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1. 旅路

4年間過ごしたまちを離れて、
その後、立ち寄った家族が住むまちを離れて、
ぼくは新天地に向かっている。

卒業証書をもらっても、
空っぽの部屋を見渡しても、
別れのあいさつをしても、
まったく実感が湧かなかったのに。

空港へ向かうバスが出発するのと同時に、
ぼくの目は大きくて温かいなにかに覆われた。

カメラに互換性の悪いレンズを
つけたときのように見えるものすべてが
歪び始めて、最後は膝の上に落ちた。


離陸の途中、
窓からは大きな湖が見えた。
手を振ってみたが、返答はなかった。

最後に写真に収めようと思った瞬間、
窓のそとは灰色の雲に覆われて、
大きな湖は見えなくなった。
まるで「過去を振り返らず、前に進め」と
背中を押してくれているようだった。

シートベルト着用サインが消灯して、
座席の前にあるテーブルを出して、
両肘をテーブルにつきながら、
今、読んでくれている文章を綴っている。

これから先、どんな旅になるのだろうか。
未来のことは何もわからないけれど、
ぼくは変わらずに旅の記憶を残していく。

「Prologue」大通公園,札幌

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