パワーポイントより田中角栄。
この記事を読んで高校生のキミが得られるかもしれない利益:ゼレンスキーのスピーチが最高ではない理由。パワーポイントの弱点。オーラル・コミニケーションの要点
準備こそよいパフォーマンスの秘訣?
きのう、勤め先の清和大学でオープンキャンパスがあり、対応要員として駆り出されました。
僕は特に来て下さる高校生に対して模擬授業などなかったので、スケジュール通り進む次第を見ていたんです。
そしたら突然、野呂先生、経営学の授業について説明してください、とふられ、あたふたしたのです。
常に、準備しておかないとダメですね。
起きることが予想されることを頭に入れて、準備をしておく当たり前の重要性に気がつかされました。
即席のスピーチだから、当然いつも使うパワーポイントは使えません。
だから口頭だけでやったのですが、気がついたことがありました。
パワーポイントの欠点
パワーポイントの欠点は、準備していることです。
おや何を言ってるのかな、さっき準備こそが、といっていた口が
反対のことを言うな、ですよね。
それはこういうことなんです。準備するのは不可欠なんだけれど、それはあくまで「プランA」だということです。
演者は常にプランBを、必要によってはプランCを持たねばならないのです。
パワーポイントで、説明ないし講義内容を準備してくる。それは悪くない。
しかし、パワーポイントの最大の欠点は「固定している」、ということです。
パワーポイントを作りこむ、時に文字で詳しく、図解やビジュアルで目を引くように。
そうした「見せる」パワーポイントのテクニックを紹介する雑誌、書籍、YouTubeが人気です。
どんなにビジュアル豊かでも、動画をちりばめても、グラフを工夫しても、パワーポイントは「固定している」ことが、致命的な欠点なのです。
コミニケーションとはその場の空気に対応することだ
パワーポイントをきっちり作ってきた。あなたは自信満々だ、しかし、中盤にさしかかっても、聴衆の反応がいまいちだ。
理由はいくつかあります
①パワーポイントという形式自体がすでに飽きられている。
どんなに見やすく、エンタテイメントの要素を入れても、パワーポイントという形式そのものが飽きられている。アピールとして凡庸になっている。
②聴衆を見てない
演者はときとして、自分のパワーポイントの出来に酔ってしまい、パワーポイントの画面に夢中、スライドしか見ず、その説明を読んでいるだけ。聴衆とのコミニケーションがない
③情熱が伝わらない
コミニケーションの根幹は情熱。情熱は演者が聴衆の目を見て語りかける以外、伝わらない。パワーポイントの最大の欠点はこれ。
④準備してきたこと以外の情報伝達ができない
よいコミニケーターは、常にインスピレーションに襲われる。
しかし、パワーポイントで準備した原稿は「固定して」おり、臨機応変にインスピレーションを入れることができない
パワーポイントという固定化したコンテンツゆえに、アドリブができないのです。
ゼレンスキーのスピーチ採点
以前に、皆さんにすぐれたリーダーはパワーポイントを使わない、という本を紹介したことがありました。
上にあげた項目は書いてありませんでしたが、情熱が伝わらないから、という部分は同じです。
さて、ゼレンスキーさんのスピーチが国際的に大きな評価を受けており、日本でも同様な賞賛が上がっています。僕も最近の記事でほめた覚えがあります。
たしかに各国の歴史、事情を考慮し、原稿(カンペ)なしで熱意をぶつけてくるあのスピーチは実に訴える力があります。
しかし、あくまであのスピーチは、オンラインでしかない。
外国の議会に乗り込んで、拍手やブーイングを浴びつつ入場し、演説中に日本だったら居眠りしている議員や、関心のなさげな面々に囲まれながら、予定したプランAのパフォーマンスをやったとしましょう。
それは感動のスピーチではあるんだけれど、最高のコミニュケーションではないんだな。
その場の空気をよんで、アドリブを入れる、もしくはプランBに急遽変更する。
いや、もっともいいのは、アドリブでやってのけることです。
居眠りしている議員が、どうしても気になる。
ゼレンスキーはそう感じたら、こういうアドリブを放つかもしれません。
とまあ、ベタなアドリブでしたが、こっちの方が準備を完璧にやって、100回リハーサルしてガッチガチに固まったスピーチよりずっといいんです。
高校生のキミには、こういうコミニケーション能力をつけてほしいな。
どっかの国の防衛大臣みたいに、原稿棒読みでアドリブも何もあったものじゃないスピーチは、コミニュケーションではありません。
でも、歴代政治家で、アドリブを入れた臨機応変のスピーチをできる政治家が、一人います。
田中角栄、です。
「皆さん」、と呼びかけられる政治家が今いるでしょうか?
今日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
では、また明日お目にかかるのを楽しみにしています。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー
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