見出し画像

柔道部に教わった「スポーツマネジメントとしての柔道」。

この記事を読んで、あなたが得られるかも知れない利益:今日は大学のスポーツマネジメントの授業で「柔道」を取り上げたが、柔道部の学生が後で色々教えてくれ、実践的な講義になった件。

プロの目という視点

やっぱりね、大学の経営学講義っていうのは、どうしても机上の空論というところがあるんですよ。

それはあくまで理屈であり、実践で証明できたわけじゃない、というわけです。

スポーツマネジメントの講義も、まさにそう。

だから実践をやっている「プロ」の目がほしいんです。

今日は2011年第13回全日本大学体重別選手権、「日本大学vs東海大学」のビデオを見ながら、以下の論点を中心に、僕が解説をした次第です。

・団体戦を勝つために、最も重要なのは意識ではないか
・NHKなのに、特定スポンサーのドリンクを映していいのか
・柔道は危険技についての意識が足りないのではないか
・道着をはだけるのはみっともない、美意識も採点せよ
・オリンピックなどと違い、両校とも白い道着はなぜ?
・東海大・上水監督の言う「意識の力」とは精神論に過ぎないのか

試合ビデオより

柔道部員が教えてくれたスポーツマネジメント

12年も前の試合を、どうして流したかというと、「ちまたで噂の日大」に絡めて、「大学のガバナンス」を論じたかったからです。

もう一つは、この試合は柔道の素人が見ても非常に面白く、さまざまな観点から自由に柔道を論じることができ、スポーツマネジメントにも示唆があると考えたからです。

以前もこの映像を使ってスポーツマネジメントの講義をしたのですが、今日は11年ぶりの復活を企みました。

そんなことで、上述のテーマをつらつら解説したのですが、授業が終わってから柔道部の学生たちから、意外な応援の声が聞こえてきたのです。

テーマの答えも出てくるので、彼らの先ほど僕に投げかけてくれた言葉を紹介しましょう。

柔道部学生A:「のろちゃん、今日の講義面白かったよ」

のろ:「えーなんでぇ?柔道部のキミたちは柔道のプロだから、そんな映像なんて見飽きて、つまらなかったんじゃないのぉ」。

柔道部学生A:「いや、面白かったよ」、いつも見てる柔道と違くて。

柔道部学生B:「先生、東海大学の名監督の名前間違っているよ、”うえみず”じゃなくて”あげみず”だってば。人の名前間違えちゃダメだよ」

のろ:「それは大きなミスだったな、教えてくれてありがとう」

「意識で勝つ論」by上水監督

学生の鋭い洞察

僕がこの試合で学生に考えさせたかったのは、ある種の製品プロモーションをNHKが放映していいか、という問題です。

東海大先鋒の吉田優也選手が勝ったあとに、◯カリをぐいぐいっと巨大ボトルで飲んでいたところが、大写しでテレビに出ていたのです。それも結構な長い時間、10秒くらいだったかな。

柔道部学生B:

「のろちゃん、あれはあなたが指摘したように、モロ宣伝だよ。公共放送は商品のロゴを映しちゃいけないでしょ。倫理的にも社会的にも。公共放送の範疇をこえてるよ。柔道やってるものに言わせてもらうと、あの飲み方はあの巨大な肺活量に匹敵する豪快な飲み方で、さも美味しそうだろうと言わんばかりだった。

ペットボトルのを飲んでもいいのに、なぜ巨大なボトルで飲ませたのか?

あれは間違いなくビジネスだよ、肺活量のでかい吉田選手が勝ったら、ドリンクゴクゴクの絵をNHKは作りたかったんだよ。」

のろ講義より

のろ:「読みが深いなあ」

柔道部学生C:吉田優也のあの技(回転背負投げ)で、相手が後頭部したたか打ったよね。

あれは危険な技とされ、禁止されたよ。柔道界も安心、安全に厳しくなってきたよ、このごろは。

のろ:「そうなんだ、勉強になったよ」

のろ:「ところでC君、今小学生の柔道は、大外刈り禁止なんだってね。あんな後頭部を地面に叩きつける技は、危険すぎるって理由だ。君はどう思う?」。

柔道部学生C:危険はそうだけれど、しっかり受け身を取れれば、危険でないところもある。」

のろ:「なるほど、そういう考えもあるのか」

学生に柔道を教わった

柔道部学生D:

「先生合気道もやってるし、空手もやってるんだってな、すげえ強いんじゃね?こうきたら、どうする?」

のろ:右のグーパンチが来たら、右の手刀で受けてそのまま、腕を決めながら後ろに回れば、相手が投げれてしまうよ」

僕もわずかばかりの合気道の実践知識を総動員して、即席の技術交流会が開かれました。

10分ほど、柔道部の学生と技の掛け合いを敢行し、いつしか両者は「体の動かし方」の議論に。

柔道部の学生たちが、こうして授業の後に、彼らがコンテンツを直してくれたり、強化してくれたり、ヒントをくれたりしたのです。

来年、この授業をまたやりますけれど、今回よりも遥かに内容が濃くなっているはずです。

ビバ柔道部。

そして僕は、教育コンテンツとはいかにプロの実践家の参画が必要か、ということを身にしみてわかったのです。

こういうふうに、大学の講義が教師と学生のコラボでつくれたら、いいですね。

野呂 一郎
清和大学教授


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?