おらんうーたんになりたい。

「アジール」/「記憶のメディア」としての動物園・水族館に関心があります。短歌もやってい…

おらんうーたんになりたい。

「アジール」/「記憶のメディア」としての動物園・水族館に関心があります。短歌もやっています。

マガジン

  • 【訪問記録】動物園・水族館等施設展示を掘り下げる。

    動物園・水族館・博物館の訪問記録は数あれど、「展示施設の微細な心遣い」に焦点を当てたルポは案外少ないのではないでしょうか。本マガジンでは、これまで訪問した園館等施設の「ここ好き」ポイントや、開かれた解釈可能性を取り上げていきます。 なお、このマガジンに収録されている記事の記述内容及び写真は訪問当時のものであり、感想に当たる部分はいち訪問者である私の個人的見解であることをあらかじめお断りします。 また事実誤認等があれば、大変お手数ですがご教示頂けたら幸いです。

  • 雑記/「おらんうーたんになりたい。」以前のわたしについて。

    動物園・水族館に強く関心を向けて活動を行うようになる以前に取り組んできた活動や、関心があった物事などについてまとめました。またその他雑多な話題も詰め込んでいます。いわば「動物園・水族館以外」の雑記集です。しかし、ここで触れている事柄は、私の動物園・水族館観にも間違いなく大きく影響を及ぼしているはずです。

  • さるのうた

    詩歌です。霊長類はじめ動物を主題にした作品が多いです。

  • 総曲輪通りでつかまえて

    絲山秋子さんの小説『まっとうな人生』に触発され、北陸地方で過ごした日々のことを回想しています。

  • 霊長類フリーマガジン"【EN】ZINE"

    2020年に制作した霊長類フリーマガジン"【EN】ZINE-エンジン-"及び2021年に制作した霊長類フリーマガジン"【EN】ZINE Re:Boost!!"についての告知記事です。

最近の記事

ここに確かに居ること、ここへ必ず還ってくることーー黑田菜月《動物園の避難訓練》試論

 動物園という場所を動物園たらしめるものは何だろうか。動物園に足しげく通うようになってから幾度となく問いを繰り返してきた。ある時は幼い頃の日記帳を辿り、またある時は廃墟となった動物園跡地を歩き、私は私たち自身の語りによる価値の再創造(Re-Creation)が動物園を動物園として成立させていることに気付きつつあった。  動物園という装置は巡回展やサーカスのように拠点を変えず、場所に根付いて展示を行う。そこに生きているものたちが居ること、生かされているだけではなく活き活きとし

    • 【私家訳】マルティン・ハイデガー「メスキルヒ700年」

      年末に地元に帰省し、「都市と地方の文化的格差」をめぐる私のこれまでの関心軸の原点となった懐かしいテキストを再読した。マルティン・ハイデガーの講演録“700 Jahre Meßkirch”。大学2年次の必修ドイツ語で講読したそのテキストは、ローカルな地域社会に「近代」の力が差し迫ることの及ぼす影響を問うものだった。 いま改めて当時の講義ノートを見返し、わたし自身にも影響が大きかったこの講演録の「私家訳」をまとめたい。この講演録が「メスキルヒ市市制700年」に寄せる講演であった

      • 【短歌連作】微塵の子

        一秒も惜しむあなたが明晰に湯を沸かす音で目覚める六時 いくつかの家財を捨てる アリバイはある 僕なりのその日暮らしの 寝室に物を置かない 寝室で布団畳めば広がる余白 目の前に落ちている塵片付けるあなたの指がただしく動く 真四角に服を畳めず生きてきたことに一緒になって気づいた アイニージュー買えない愛のまぼろしを見わたすために百均へ行く 丁寧な暮らし(パンくず、髪の毛の束、指先の荒れ)と格闘 キッチンのエプロン姿たのもしく実験室で鍛えてきたと 燃えるゴミの日は三

        • 【顛末書】蜻蛉玉鰐の涙も塩からく

          ご無沙汰しています。お元気でしょうか。 8月の初旬から9月の終わりまで、抑鬱状態にありました。地元を出て以降の約10年間で、もっともこころの状態が荒んでしまっていました。 原因ははっきりしています。これまでの過労がたたり心身ともに疲弊していたこと、本務の環境が変わり適応できないままでいたこと、自身の引越しや実家の法事のため生活が落ち着かなかったこと。暑すぎる長い夏。 休む時間がなかったわけではないし、マッサージ、鍼、カウンセリング、こころの病院(30年生きてきて初めて足を

        ここに確かに居ること、ここへ必ず還ってくることーー黑田菜月《動物園の避難訓練》試論

        マガジン

        • 【訪問記録】動物園・水族館等施設展示を掘り下げる。
          58本
        • 雑記/「おらんうーたんになりたい。」以前のわたしについて。
          57本
        • さるのうた
          63本
        • 総曲輪通りでつかまえて
          6本
        • 霊長類フリーマガジン"【EN】ZINE"
          16本
        • 本棚の森 〜書評集〜
          27本

        記事

          【小説】カーニバル

           「はいできましたよ、どうぞ」  熊井はどろんと濁った瞳を配膳された丼のなかに向けた。大盛りの米の上に味噌とくるみで和えられた黒々とした肉がこんもりと盛られている。脇にはごまをふったほうれん草が添えられていた。店内には店主と熊井のふたりしかいなかった。                  *  家電用機器の部品を取り扱う小さなメーカーに入社してから7年。熊井は主に総務や経理の業務を担当していた。取引先の無理な要求に急き立てられた営業との軋轢など不平不満もない訳ではなかったが

          【園館訪問ルポ】詩のある動物園(Ⅲ)―― 盛岡市動物公園ZOOMO「PICNIC FIELD」(岩手県盛岡市)

           東北新幹線に揺られ2時間強。盛岡は快晴でした。「ニューヨーク・タイムズ」によって「2023年に訪れるべき場所52カ所」に選ばれたばかりで、この街はなんだか新しい物語の曲がり角に来たような予兆に満ちていました。  国民的な童話作家、宮沢賢治とも縁深い盛岡。 この地に2023年、リニューアルオープンしたのが「盛岡市動物公園ZOOMO」です。  「動物福祉」を理念の中核に据えているZOOMO。飼育している動物の頭数を見直し、以前よりも飼育種のケアに重点を置くことを

          【園館訪問ルポ】詩のある動物園(Ⅲ)―― 盛岡市動物公園ZOOMO「PICNIC FIELD」(岩手県盛岡市)

          <旅行記>新・総曲輪通りでつかまえて――3年半ぶりの富山(後編)

           富山旅行2日目の朝は早かった。日差しが気持ちいい。雨が多い富山で連続して青空の下過ごせるのはありがたいことだと僕は知っていた。恋人は「私、本当に晴れ女なんだよね」と胸を張っている。  富山駅からあいの風とやま鉄道に乗り、魚津へ。蜃気楼をモチーフにした魚津市のゆるキャラ「ミラたん」の像があちこちに建っている。  少し歩き、「海の駅 蜃気楼」へ。なぜかフォントが古印体で、おどろおどろしい割にカラフルなので「ちぐはぐだね」とふたりで笑った。  「海の駅 蜃気楼」で自転車を借

          <旅行記>新・総曲輪通りでつかまえて――3年半ぶりの富山(後編)

          <旅行記>新・総曲輪通りでつかまえて――3年半ぶりの富山(前編)

           北陸新幹線で中央構造線を抜けるとき、耳鳴りが懐かしい感覚として襲ってきた。「本当に日本の中央を越えているんだね、わたしたち」と恋人が隣で言った。恋人にとっては初の日本海側の都市の訪問だった。僕が暮らした街を彼女はどんな風に新鮮に受け止めてくれるだろう。ただ、すべてが記憶通りという訳ではないだろうな、という直感もあった。コロナ禍があったとはいえ、富山を離れてから今回の訪問まで、3年半も経ってしまっていたのだ。  「あなたの話を聞いていたら富山に行きたくなってきたかも。ゴール

          <旅行記>新・総曲輪通りでつかまえて――3年半ぶりの富山(前編)

          【園館訪問ルポ】動物園・水族館・アスレチックの交わる汽水域ーーアクアマリンふくしま「えっぐの森 どうぶつごっこ」(福島県いわき市)

           2022年夏の訪問で鮮烈な印象を残し、再訪を心に決めていたアクアマリンふくしまにふたたび足を運んだのは年末になってからでした。真冬の小名浜港は透き通る光がたっぷり降り注いでいました。  初訪問時は日本の水族館の伝統的な展示形態である「汽車窓水槽」をアップデートした展示群が深く印象に残っていましたが、ゆっくり時間を取って施設内をくまなく歩いた2度目の訪問では、水族館の枠組みを超えて動物園、さらにフィールドアスレチックとも接続される「体験の場」に目を奪われました。日本中の水

          【園館訪問ルポ】動物園・水族館・アスレチックの交わる汽水域ーーアクアマリンふくしま「えっぐの森 どうぶつごっこ」(福島県いわき市)

          【短歌】羽根はなくても

          晴れたなら光が入るはずだろう津田沼パルコ曇天の下 大寒にケトル震わせ海竜の今際の声を放ちつつ朝 三万円 罰金刑に処せられるのも怖いから 束ねたら薔薇 ぬるま湯で溶いたじごくにまみれそう やわこく地獄、めんこく地獄 板橋と呼んでほとんど差し支えないほど北の、そうなの、来たの さざんがく、さざんがくって唱えたら散々な夜にひらくさざんか 豆の数だけ歳を取り 鳩、ぼくら、よわよわしくていい、と書くメモ 「飛翔」去る桜通りのロータリー 羽根はなくても歩み続けた

          【短歌】羽根はなくても

          【短歌・自選百首】幻猿図鑑

          むかしむかしあるところにはあるという愛を探した柴刈りでした 世界一美しい猿も水辺にてわれは猿だと思うだろうか 海獣の骨格だけが知っているかつて入江であった日のこと パーで勝つ。パイン、パインと歩みよる。ち、よ、こ、れ、い、と、を、ぼくにください 翼よ、とリンドバーグになり切って指差す名無き街や街の灯 カテーテルつながれた駅 地下鉄も持病抱えて走り続ける 【取り急ぎ】【至急】【緊急】わくらばが深く沈んだフォルダの湖底 もう春の息吹が薫るトンネルを夢見心地でくぐって

          【短歌・自選百首】幻猿図鑑

          動物園とシビック・プライド(case3)――小諸市動物園(長野県小諸市)

           この連作記事では、神戸市王子公園/王子動物園の再開発をめぐって巻き起こった議論をきっかけに「シビック・プライドの拠り所」としての動物園に着眼してきました。  飯田市と桐生市の事例を取り上げながら、動物園を中小規模の地方公共団体が置き続けていることについて切り口を変えつつ考えてきました。  飯田市立動物園では、変わりつつある街の風景の中心にあって、眼を惹く大型の海外産動物を飼育しない代わり、持続可能な形で地域社会に役割を果たそうと取り組んでいる様子が伺えました。  他方、

          動物園とシビック・プライド(case3)――小諸市動物園(長野県小諸市)

          【短歌】テレポーテーション

          こんにちは港 今度はテレポートしようよ鈍のトランク抱え 選ぶこと。欲求があることにだけ救われる日のカタログギフト にんげんの形をたもつ(たもつだけ)みんな遠くて声はたのしげ TKYKN 通知が来ても悟られぬように小声で呼ぶ、たくやくん、ねぇ となり合うために電車でなくバスで行く 約十五分後ので行く すーすーな飴を買いたい空港で 数年後には忘れる朝の 虫のような愛し方だったから虫のように部屋から放ってあげた わるいひとではないな(わるくない)(もっというならひとで

          【短歌】テレポーテーション

          霊長類フリーマガジン「【EN】ZINE Re:Boost!!」+追補録「Vol.1~2」を全文web公開します!

           皆さんお久しぶりです。いかがお過ごしでしょうか。  「霊長類」を特集し、2021年10月に発刊した合同誌霊長類フリーマガジン「【EN】 ZINE Re:Boost!!」について、制作から1年が経ったことから、全文公開に踏み切ります。  「【EN】 ZINE Re:Boost!!」は昨年度Web公開した1冊目の霊長類フリーマガジン「【EN】ZINE」の取組を継承し、「多様なバックグラウンドを持つ書き手が霊長類や動物園について綴り、描き、表現する」誌面を実現しました。  

          霊長類フリーマガジン「【EN】ZINE Re:Boost!!」+追補録「Vol.1~2」を全文web公開します!

          【動物園歌会ふたたび】徳山動物園吟行補遺/安佐動物公園吟行

          アカアシドゥクラングール世界一美しい猿も水辺にてわれは猿だと思うだろうか サバンナシマウマ舎の鳩 しましまの脚の随(まにま)に藁を食む鳩の気持ちでつましく暮らす 徳山を発ち、広島に宿る。バスセンターから1時間ほど揺られて安佐動物公園に着く。徳山は歌会の共同主催者である友人とふたりで巡ったけど、安佐ではひとりだった。安佐動物公園は、いまはもういない僕に短歌を教えてくれたひとが「いつか行きたい」と呟いたまま、最後まで訪れることはなかった園だった。園に入るとすぐに巨大なヒヒの山

          【動物園歌会ふたたび】徳山動物園吟行補遺/安佐動物公園吟行

          【短歌】ワン アワー