかし、これらの階段には折れる箇所に踊り場があるので、やや休める
のだが、何年前まで東京メトロ・半蔵門線の「永田町」駅から有楽町線に
乗り換える直線で96段の階段があった
当時の私はいつもここを一気に駆け上がっていた。独立前の30代の頃は、
2段ずつ駆け上がっていたが、これは大学のボクシング部の猛練習の
賜物だったかもしれない。

もはや現代人は階段を上らない?

タイトルの「階段は、無料のジム」という言葉だが、分かりやすい表現の
ためか、意外に知れわたっていて「#駅の階段は無料ジム」という
ハッシュタグまである程だが、駅や商業施設の階段を上がる姿は、
極めて少数だ。

写真は、ある日、階段を上がりながら撮影した「大井町」駅の地上に出る184段の途中だが、一緒に上がる人はこの日も見なかった。

インターネット上には、子供の歩数の調査がいくつか見られるが、いずれも10年前後以前のデータで、2012年にベネッセが「歩かない子どもが増加」と警鐘を鳴らしていた。
また、私のコラムでは2009年7月29日に、アシックスの「幼児の体力調査」で前年記録を下回る幼児が増加しているという指摘が、NHK「おはよう日本」の放送として記されている。このニュース内において「最近の幼児は1日の歩数が少ない」という前橋明・早大教授の発言と、
「階段上らないの?」という問いに「疲れるから」と答える幼児の様子が
書き留められている。

このゲーム全盛の世の中で、子供たちの歩数がここ数年で急増している
とは、もちろん考えにくい。そうした傾向が、階段どころか地上すら
歩くのを嫌う大人を生み出している、という仮説を立てることは
極めて容易だ。

105歳で亡くなられた日野原重明・聖路加看護大学学長は、かなりの
高齢まで階段を2段ずつ上がっていたと言われるが、「無料のジム」を
使うことが、健康寿命に好結果をもたらすことは言うまでもない。
それを無視してエスカレーターに立ち、スマホの画面を背中を丸めながら
見つめて運ばれていく姿は、“歩けない老人”の増加をもたらさないか、
と大いに危惧する。

そう言えば先日、その「大井町」駅の階段で久しぶりに、まさに地上に出る辺りで階段を上りきる人影を見上げた。
それは、学校帰りの子供でも、部活帰りの中高生でも、ダイエットを
気にする女性でもなく、後頭部がやや薄い、たった一人の中年男性だった。

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