見出し画像

欧州最貧国モルドバ・未承認国家沿ドニエストル共和国

モルドバという国をご存知だろうか?
場所は東欧の果て、ルーマニアとウクライナの2国に挟まれた小さな国だ。
ヨーロッパの最貧国としても知られており、GDPはヨーロッパ内で最も低い。

モルドバは欧州で最もウクライナの戦地に近い国と言ってもいいかもしれない

かつてはソビエト連邦の一部であり、ルーマニアとソ連の文化が混ざった独特の魅力を放つ国だ(ルーマニアは旧ソ連ではない)。特に建造物はソ連時代の物をそのまま使っているのだろうか、日本でいう団地のような巨大な集合住宅が並んでいるのが印象的である。

モルドバの公用語はルーマニア語、ロシア語だ。そのため、街中の看板などはルーマニア語とロシア語の2ヶ国語で書かれている。英語は殆ど通じないため、コミュニケーションはジェスチャーでゴリ押すしか無い。

モルドバ国旗はルーマニアとよく似ている

1日目〜首都キシナウ〜

4月に計画している西アフリカ旅行のひとつ、ガーナのビザを取りにベルリンに来ていたため、そこからモルドバの首都キシナウに飛んだ。料金は10000円、LCC最高!!

空港は一国の玄関にしてはかなりこぢんまりとした印象だ。キシナウ市街地までは車で30分ほどかかるため、バスかタクシーに乗る必要がある。
なかなかバスが来ない為タクシーで行ってしまおうと、運転手に料金を聞いたところ「400モルドバレイ(3200円)だ」と、値下げする気もないらしい。足元見やがって、と思っていたらちょうどそこにバスが到着したので走って乗り込んだ。

タクシーがウザイのは世界共通

バスの運賃は6レイ(48円)、さすがの物価の安さである。料金は運転手ではなく、車内をうろうろしているお姉さんに渡す方式だった。
バスの車内から見えるのは、THE旧共産圏といった感じの、巨大な集合住宅が点々と建っている街並み。いままでこういう雰囲気は味わったことがなかったので、ものすごくワクワクした。

バスの車内から

街で最も活気のあるエリアでバスを降りる。市場では毛糸でできた紅白の手芸品がたくさん売られており、好みだったので色々購入。どこかの国(アラブとかインドとか)と違って、ディスカウントしないで買い物できるのは素晴らしいことだ。

それにしても、アジア人である僕をジロジロ見てきたりニヤニヤと馬鹿にしてくる奴が全くいない。モルドバでの2日間、アジア人(というか他人種)を一度たりとも見なかったので、観光客や移民が多い国ではないと思うのだが。みんなにこやかに接してくれて、こちらとしてもすごく気持ちがいい。

人柄良し!

お土産屋でさらに工芸品を買った後、夜ご飯へ。左のはホロホロの牛肉、手前のはチーズ、奥の黄色いのはママリガといってとうもろこしの粉でできたウクライナやモルドバの郷土料理らしい。言い方は悪いがビショビショの蒸しパンのような食感だった。

色々買った
普通に美味しいよ

明日に備えて早めに就寝。

2日目〜沿ドニエストル共和国〜

この日は沿ドニエストル共和国に行く。モルドバでのメインの目的である。
共和国といっても、世界中のどの国もその独立を認めていない未承認国家だ。厳密にいうと、ジョージアにあるアブハジア、アルツァフ、南オセチアの3国が承認しているそうだが、こいつらも未承認国家である。

オレンジの部分が沿ドニエストル共和国


独立のきっかけは、ルーマニア民族主義によるモルドバの独立に対し、そこに住んでいたロシア系住民がドニエストル川東岸とウクライナとの国境に挟まれた地域に共産主義国家の樹立を宣言。そしてモルドバとのドニエストル戦争が起きたものの2ヶ月で休戦した。
現在は、沿ドニエストル地域で自治政府が実効支配しており、独自の議会や憲法、通貨を持っている。
治安維持についてはロシア軍が駐留しその役目を担っている。国内では至る所に沿ドニエストル共和国の国旗と並んでロシアの国旗が掲げられいる。

そしてこの国を特に異質たらしめているのは、この国旗である。ほぼソ連じゃん。
現在、世界で唯一国旗に「鎌と鎚」のマークを採用しているのだそう。昔から国旗が好きな僕からすればこれほど魅力的な国はない。(別に特殊な思想とかは持ってないです)

沿ドニエストル共和国の国旗
国章


朝6時に起床し、7時にメインバスステーションであるGara Centralaに到着。バスの時刻表や運行情報はネットでは確認できないので、現地に行ってみるしかないのだ。

バス停周辺の様子

7:40に沿ドニエストルの首都チラスポリ行きのバスが出るらしいのでチケットを購入。運賃は52レイ(416円)。15人乗りほどの車内は満員となり、5分遅れで出発。ここから2時間の移動だ。

ルーマニア語とロシア語の両方で
「キシナウ-チラスポリ」と書かれている

出発して1時間、ついにボーダーラインに行き着いた。
国境付近にはモルドバの出国ゲートと沿ドニエストルの入国ゲートが存在する。だが、モルドバ側は「ひとつのモルドバ」という立場を取る為、出国に関しては何も無い。(一応兵士は立っている)一方で、沿ドニエストルの入国ゲートではしっかりと入国手続きが踏まれる。

ボーダー、結構緊張した

この入国ゲート前でバスの乗客は全員降車し、ロシア兵から入国カードを貰わなければならない。とは言っても、当日中にモルドバに帰りさえすれば問題なく入国許可が降りる。
「目的は?」「今日中に出国するか?」「持ってるカメラを全部見せろ」と言ったことを聞かれ、無事入国カードをもらった。
後は、何事もトラブルに遭うことなくモルドバに帰ることができれば任務完了である。この国には日本政府はもちろんモルドバ政府も干渉することが出来ないため、トラブルが起きた際に介入するのが難しいらしい。

国境を越えたらそこはソ連の意志を継ぐ共産主義国である。
バスターミナルに到着し、さあ散策だ!というところで問題が生じた。
まずスマホの電波が全く通じないのだ。モルドバのe-simを用意していたが、この国では通用しないのだろう。
そこで、バスステーションのWiFiを使って、MAPS.MEにモルドバの地図をダウンロードした。GPSはオフラインでも使えるそうで、地図をダウンロードしてしまえば電波がなくとも自分の場所が分かるのがMAPS.MEの便利な所だ。

バスターミナル

もうひとつ、現金が手に入れられない。この国には、ドニエストル・ルーブルという独自の通貨があり、それをATMか両替店で手に入れなければならない。バスステーションにはATMがあったが、どうやらVISA、mastercardは使えないらしい。
途方に暮れている僕を見かねて、地元の女子2人組が話しかけてくれた。彼女らはロシア語しか話さないので、google翻訳を使って「Can I help you?」と来てくれたのだ。頑張ってコミュニケーションをとった結果、どうやら街の中心部の市場まで行けば両替店があるらしい。本当にありがたい限りである。

Google翻訳で会話
優しい!まじでありがとう!

ということでその市場まで30分ほど歩いて行った。道中の街並みは何も無い田舎なのだが、しかし共産圏特有の雰囲気がとても新鮮で、小さい頃初めて海外に来た時くらいの感動と楽しさを覚えていた。

異世界

市場に到着、両替店も無事発見し、20ユーロを340ルーブルに両替。
市場は活気で溢れており、歩くだけで楽しい。

肉市場
写真はいい?と聞いたがダメだった
まあGoProで全て収めているのだが

市場の近くには広場がある。北朝鮮の例の広場みたいな雰囲気。中央にはロシア帝国の英雄であるスヴォーロフの勇ましい銅像があり、周りには沿ドニエストル国旗、ロシア国旗、そして共和国を構成する自治区の旗が立っている。

議会とレーニン像
ソ連時代に作られたのか?というくらい
ボロボロのトラム

4時間ほど滞在し、帰りのバスに乗るべくバスターミナルに戻った所、さっき助けてくれた女の子に偶然遭遇。
写真を撮ってインスタグラムを交換した。沿ドニエストル人とインスタを交換した日本人、なかなか珍しいんじゃない?

ルーマニアへ


モルドバのキシナウに無事戻り、ルーマニアへの寝台列車に乗った。首都のブカレストまで14時間の旅である。

共産圏の香りがした

21時ごろ、ルーマニアとの国境に差し掛かり、国境検査官がゾロゾロと乗り込んでくる。銃やドラッグは持ってないか?と聞かれ、パスポートを預けた。

次に警察犬がやってきて僕の部屋を物色。すると、警察犬が僕のリュックを咥えて首をブンブン振り始めた。「何か入ってるのか!?」とリュックの中身を確認されたが、やましい物は何も入っていない。あの警察犬はもっと訓練を受けるべきだ。

簡潔に終わると思っていたボーダーコントロールは出国だけで1時間。
ルーマニアの入国にはさらに1時間かかった。時間かかりすぎだろ!

なんやかんやでブカレストに到着。
ブカレストは特に何もない街だったので、何も書きません。

この列車に乗ってきた

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?