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格闘技振興には、今こそテレビのチカラが必要だ。

経済的繁栄がなければスポーツは根付かない

昨日スポーツ経済理論:経済×スポーツ文化=スポーツビジネスの成功
というお話をしました。
 
この方程式の「経済」、という項について考えてみましょう。
 
以前もお話ししたかもしれませんが、僕の空手の師範からこんな話を聞いたことがあるんです。
 
それは彼が、インド政府に乞われて空手の指導をしに、インドに赴いた時の話です。

僕は何気なくこう尋ねたんです。

「先生、インドでの空手指導、お疲れさまでした。さぞかし大盛況だったでしょうね」。

師範はこう答えたのです。

「いや、そうじゃなかったんだ。インドの人たちは生活が大変で、スポーツどころじゃないんだよ」

インド新極真会 https://qr.quel.jp/pv.php?b=43940m8

僕は、自分のありきたりな想像を恥ずかしく思うと共に、なるほどと得心がいったんです。

「そうか、俺たちは普通にスポーツなどをやっているけれども、食うや食わずだったらどうだろう、スポーツどころじゃないよな」

筆者独白

考えてみれば当たり前のことです。

スポーツ振興の絶対条件が、豊かさ、ある程度の経済的な成功であることは間違いないのです。

動画配信サービス時代の落とし穴

日米欧のスポーツビジネスの現状を見てみると、そのビジネスモデルは、ゲート収入(入場料)よりも、DAZN (ダゾーン) 、Hulu、JSPORTS, Rakuten TVのようなむしろ動画配信サービスの放映権に移っています。

かつてはESPNとスカイスポーツに代表される、スポーツ専門の衛星放送、ケーブルテレビ局が優勢でしたが、今やスポーツ専門の動画配信サービスの時代が来たようです。

2位、5位はスポーツ衛星放送だった。筆者の大学講義資料

そうなんです、スポーツといえばTVの時代は、終わりつつあるのです。

オリンピックやワールドカップなど、キラーコンテンツと呼ばれる価値のあるスポーツイベントの放映権料が爆上がりし、もはやテレビ局が買えず、ダゾーンのような有料メディアが放映権を得つつある、そういう時代に突入しているのです。

格闘技の将来が心配だ

未だ記憶に新しい、立技最強決定戦、那須川天心(なすかわ・てんしん)vs武尊(たける)が東京ドームで一騎打ちした興行は、当初フジテレビで放映されるはずでした。

https://qr.quel.jp/pv.php?b=3MIFi4W

しかし、様々な理由でフジはこの放映をドタキャン、結局アベマTVが有料生中継を行い、一説には有料視聴者が50万人を超えたと言われています。

ボクシング史上最強の男とされる、井上 尚弥(いのうえ・なおや)の試合も、もうテレビでは見られません。

放映権料が上がりすぎて、テレビ局がもはや買えないからです。

スポーツ経済論的に言うと、いまのスポーツの現状というのは、一部の金持ちだけしかスポーツを楽しめない、そういうことなのです。

ボクシングみたいな成熟したスポーツジャンルならいいですよ、でも総合格闘技みたいな新興スポーツにとって、この流れはよくないです。

まずは、経済的に恵まれない、有料放送を見られない人々が、無料でそのスポーツを楽しめ、好きになるようなプロセスないと、そのスポーツは発展しようがないじゃないですか。

スポーツがブレイクするには、大衆性を獲得することが、まず必要ということです。

総合格闘技なんて、まだ一般に知られてないのだから、まずはテレビで無料で見られるスポーツにしなきゃダメなんです。

一部で反社の噂がテレビを遠ざけたと言われていますが、そういう噂が出るようなガバナンス(不正を防ぐしくみ)不在が問題なのです。

今後、あらゆるスポーツにより厳しいガバナンスが問われようになるでしょう。

しかし、それにしても、です。

放映権料の高騰により、スポーツが一部の富裕層のものになり、一般庶民から遠ざかるような今の傾向は、ある意味スポーツの危機、ともいえるのではないでしょうか。

もう一つは、冒頭に述べた、経済とスポーツの関連性です。

その国が、人々が経済的に満たされてなければ、スポーツは繁栄などしないのです。

その意味で、日本や欧米はスポーツを楽しめるだけの、経済繁栄を手にした、と言えるのです、いまさらながら、ですが。

各論を言えば、格闘技は心配です。サブスクで月5000円以上出せるマニアしか、格闘技を見れなくなっているからです。

格闘技の将来を考えたとき、いまこそテレビ放映で、このジャンルを一人でも多くの国民に観てもらい、未来のファンを育てるべきなのです。

戦略とは、長期の、できれば100年後生き残る考え方のことです。

格闘技の戦略とは、だから、いかにテレビのレギュラー番組を多く作っていくか、これにとどめを刺すのです。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
じゃあ、また明日お目にかかりましょう。

野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー


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