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結婚の概念から作った結婚式〜北祐介×水流苑まち結婚式〜

五月十九日。

雨の予報はどこかへいき、僕らはついに結婚式をあげた。

式は大いに盛り上がり、はしゃぐ新郎新婦を横目に参加者たちは思い思いの会話を楽しんでいた。

憧れではあるけれども、何かと覚悟のいる結婚。

それは、「結婚は人生の墓場である」と言われるように、自由な個人を捨て去らなければならないものと考えられているからだ。

もちろん、僕にその考えがなかったわけではないが、どうして結婚をするだけなのに「自由」や「個」を捨て去らなければいけないのかが疑問だった。

それに対する答えを人生で初めて0から作った結婚式で探すことにした。

幸せを得るための代償としての「結婚」

そもそも、結婚することでなくなってしまう自由とはなんだろうか。

よくあるのは、他の異性と肉体関係を持つことができない、一緒に住まなければならない、子育てをしなければならない、そのための稼ぎをうまなければならないなど。

また、男側として「嫁に子育てをしてもらうために自分がいっぱい働いて稼がなければならない」とか父としての威厳を保たなければならないとかもあるし、女性側としても、子を授かることで身体的な自由をなくすし、家にいなければならない信仰が未だにあったり、そもそも結婚したんだからと子供を産むことを周囲に求められる。

そもそも好き同士でお付き合いがはじまったのに、どうしてお互いをお互いにここまで縛りあう必要があるのか。

そして、結婚をしたら子供を産まなければならない前提が思いの外多くの苦しみを生んでいるのではないかとも思えてしまった。

結婚における崩壊した前提

ただ、これらの前提が未だに続いているのかと考えたらものすごく疑問である。

そもそも、この前提自体、結婚をしたら女性は子を産み子育てをするためにいろいろな自由を捨てなければならない前提があまりにも女性に対して失礼すぎる。

また、共働きや単身赴任がめずらしくないために、夫婦で違う家に住むことや、妻が家にいないことも別におかしいことではないと思われる。そもそも、僕もまちまちもお互いに自分の家は自分の家にしたいから同居はありえない。そして、自分の使うお金は自分で稼いだ方がストレスが少ないこともお互いにわかっている。

よって、片方がずっと家にいなければならない理由もない。そもそも、僕自身家に帰らない日の方が多い。

また、子供がいる家庭に関しては、あえて離婚した方が経済的な支援を受けられやすいということで離婚している家庭も珍しくないから、ここまでくると結婚の意味がいよいよわからなくなってくる。

結婚式について調べてみても、そもそも結婚指輪が日本で導入されたのが1960年代とかなり歴史が浅いし、チャペルウエディングみたいな盛大な式もここ最近の話だ。そして、そんな人が多すぎて疲れる上に一人一人ともあまり喋れないお金もかなりかかる結婚式なんぞに全く興味を持てなかった。

そうなると、結婚についての縛りは「他の異性との交友関係に制限がかかる」くらいで、別に他の人との性交に興味がない僕たちにとってはどうでもいい話だった。そもそも、僕らが今のパートナーシップを築き始めたきっかけが他の人としたときに不意にパートナーの顔が浮かんで辛くなったからだし、そうなると相手にも失礼だ。

改めて、結婚の意味を考え直す必要がある。現妻のまちまちとずっと一緒にいたいと思い始めた僕はこの結婚の意味を改めて考え直すことになった。

最初からその前提に乗らないための結婚式

まちまちのことをこれからの人生で一緒に生きていく最愛のパートナーとしてみんなに紹介したい。

そして、晴れの気のエネルギーで僕たちのやりたいことをどんどん叶えていきたいと思ってまちまちにプロポーズをした。もちろん、結婚式を一緒にしたかったからというのも大きいけど。

結婚の前提を崩していくとまちまちに言った上で、プロポーズは成功したが、僕らの中でそう決めたとしても、周りはそう思ってくれないだろうと考えた。

であれば、結婚の概念そのものをこっちで用意してしまって、その上でぼくたちが2人で生きていくことを宣言した方がいいのではないかと考えた。

それはお互いがお互いにそれぞれ「個」の尊厳を保ちつつ、自由に生きてもらい続けることが僕たちの望みであり、それが僕たちの幸せに密接につながっていくことを知っているからこその宣言だった。

また、結婚式は一個人が開催できる一番大きなお祭りであることも活かしていきたかった。

だったら、もう盛大な祭りにしたいし、今までやってきたことの全部を詰め込みたい。

前日の夜遅くまで打ち合わせが行われた準備を終え、ついに式がスタートした。

結婚式なのにアイスブレイク?拍手のお作法編

結婚式当日。会場には両親に幼馴染、ワークショップに来ていた元女子高生からわざわざ三万円のご祝儀を持参してやってきた全く知らない人までいる。

これでも、数多くのワークショップを主催して来たつもりなので、お互いの面識がない状態でワークショップを始めることになんら抵抗はなかった。


ただ、今回の参加メンバーには心強い助っ人が多い。

その中の1人は僕の勤め先の上司であり、特にお堅い大企業向けの研修を数多くこなしてきたベテラン勢である【ちゑや】の中村繁さん

せっかくだからアイスブレイクをお願いできないかと提案して見たら快く引き受けてくれた。

そのアイスブレイクはまさかの拍手オンリー。

とはいえど、その拍手が奥深く、なんとお作法まであるという徹底ぶり。

思いの外盛り上がったおかげで、周囲の人たちにだんだんとチームワークのようなものが生まれてきた。

羅生門エフェクトで考える勝手に新郎新婦紹介

アイスブレイクが成功に終わった後、今度は僕の担当に。

出会った時期も過ごした場所もバラバラだから、いろんな視点で新郎新婦を見てもらえるのではと考えて生まれたのが「勝手に新郎新婦紹介」

各グループ三人ずつに別れてもらって、1人3分ほどで新郎新婦の紹介をしてもらう。

母は我が子をどのように育ててどのようにそれを受け入れたかを話し、父はここで結婚式をすることになったキッカケを語り、僕のワークショップに来てくれた現19歳の女子たちは当時のことを語ってくれていた。

最近関わった人も、しばらく会っていなかった人も、いろいろな視点で北まちのことを知れる会になった。

「結婚とは何か?」を考える哲学対話

もちろん、結婚についてのモヤモヤ感を共有しながら、自分たちなりの結婚式を作り上げたかったので、それも忘れない。

そこで選んだのは「そもそも結婚ってなんだろう?」をみんなで考えるための哲学対話。

これを考えたとき、自分でファシリテーターをやるつもりだったので、式までのつなぎをどうしようか考えていたところ、僕のやっていることの価値付けを最初にしてくれて、さらに哲学対話仲間としてもかなりの信頼をおいている盟友の安本志帆さんが哲学対話のファシリテーターをしてくれることになったのはとても嬉しい報告だった。

実際の会で、はじめに口を開いたのは同じく友人であるしほさんの息子ヒカル。

「結婚はお互いに愛し合っているからするものだと思う。結婚詐欺とかあるから、愛し合ってないと成立しない。」

ヒカルの発言は対話のスタートとしてはあまりにも完璧なそれだったように思える。

結婚指輪とか結婚式とか、結婚のおまけの部分についての対話は一切無しに、「愛するとは何か?」などの本質的なところにすぐに入れるようなものを含んでいた。

結果として、対話はかなり盛り上がったようで、「結婚について、愛にこだわる必要があるか」など、普段全く考えないような問いも生まれたようだった。

いいところは残して、面倒なところは無視した結婚式

哲学対話パートは30分。

その間にまちまちと僕は衣装をチェンジし、式に臨む。

「結婚とは何か?」についての僕らなりの答えは「この人がこれからの人生で一番近い人である」と宣言する場だと考えた。

そうなれば、一緒に住まなくても、お互いを縛り付け合わなくても、結婚する意味として十分なのではないかと考えた。

だからこそ、今までの結婚式の全てを否定することはしなかった。

ここまで一番近くにいてくれた両親への感謝を述べたかったり、まちまちを出会わせてくれるキッカケになったまちまちの育ての親のような存在であり、僕に取っても最高の恩師であるセーブポイントの鬼頭さんやみやこさんにもお礼を言いたかった。

そして、何よりも大切だと思ったのはパートナーへの言葉。

お互いがこれからの人生をどのように歩んでいきたいか。

相手に対してどのように接していきたいか。

そして、2人でどんなところに行きたいのかをお互いに伝え合うこと。

それを僕らなりの近いの言葉にしたかった。

なので、来てくれていたホームレスバーテンダー・しょうちゃんにそれっぽい格好をさせて、偽神父として僕らの前に現れてもらい、よくある誓いの言葉を喋ってもらい、それを無視するパフォーマンスを行なった。

その後、自分たちなりの誓いの言葉を読み上げてもらい、それについては誓い、絵描きのりなから僕たち2人の似顔絵をもらうことで、それを結婚の証とした。

新郎北祐介。あなたは今日この瞬間から水流苑まちと新しい人生のスタートを歩み始めることになります。運命は神のみぞ知れど、人生のあらゆる出来事を遊び尽くし、水流苑まちを1人の人間として尊重し、ささいな不安や喜びであってもお互いに感知し、語りあい、水流苑まちをこれまでに出会った人の中で選んだたった1人の妻としてここに誇ることを誓いますか。

誓います。これが、僕たちの誓いの言葉だった。

参加者がシェアしたくなって、感謝したくなる結婚式

式が終わってある程度落ち着いた後、お礼のメッセージを一人一人に送ることにした。

だけど、それよりも早くいくつか参加者からのお礼メッセージが届いたので、他の返信と合わせて紹介していく。

アンチ結婚式な私も本当に楽しくて幸せな結婚式&前夜でした。北さんの周りの人は本当に誰と話しても楽しくて、幸せになれました。
また幸せパワーが足りなくなったらきたまちの2人に貰いに行きます。
いやぁ、母の愛を「言葉」として聞いてね、私はこれから悩んだら北ママに相談しようと思ったよ。
やっぱり親が子を育てるんだなって、思ったし背筋が伸びる感じがした結婚式だったな。

嬉しく、幸せな時間、温かな空間を、思う存分堪能したよ。事前にアクセス見れば見るほど、うわっ、これは結構遠いぜ!と(_;。片道doordoorでなんだかんだ5h近くかかるぞ、と。瞬間的に迷わなくもなかったが、心の声に問うと、迷う理由は全く見つからず即答☝️(*^-^)。それはやはり大正解だった。其処には、深くて温かくて愛情溢れる空間も、素晴らしい仲間の出逢いもあった。直接も間接も珠玉のお題の連続。それは、時間と共に想定を遥かに超えていった。その体験経験は、人生にも仕事にも抜群に生きる。既に。

また、参加者同士もものすごく仲良くなったようで、すでにまた出会うことを約束し、六月の終わりに東京で結婚式のオフ会なども開催されるらしい。初めて聞いたわ!!!

両親からも、「祐介らしい結婚式ですごくよかったよ」と言ってもらえた。

頭のやわらかい、あるがままを見つめてくれる両親で本当によかったなと思った。

結婚式の翌朝、母と一緒に縁側で話していた。

僕らが近所のラブホテルに駆け込んだ後、みんなでなにを話していたのかとか、これまでの人生のこととか、まるで一生をたったの1時間に込めたような時間だった。

「祐介が大人になってきたおかげで、ようやくいろいろと話ができるようになったなって思うよ。結婚式の後だと特にね。」

「それは違うよ。母ちゃんが子供に戻れるようになったんだよ。大人になったら、いろいろ後悔するようになるけれども、子供は後悔なんか考えずにどんどん前に進めちゃう。大人になるのも大事だけど、子供に戻れることもすごく大事だと思うよ。」

母は東京のオフ会に参加するらしい。それを報告してくれた母の顔もまた僕の大切なお友達と同じく明るく、活力に満ちたものだった。

結婚式polcaつくりました

https://polca.jp/projects/rLQRUuXV6Qk

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