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アメリカの100円ショップ“ダラーツリー”のコストカット戦略

”百均”は世界的に見てもコロナの勝ち組

帝国データバンクの調査では、大手5社を中心とした2020年度の100円ショップ業界の売上は11年連続で増加しています。大手のセリアなどでは2020年度業績で過去最高売り上げを見込むなど、各社の業績は好調、業界全体でも売上高で過去最高を更新しました。

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コロナ禍の巣ごもり需要がプラスに働いたと考えられていますが、アメリカの100円ショップもだいたい同じ傾向です。

しかし、様々なコストが上がっている中、経営はそう簡単ではありません。今日はアメリカで1万6000店を展開する、ダラーツリー(Dollar Tree)がコスト上昇圧力をどう乗り切ってきたか、また今後の戦略などを紹介しましょう。(The Wall Street Journal2021年7月12日号より)

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ダラーツリーの戦略

ダラーツリーとは、ビーチサンダルから洗剤の小さなボトルまで、ほとんどのものを1ドル以下で売ることで有名な、日本でいうところの百均ショップチェーンです。

ターゲットは中間所得層で、店舗は郊外に集中しています。安売り商品バーゲンハンターと呼ばれるお買い得を欲しがる消費者を常連客としてとりこむ作戦です。休日のデコレーショングッズ、工芸品などを43セント内外で仕入れ、1ドルで売る、これが基本的なダラーツリーの戦略です。

コロナリスクに直面するダラーツリー

コロナで世界的な輸送、製造が滞っていることに加えて、米国内の輸送費、スタッフの賃金、原材料費いずれも上がっており、1ドルを維持するのは相当困難です。

しかし、ダラーツリーCEOのマイケル・ウィティンスキーさん(Michael Witynski)は「お客さんが30年間、1ドル以下の商品を期待してくれてるのだから、この路線は崩せない」と言います。

同じ小売でもP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)とかゼネラルミルズはコスト上昇を販売価格に転嫁していますが、それはできない、というわけです。

それも当然、ダラーツリーの名前が示すように、1ドルという価格が売りの形態ですからこれを崩すわけにはいきません。ロックダウンが終わり、また消費者が帰ってきました、このことにすがるしかないようです。

ダラーツリー、安売りを可能にする秘密

・ほとんどの製品がストア・ブランド:日本ではプライベート・ブランドと呼ばれる自社企画、製造の商品をメインに売っている。

・フレキシビリティ(柔軟性)。自社製品がメインだから、すぐに急な需給の変化にも対応できる。

・材料をより安く:金属ハンガーをダンボール製のものに変えた。

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・ 発送費節約:1ドルのギフトバッグは箱売りで1箱24個入りを、72個入りに変えた。発送料は変わらないからだ。

・ カートン売りの卵はコスト込で売る:卵の価格は6個、12個、18個入でコストにより変動することがある。その時のコスト込で売ることにした。

・価格帯を変えて新製品発売:バスケットボール3ドル、旅行用首枕5ドルなど。

・新業態店舗発進:別に運営する、様々な価格帯の商品も扱うファミリーダラー(Family Dollar)とダラーツリーを合体させた新業態”コンボストア(combo store)を開発。

投資家とアナリストの心配

投資家は、今の環境はこれまでと違うとして、ダラーツリーを心配します。

これまで30年間、非常に低いインフレ環境で運営してきて、低インフレの恩恵をダラーツリーが受けてきたことを指摘します。

インフレについては私も別の記事で警鐘を鳴らしていますが、確かに今のアメリカはインフレの勢いが急です。

アナリストは賃金も心配します。70%がパートタイマーのダラーツリー、時給の値上がりと、法律で今また最低賃金がこれからも上がっていきそうなのです。ダラーツリーのスポークスパーソンは「賃金のプレッシャーは今に始まったことじゃない、大丈夫です」の胸を張るのですが。

ダラーツリーの弱点

このパンデミックでは、すこしダラーツリーの弱点が出たようです。

巣ごもり需要で勿論恩恵を受けたのですが、激安ライバルのダラー・ゼネラル(Dollar General)とかウォルマートに比べて、売上の伸びがゆっくりでした。

それは販売戦略のまずさだったと指摘する声もあります。例えば、ダラーツリーは人々がパーティなんてこの時期やらないのに、欲しいものは食品とか日用品なのに、パーティグッズの販売に力を入れてたりしたのです。どうも個々の店舗に裁量を与えすぎているようです。

店舗ロケーションも考え直す必要があるかも知れません。ダラーツリーはほとんど郊外店です。ダラー・ゼネラルは平均収入以下の顧客がターゲットですが、出店は主に都市部です。

さて皆様いかがでしたか。

まあ言ってみればダラーツリーはドンキみたいな感じだと思います。楽しさを求めて来る客もターゲットだと言ってましたから。仕入れもそんなに戦略があるとは思えません。ドンキもいい意味で適当なところがあると思います。

しかし、CEOが言っていたように、30年間愛されてきたからこのスタイルを守る、という言葉になにか秘密があるような気がします。

それは信頼ということではないでしょうか。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

それではまた明日お目にかかりましょう。

                           野呂 一郎

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