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4. ザンギ

出張先にて。定時前に仕事が終わり、初めて行くまちをひとり歩いた。ここは北海道の東側にある霧の街。初めての訪問で気持ちが高揚していた。

ホテルに到着し、重たいキャリーケースを引きずり、部屋に入っては、スーツをハンガーにかけ、シャツをベットに放り投げ、シワのよったシャツとそれを隠すようにコートを羽織って、外へ飛び出した。

ホテルのエントランスに降りると、まだキャリーケースを持った同期がたくさんいた。きっと変なやつだと思われているのだろう。どう思われてようが気にしない。そんなことよりも陽が沈む前に外へ出たかった。

と言いながらも、リサーチ不足でこの街のことを何も知らず、駅まで足早に向かい、観光案内所に立ち寄った。スマホで調べればいいのだろうけど、インスタは情報で溢れすぎていて優柔不断なぼくは有効に利用できない。ネットで調べればいいのだろうけど、おすすめランキングみたいなもので調べるとなぜかチェーン店が上位にランクインすることが多くて信頼できない。

それならば、観光案内所でパンフレットをもらって地元の人に話を聞く方がよっぽど信頼できる。観光案内所でおすすめの場所とそこへ行くバスの時間を教えてもらい、海の方へ。その後はザンギ発祥のお店へ向かった。

ザンギ発祥の地である居酒屋にて。
「ザンギと生とそれから、、、ライスはありますか。」
「ごめんね、昔はやってたんだけど、今はやってないのよ!そこ曲がったところにセコマあるからさ、おにぎりでも買ってきて!ちょうど帰ってくる頃にザンギも揚がるからさ!」

言われた通り、セコマでチャーシューマヨおにぎりを買って戻ると、カウンターには揚げたてのザンギが出されていた。席に座るとビールが出てきて、完全なる親父スタイルが完成した。

ザンギといえば、高校のときに学食でよく食べたザンギ定食、通称“ザン定”だ。あの頃は太るために大盛りのごはんと合わせて食べていたが、今は違う。これが歳をとるということなのか。買ってきたおにぎりは食べないまま店を出た。


「音のない街」@釧路



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