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僕は野性を思い出した〜和光元住民インタビューVol.1でっち編〜

地に王国を築くモグラのたまり場GroundMole和光の北です。

福岡生まれの私が初めて東京に来たとき、とても人が多いなと思い、そのイメージで成増に来たのですが、思いのほか人が少なく落ち着いていました。

その成増の隣の和光市駅はさらに何もなく、10分歩かないとコンビニにたどり着くことができない場所はここが初。

今より人も物も少ない和光第1期でしたが、この「何もない」の魅力に目覚めた男・でっちが今回の語り手です。

マーケッター&プロデューサー

ー 初めてでっちの家きたな。結構きれいなところじゃない。

いいところでしょ?まあ、良い家賃したからね。

ー はい!差し入れ!(2Lボトルのコーラとパイの実をあげる)

おおお!!!やった!!!全然金なかったから、コーラなんて久しぶりすぎてやばい!!!

ー 喜びすぎでしょ笑 それで質問なんだけど…

(筆者のパソコンの画面の上を猫が歩く)

ー ネコ!!

ああ、そいつらよくパソコンの上に乗ってくるんっすよ。

ー よく一緒に生活できるよな…。お世話とか大変じゃない?

幸い、こいつらトイレとかのしつけの方はバッチリできてるから、部屋を汚すとかはあんまりないよ。ただ、トイレ替えであったり餌をあげなきゃいけないから、前よりも外に行くことは減った。

ー そういえば、ここ最近はずっと東京にいるよね。東京で何してるの?

芸術とVRが大好きだから、それ関係の人に会ったり、あとブランディングとかマーケティングを手伝ってやってる。

和光に住んでた思い出がない?

ー まさか、でっちが東京で一人暮らしをするとは思わなかった。あんなに嫌っていたし、そもそも大阪でシェアハウスもってるのに、どうして一人暮らしを始めたの?

一番は自分を追い込みたいってのがあるかな。毎月家賃を払わなきゃ追い出されるし、電気水道ガスも通信費も払わなきゃいけない。そして、ネコを二匹飼い始めたから、なおさらここで地に足つけて活動しなきゃならないような状況になった。猫はもともと飼いたかったからだけど。

ー ストイックだな…。自分を追い込むためだけに家を借りたの?

それはないよ笑 単純に、自分1人で好き勝手できる空間が欲しかったんだよね。ほら、ここの家って防音でしょ?突然叫んだり、ギターを弾いても何も言われないし、誰にも気にされない。
だから、人に迷惑かけることもないしね。帰国してすぐにここで住み始めたけど、だいぶ慣れてきたよね。

ー あれ?帰国してすぐはうちとかセーブポイント(注1)にずっといなかった?

そうだっけ?あ、そういえばいたかな。正直なことを言うと、俺和光に住んでたか怪しいくらいに和光の思い出ってあんまりないんだよね。日数的には間違いなく2~3ヶ月はいたと思うけど。

(注1)セーブポイント:2017年12月当時、大阪で「日常にちょっと疲れてしまった人がゆっくり休める場所」として自宅を解放していた界隈。現在、活動休止中。

ー …このインタビュー、破綻してない?まじで何もなかったの??

むしろ俺にとって「何もしていない時間」が衝撃だった。今まで、必ず何かしているって状態だったけど、和光にいた期間本当に何もしなかった。むしろ、はじめて「何もしない」ができたってくらいだったし、同時に何もしてない時間も大事だなと思えた。

ー 和光にいた期間は珍しく自分から動かずに受け身な状態で過ごしてたってこと?

逆! 一般に社会的生活ってのはものすごく受動的なものだから、「何もしない」生活、つまり干渉がない生活ってのは自らが全てを決めることになるから逆に極めて能動的。自分の意思で受動的になるということは、今目の前にあるものをありのままに受け入れて自分の感性の中に落とし込むものなんだよね。

ーその発想はなかった!茶道とかに通じるものがあるね。

「お茶を入れる瞬間から、お茶を飲む。あの行程って神聖な感じがある、一瞬全てを忘れる。」そんな感覚で、和光ってあの一瞬の非日常を日常的に味わえた場所なんだと思う。当時はあまりにも、「社会」に現実感なさすぎて、街を歩いているサラリーマンとか小学生とかが全部異様なものに見えてきちゃったもん。でも、その現実から一歩引いた感覚が今のマーケティングの仕事とかに活きてるし、アートの主軸にもなってると思う。俺って、社会一般的にはクソ野郎な位置にいたけれど、和光の生活で全てを丸裸にした人間とは何か、自分の野性を知れた

ー 何もしてないからこそ、印象に残らなかった。だからこそ、自分を見つめることに集中できたってことなのかな。

でも、和光に来るまでは「自分らしさ」にすげーこだわってたんだけど、今はそうでもないんだよね笑。 高3の年齢だし迷走してたのもあるけど、学校やめて、お金も自力でなんとかできてたから、自分は自由な位置にあるから自分らしさを探せるってマインドセットがあった。だけど、それは本当の自分らしさじゃなくて、社会に抑圧されたから生まれた偽りの自分だった気がする。そういうストレスがなかった和光に、偽りの自分らしさを全てぶっ壊された笑

ー 家主の性格が現れているのかもしれないな笑

たしかに、北さんっぽくなる笑。 そういう意味で和光って、「無意識」に徹底的に気づかせてくれた宇宙のような場所なのね。無意識って、そもそも見えないものだし、普段触れている感覚すら覚えないから、考えないとわからない。だけど、日常生活にあるそれらは生きていくために必要で、それを知ることはどこかで経験した方がいいんだと思う。今、宇宙で生き残るために必要な自分だけの防護服を持ってる。そこに至るまで、いろいろ試させてくれた場所が和光なんだろうな。

ー まるで修行僧の考え方だな....! 他に覚えてることある??

ない笑

ー 坂下(注2)とか一緒に見つけて興奮してたじゃん!

坂下か笑 坂下って今の俺にとっては生活の一部なんだよね。近所にイトーヨーカドーあるけど、なんでも高いなって思ってしまうし、常に坂下基準で買い物してるもん。そういう意味で、精神的には和光ってすごく近くて、安いものは常に和光にあるってイメージなんだよ。

(注2)坂下:和光にあるショッピングセンター。通称「坂下」。ショッピングセンターと言う割に規模がしょぼかったり、ベーコン500g150円、賞味期限切れのシチュールー30円など、目を疑うような商品が置いてあったりする。

ー 精神的に近すぎるから、思い出というよりは感性に刻まれている感じだから、思い出せないって感じかな。

単純に、忘れっぽいだけかもしれないからで、実際和光以外の記憶もあんまない。そういえば、あの河川敷とかも和光だったよなぁ。あそこで考え事してる日が多かった。坂下も、北さんの家も好き。だから、あの期間で好きなこといっぱい知れたし、和光って一番いいものが詰まっていると言えば詰まってたんだと思う。だから、和光の思い出があるというより、愛情がある感じかな。

ビジネスよりもコミュニティとして成功を目的に

ー もし、和光のような空間がまたできたとしたら、どういう人にオススメしたい?

正直、北さんがやらなかったら、和光いらないと思う。北さんがいるんだったら、こんな人だったらいいかもはあるけど。

ー マジか!ちなみに何で俺がやらなきゃなの??

普通の人がやると、「無」という価値が消失しちゃって、和光はシェアハウスになっちゃうから。シェアハウスって、社会の枠の中にある需要と供給から生まれるものだから、どうしても生きづらい人は生きづらい人のままになるしね。そもそもシェアハウスって、結局のところ金儲けのためのシステムだから。ビジネスという前提があるから、その空間の中でおもしろいコミュニティをつくるところが目的じゃないし。北さんみたいにシェアハウスが嫌いで、真面目な人で、優しくて、んでもっていい加減な人がやらないとアレは無理だよ笑。

ー たしかに、シェアハウス嫌いな俺が作った和光だけど、どうして和光ってそうなれたのかな。

和光の場合、もともと北さんが「こうしたい!」というビジョンをもって、ビジネスよりもコミュニティとして成功することを目的としていたから理想と現実が交わって、いい感じになったんだと思う。

ー まず稼げないからね笑 あのモデル。よほどの体力と思いがなければやってらんないもん!

そういう意味で、和光には金銭欲がなく、優しくて、真面目だけど、いい加減なリーダー的な存在が必要で、それがまさに北さんだったと思う。和光は北さんがいたから光ってた。北さんがいない状態で、和光を渡されても俺は絶対に和光を和光としてやらないと思う。北さんって影の安心を作る人で、俺たちはセーフティーネットを与えられていた気がするんだ。社会は「自分で稼げ」とか「甘えるな」とか言われて、そんなに優しくないけど、和光ってそうじゃなかった。絶対に死なないという確信を与えてくれて、それに何度も助けられた。

ー 急に褒められて嬉しい...。家があっても、お風呂があっても、ご飯があってもダメなのかな。

相手をしてくれない人であってもダメだし、逆に構い過ぎな人もダメ。非日常を味わえるのがいい。北がいないんだったら、和光は逆になくなった方がいいと思う。和光一番の魅力は北さんの魅力だったもん。これはセーブポイントでは味わえなかったことで、和光と北さんだったからこそあの空間になった。特に今はやりたいことをみつけたから、もし北さん以外の人がやってもたぶん行かないだろうな。



30点の人が100点の人に勝つ武器を持つ場所

ー結局、和光はどういう人の救いになったのかな。

やんわりとやりたいことは決まっているけど、煮詰まってたり、何をしたらいいのかわからない人にオススメかも。僕と翼(第2回に登場予定)はやりたいことや目的、ビジョンが煮詰まってなかったから、有効に活用できた。相性はあるんじゃないのかなと思うけど、なかなか前に進めない摩擦で燃えている人にオススメな気がする。

ー え...炎上は持ち込まないで欲しい....

そっちじゃない笑
夢に向かって頑張っているけれども、親だったり、社会だったりに止められてる人、だけど、夢には燃えていて、反発したいという人、ただの燃えじゃない人。理不尽に真っ向からぶつかって、でっかい摩擦が生じてる人かな。まあ、ある意味炎上か笑。信念を燃やして、本気で生きている人みたいなイメージかな。
それ以外にも、学生さんとか何か深く心に傷を負った人のための心の拠り所的な。長期的には、がんばっているけど、成果が出ない。社会に出たけど、どうしてもあわなかったという人がいいかも。ただ、長期的にって言うと、あまりにも無責任だからはっきりそうとは言えないけどね...。とりあえず、考えるより動けで成功できちゃう人は違う気がする。

ー  天才よりかは、普通の人に優しい場所って感じなのかな。

ちょっとダメなやつかな。どんなに頑張ってもテストで30点で、そこに対してコンプレックスとかを感じているような人にはぴったりな気がする。そういう人が「100点の奴」を倒せる才能を見つけられる場所で、劣等生の味方なんだと思う。30点で諦めてない、30点で100点のやつをぶっ倒したい野望を密かに抱えている人がいいかもしれない。きっと、何か持ち帰って変わってくれる。
不器用で...ダメ人間で....実際、自分がそうだったから。

ー ちなみに、そんなでっちの今の野望は??

世の中に存在している理不尽なタブーみたいなのを全部ぶっ壊したいよね。俺の役割って一言でいうとサポーター。例えば船の舵をとったり指揮をするのがリーダーなら、俺は天気を予測したり、敵が来ないか周囲を見回す補佐みたいな。マーケティング、ブランディング、プロデュース、マネタイズ、コピーライティング、プランニング、プレゼン…には自信があるかな。夢追い人の味方でいたいし、そういう人が生きやすい世の中にしたい。






編集後記

堂々たるボリュームの第一回。
それくらいに彼の語る言葉は熱く、一字足りとも逃したくないと思ったために、この文章量になった。
世の中にある30点の天才たちが活躍する未来を彼とともに創る日も遠くない。


第二弾:翼

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