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マスターズ優勝・松山英樹に学ぶ日本スポーツ改革論。

この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:スポーツ経済学の新しい方程式を発見した件。スポーツ文化とは何か。松山英樹マスターズ優勝を分析する。アメリカメディアの日本ゴルフ界理解の甘さ。日本スポーツ界発展のための「個人主義のススメ」。トップ画はhttps://qr.quel.jp/pv.php?b=3C12dE0

スポーツ経済学におけるシン・方程式

わかりましたよ、スポーツを発展させる方程式が。

経済✕スポーツ文化=スポーツの隆盛

です。

いやなに、これは僕の発見じゃなくて、ゴルフと日本経済の関係を論じたThe Wall Street Journal2021年4月13日号の分析のパクリです。

記事のタイトルはMasters win boosts Japanese golf(マスターズの勝利で日本のゴルフが上がる)です。

大学でスポーツマネジメントを教えている関係で、スポーツと経済に関する何か新しい切り口がないかなと探していたところ、「コロナ禍で松山英樹マスターズ優勝」の見出しがあるこの記事に目が止まったのです。

The Wall Street Journalのこの記事は、のっけから挑戦的です。

「なんで日本は今ごろマスターズ優勝なんだ。もっとはやく実現してなきゃおかしいだろ」。

だって日本はゴルフコースが全国に2000もある、アメリカにつぐゴルフ大国なんだぜ。

もっとはやくあの「グリーンジャケット」を着る男が出てもよかったはずだろ。

前掲The Wall Street Journal

スポーツ経済方程式解析

The Wall Street Journalはここで、独自のスポーツ経済論を展開してみせます。

冒頭に申し上げたように、それはスポーツの発展、具体的に言うと世界の頂点を制する選手が出てくるためには、その国の経済状況とそのスポーツに関する文化、この2つが決め手になる、というのです。

具体的に言うと、こういうことです。

1.松山英樹が生まれたのは1991年、まさにバブル崩壊の年だった。

ここから30年をへて彼はマスターズを制したわけだが、この30年の日本経済のあり方こそが、ゴルフ界を変え、マスターズ優勝者を生んだ。

2.この30年は豊かさから倹約という、日本経済の流れにほかならない。

かつてゴルフ界は高度経済成長の恩恵で、サラリーマンのステータスとして会員権ビジネスで潤っていた。

しかしそのビジネスモデルは消滅、ゴルフ界は若者、女性を取り込む戦略に変革を余儀なくされた。

3.その変化の中で次々と世界をねらう女子選手が台頭、樋口久子に続く、逸材が現れ始め、男子もやっと松山英樹という世界的なスターが生まれた。

42年前メジャー制覇、樋口久子。https://qr.quel.jp/pv.php?b=3qiZkLP

単純だがロジックはあってる

The Wall Street Journalのこの分析は「ちょっと違う」のですが、考え方としてはあっている、と思うんですよ。

スポーツもビジネスですから、景気の影響を受けるのは当たり前で、ゴルフも確かに会員権という殿様商売は通用しなくなったので、女性、若者にターゲットをシフトした、というのはわかります。

ただ、ゴルフというスポーツ文化の理解は、アメリカのマスコミはまだわかってねえな、と思うのです。

ゴルフは、まだまだ日本で敷居の高いスポーツで、活躍するプロは裕福な家庭に育ち、父親から英才教育を受けプロになり、群雄割拠の争いの中から頭角を現す、そんなストーリーがまだ幅を利かせる、言ってみればやや狭いスポーツ世界であり、文化です。

スポーツ文化的には、まず指摘できるのは個人スポーツ、ということです。

日本人の大好きな野球に代表されるチームスポーツとは、真逆である、といえるでしょう。

そしてもう一つの特徴はカネがかかる、ということ。

コースフィーに加えて、ゴルフ用具の高いこと、ゴルフは今もって庶民のスポーツとはほど遠いのです。

松山英樹は、小中学校からクラブで切磋琢磨し、甲子園のようなトーナメントを目指し学校のクラブで練習に明け暮れ、上下関係の厳しい世界世界で先輩たちに気を使いながら、のし上がってきたわけではありません。

つまり、彼は従来の日本型スポーツとは違う文化に育ちながら、世界の頂点をとったのです。

経営学的に言うと、天才がよけいなことを省いて、最短コースで天分を活かす最高の環境、指導を受けてきたその集大成、これが松山英樹と言えるのです。

ゴルフが、日本的な悪しきスポーツ文化から隔絶されたスポーツジャンルだったゆえ、松山英樹はマスターズ優勝を掴んだと言えましょう。

あなたの息子を大谷翔平にする最短距離とは

僕の知り合いの学生にも、日本の、集団を活かすために個を殺すスポーツ文化の犠牲者と思われる学生が、少なからずいます。

大学入学する前に、すでに肩はボロボロ、ヒジは使い物にならない、といった選手たちです。

聞いてみると「エースは僕だけだったから、無理して5連投せざるを得なかった」など、皆判で押したように同じことを言うのです。

これから日本が真にメジャーリーグを押しのけて、世界一になるつもりなら、こうした野球の文化を変えていかなくてはならないのではないでしょうか。

しかし、大人が甲子園という既得権にしがみついているのを尻目に、子どもたちは、そして賢い両親たちは、こう考えていると思います。

「息子は将来プロでやらせる。それもメジャーでだ。

だから甲子園至上主義の旧態依然のスパルタ・根性野球は最初っからやらせない。

元巨人でやってたあの選手のキッズ・ベースボールスクールに入れて、一対一で教えてもらい、楽しくやらせる。

なあに、要は技術だ。チームワークなんて、個の実力があってのこと。

肩も肘も膝も消耗品。ドラフトのときは、むしろ酷使してないカラダのほうがウリになる。」

息子をプロにと考えている賢い親のひとりごと
有料野球塾。https://qr.quel.jp/pv.php?b=3OIbW9y

悪しき日本のスポーツ文化に背を向けろ

そう、野球文化が変わらないなら、そうやって自分でそのスポーツ文化を変えていけばいいのです。

経済は?

経済も、お父さんが頑張って、起業をしてお金を息子につぎ込めば、景気の影響を受けることはありません。

でもお金がなくても大丈夫、お父さんがバッティングセンターでバイトすれば、息子を毎日1時間位タダで打たしてくれるでしょう。そう、あの「チチロー」のように。(笑)

https://qr.quel.jp/pv.php?b=45DxmdZ

こうした新しい子供の野球キャリアを伸ばす方法を、「野球版・松山英樹方式」とでも名付けて、普及しましょう。

可哀想ですよ、甲子園の決勝でエラーして、一生その責めを負わせるような集団至上主義のお化けみたいなスポーツ文化に、あなたのお子さんを置くのは。

素質があって、それだけでメジャーのスカウトの目にとまるのに、たかが地区大会で勝つために、10連投して肩を壊して日本のプロにさえ行けないなんて。

お父さん、今日キャッチボールをして息子さんの野球の才能はわかったでしょ?

ダメですよ、野球の名門校に入れよう、なんて考えは。

The Wall Street Journalの、経済✕スポーツ文化=スポーツ頂点ねらえるアスリート輩出は、間違いではありません。

スポーツ文化は、しかし、その国の文化の反映でしかないと考えた時、日本は大きなものを失っているのではないか、そう危惧する次第です。

それでは今日も暴論、失礼しました。

ではまた明日お目にかかりましょう。

野呂 一郎
清和大学教授



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