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魔法のエフェクター「BBE Sonic Stomp MS92」

モコモコ引っ込んでいた音が、「BBE Sonic Stomp MS92」を繋ぐとグッと音が前に出てくるとても不思議なエフェクターです。
うまく表現ができませんが、音色が変わるというより、音の性質が変わるという印象を受けました。
この手のエフェクターは賛否両論ありますが、まずはメカニズムを理解するのが大事だと思います。
メーカーのサイトに技術的な文章がありましたので、それを基に自分が理解したことをまとめてみました。


音の仕組み

自然界で聞く音は基本波とそれぞれの音に特有の高調波成分から成っている。

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基本波は単に音の高さ(音程)を決めるサイン波、
高調波には音色を決める重要な情報が含まれている。高調波の量とその時間的位置関係などから我々は何の音色なのかを判断している。
ピアノ、バイオリン、フルートなどの楽器を識別したり、同じピアノでも高調波の含まれ方によってピアノの種類まで判別することができる。
人の声もこの高調波によって誰の声なのか判別することができる。


基本波と高調波の関係と聞こえ方

高調波は基本波に対して特定な時間的位置と強さを持っている。
音の情報を正しく伝えるためには、この時間的位置と強さを終始保つ必要がある。

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自然界では1サイクルの基本波に付随した高調波のほとんどは基本波より先に届き、若干残りが基本はより後に届く。
これは音が発生するメカニズムに関連するものと考えられている。
例えば、ベースを指で弾く場合、指が弦に触れた瞬間にノイズ(ピッキングノイズ)が発生する、このノイズが高調波の一部になる。
そして若干遅れて弦が振動し始める。これが基本波になる。

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音が人間の耳に届くと、そこで周波数分析が行われる。
脳へ音の始めの部分(高調波)が入るとすぐに解析を始める。
しかし、その直後に入ってきた後半の部分(基本波)はマスクされて、耳には届いても聞こえにくくなる。
これは、早く音を判断して然るべき反応をするための人間の自衛機能の一部と言われている。

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スピーカーシステムの問題点(音の劣化)

自然界の音をマイクで撮り、録音したり、イコライザーやフィルターを通したり、増幅したり、最後にスピーカーを駆動するとその過程で一般的に高域が遅れ、それと同時にそこに含まれる高調波にディレーが生じる。
多くの場合、基本波が先に来てしまい、高調波がマスクされ音の明瞭度が急に悪化する。

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BBEプロセス

BBEプロセスとは、上記の問題を論理的に解決するために開発されたもので「BBE Sonic Stomp MS92」にも搭載されている音抜けを改善する仕組みの事である。
まず、音の周波数を3つの周波数バンドに分割する。

低域:145Hz 以下
中域:145Hz ~ 2.5KHz
高域:2.5KHz 以上

そして、低域に 2.5ms、中域に 0.5ms ディレーを加えて、相対的に高域を先に進めることで、自然界の音に近い状態に戻す。

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まとめ

エフェクターは、原音に ”味付け” をして、音圧や音抜けの改善を施すものと考えていたので、BBEの自然の音に近い状態に戻すというアプローチはとても興味深いです。
スペアナにきれいな波形が描けたとしても、人間がその音を認識できなければ意味が無いということも、とても勉強になりました。
特殊なエフェクターという印象がありますが、メカニズムが解れば使いどころも見えてくるのではと思います。

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