見出し画像

ポッキーvsポーター。

この記事を読んであなたが得られるかも知れない利益:戦略の神・マイケル・ポーターの5フォース理論でポッキーのグローバル市場での勝算を考える。大量生産品の決定的な欠点は、希少性を発揮できないこと。それは差別化が難しいこと、でもある。

スロベニアでの教え

2014年6月、僕はIMTA(International Management Teachers Academy)という国際的な研修に参加しました。

これは、世界中の大学教員がスロベニアに集い、2週間の訓練をうけるキャンプです。

毎日宿題が課され、睡眠時間3時間位のハードスケジュールは、すべてケーススタディの専門家を育てるためにあります。

日本の大学での教え方を披露する著者(笑)

僕はこのキャンプに2回も出席したのですが(経営戦略コースとマーケティングコース)、日本人の参加は30年の歴史ではじめてで、たいへん珍しがられたものです。

ケーススタディで学んだものは、今後社会に還元していくとして(ほんとかよ)、それ以外のことでの大きな収穫は「ポーターの5フォース理論は使える」ことを確信したことです。

これは戦略コースを担当している、戦略論の世界的権威、ポーランド国立大学の某先生が様々な例を上げて実証してくれたことで、腑に落ちたのでした。

ポーターの5フォース理論

ご存じの方も多いと思いますが、ポーターの5フォース理論とは、言ってみれば業界分析です。

その業界(市場)であなたの企業が戦って、勝てるのか、勝てないのかを判断できるツールです。

ポッキーがある外国のお菓子市場で勝てるのかを、この理論で考えてみましょう。

ポッキーがある国、例えばヨーロッパにしましょうか、その国の菓子市場でポッキーが勝てるどうかは、4つの要素(フォース=力)で決まります。

一つは、新規参入者の脅威、です。その市場には、新しいライバルが登場する可能性が高いか、低いかという問題です。

ポッキー系の菓子市場は存在しないと、この市場はポッキーが一人勝ちします。

しかし、参入障壁(新規企業が参入するためのハードル)は、高くありませんから、必ずライバルは入ってきます。

ヨーロッパならば、お菓子界の王者、ネスレが絶対に入ってきます。

ネスレといえば、ご存知キットカット

グリコより、遥かに政治的交渉力、消費者とのラポール(友愛)の度合い、菓子テクノロジー等々、強いです。

筆者授業より

次は売り手の支配力です。
つまり、お菓子を販売するグリコの、市場での影響力です。

確かに菓子製造技術は、世界でもトップクラスですが、ネスレが出てくると、その特異性はがぜん弱まります。

3番目は買い手の交渉力、つまり消費者が売り手に対して強い立場にあるか、ないかという問題です。

お客様よりも強い立場にある業界があるとすれば、それは行列が絶えない、チェーン店でないお店が限定販売している羊羹とか、アップルパイみたいな美味しすぎるお菓子に限ります。

ポッキーのような大量生産のお菓子が、消費者に対して優位にたつことは、通常ありえません。

4番目は、代替商品があるかないか、つまりポッキーがなかったらかわりに選ぶお菓子があるか、ということです。

これは絶対にありますよね、似たようなお菓子がすでにありますからね、キットカットとか。

結論、ポッキーは欧州市場では勝てない

結局、結論はポッキーは、「アディクト=中毒患者を作れない限り、少なくとも欧州市場では勝てない」です。

リピーターという存在では生ぬるい、です。

アディクトを作らないと、ダメです。

しかしねえ、コカコーラじゃあるまいし、峠の釜めしじゃあるまいし、そんな市場牽引力のある、お菓子などそうそうあるものではありません。

ましてや大量生産で希少性がないですし。

もちろん、ある海外の市場で、その製品が売れるか売れないか、勝つか負けるかは、ポーターの5フォース理論でなくても判定できます。

例えばブランド理論で、絶対的なブランドを作り上げる、もしくは関係者のモチベーションを上げる、などです。

しかし、僕が教わったポーランド国立大学の某先生は、こう不敵にうそぶくのです。

「僕は学者のほか、経営コンサルタントとして超忙しいけど、ほとんどポーターの5フォース理論で片付けてるよ」

「コンサルは5フォースとみつけたり」

詠み人しらず

皆さんもやってみると、「案外深いんだな」とお感じになるかもしれません。

野呂 一郎
清和大学教授



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?