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『graduationは待ってくれない』

〇:はぁ〜今日もだるかったな…

授業を終え、帰路につくため校舎の外を歩きながら呟く

〇:俺ももうすぐ3年か〜...受験だりぃ〜…

高校2年の〇〇は近くに迫った受験への愚痴をこぼす

〇:まあいいや…とりあえず帰ろ…

??:おーい、〇〇〜!

〇:あ、美月さん

美:よっ

この人は3年の山下美月さん

美月さんとは小学校からいっしょで仲が良い

年は違えど幼馴染のような関係だ

美:また一人で帰ってるの?笑

〇:べつに一人が好きなので

美:一人が好きなのはいいけど友達は作らないとだめだよ?

〇:わかってますよ

美月さんは内気な俺とも積極的に仲良くしてくれる数少ない人物だ

美:ま、今日は私が一緒に帰ってあげるからいいんだけど…さ!

美月はそう言って〇〇の肩に勢いよく手をついた

〇:別に頼んでないですよ

美:も〜かわいくないなぁ

〇:かわいくないって…俺ただ1個下ってだけですよ?

美:いやそれはそうだけどさ、普通私みたいにかわいい子といっしょに帰れるってなったらもっと嬉しそうにするんじゃないのかな〜って!

〇:よくそんな恥ずかしいこと堂々と言えますね

美:えー?まあだって事実だし?

そう言いながら美月はわざとらしく唇に指を当て頭をかしげる

〇:見られたら恥ずかしいのでやめてくださいよ...

美:なんか〇〇さ、高校に入ったくらいから急に冷たくなったよね

美月は少し唇をムッとさせ、悲しそうな表情で言う

〇:冷たくなったというか大人になったっていうことじゃないんですか?

美:昔は美月ちゃん遊ぼ〜!とか言ってきてくれてたのにさ〜!

〇:逆に今そのテンションで来られたら嫌じゃないですか?

美:べつに?私はウェルカムだよ?

〇:あいにく僕はそんな感覚持ち合わせてないんですよ

美:ひどいなぁ...もうすぐ遠くに行っちゃうってのにさ〜

〇:遠く...?遠くに行くってなんですか?

美:あれ、言わなかったっけ?

〇:何も聞いてないですよ

美:そっか!私ね、東京の大学に行くんだ〜

〇:そうなんですね

美:あれ?反応薄くない?

〇:別に僕になにか影響があるわけでもないので

美:冷たいな〜。君には『美月さんが遠くに行っちゃうなんてやだよ〜寂しすぎて死んじゃうよ〜』とか言ってほしかったんだけどな〜

〇:美月さん僕のことウサギかなんかと勘違いしてます?

美:ほらニンジンをお食べ?

〇:だからウサギじゃないんですよ

美:ふふ、ま、そういうことだから〜

〇: ...

美:じゃ、私こっちだから!おつかれ〜!

美月は手を振りながらそう言って帰っていった

〇:おつかれさまです

〇〇も控えめに手を振ってそれに答えた

〇:美月さん東京行っちゃうのか...

一人になった〇〇は帰路をたどりながら呟く

〇:言えないよなぁ...今さら好きですなんて...

そう、俺は美月さんのことが好きだ

じゃあなんでそっけない態度だったのかって?

......。

好きだから逆にってやつだよ...

え?いつから好きだったのかって?

好きなのは出会ったときからずっとだ

最初のうちは好きって気持ちがあっても普通に話せた

ただ、学年が上がっていくごとに話せなくなっていって完全にタイミングを逃したってわけだ

〇:無理だよな〜あんな態度取っておいて急に好きですなんてな〜

そんなことを口にしながら帰る足を早めた




〇:ふ〜すっきりした

一日の疲れを風呂で落とし自由なひとときをリビングで過ごす

〇:なんかやってないかな〜

テレビの電源を入れ、番組表を見渡す

〇:この時間ニュースばっかじゃん...つまんね

年頃の男子高生にニュースへの興味など皆無である

『続いてのニュースです。国民的アイドルグループ乃木坂46の...』

〇:へ〜あの人卒業したんだ

つけっぱなしにしていたニュースが報じたのは国民的アイドルグループの人気メンバーの卒業コンサートが行われ、会場のファンにインタビューをしたという内容のものだった

 「これでいなくなっちゃうなんて...信じられません...」


「推しは推せる時に推せという言葉が身にしみました...」


「ちゃんと好きって伝えればよかったです...」

『やはり愛の気持ちというものはいつでも伝えられるものではありませんね〜。みなさんも気持ちは伝えられるうちに伝えましょう。続いてはスポーツです...』

〇:”気持ちは伝えられるうちに伝えましょう。”か...

ニュースキャスターの一言が〇〇の脳内で何度も何度も流れる

〇:よし...

そういうと〇〇はなにかを決心したようにスマホを開く

「〇〇?電話なんて珍しいじゃん」

〇:で、ですよね...

「もしかしてさみしくなっちゃった?」

笑いながら〇〇をおちょくるように言う

〇:そ、そういうわけじゃないんですけど...

「じゃあどうしたの?」

〇:ちょっと美月さんに直接伝えたいことがあって...

「え、直接〜?それって今日じゃなきゃだめなの?」

〇:で、できるだけ早く伝えたくて...

「ふ〜ん、わかった!じゃあ近くの公園ね」

〇:ありがとうございます

「待ってるからね」

そう言って美月は電話を切った




〇:ここ、座っとくか...

一人先に約束の場所についた〇〇は公園に設置されたベンチに腰を掛けた

美:おまたせ〜!

〇:あ、み、美月さん

美:まだ夜は冷えるね〜

〇:そ、そうですね

日中はだいぶ暖かくなったが夜はまだ少し肌寒さを感じる

美:隣、座るね

〇:あ、は、はい

〇〇が元々座っていたベンチにほんの少し距離を開けて座った

〇: ...。

美: ...。

しばらくの間夜風に揺られる葉の音が静寂に響く

〇:と、東京にはいつ行くんですか?

静寂を破り、〇〇が言った

美:卒業式が終わって次の週にはもう行くよ

〇:そ、そうなんですね。じゃ、じゃあもうすぐだ...

少し残念そうな声に言った

〇: ...。

美: ...。

会話をワンターン終え再び二人を静寂が包む

〇:あ、あの...!

美:ん〜?

〇:きょ、今日僕が伝えたかったことっていうのは...

美: ...。

〇:ぼ、僕は、み、美月さんのことが...

美: ...。

〇:す、す、す、好...

美:ふふ...

美月はこらえきれず思わずというように笑う

〇:え、え...?

美:いやごめんごめん...笑

〇:は、はぁ...

美:私、〇〇がなにを言いたいか多分わかったんだ

〇:え...?

美:しかも多分同じ気持ちだし...

〇:え、じゃ、じゃあ...!

美:でもダメ

〇:え...

美:でもって言い方は良くなかったかも...まだ...まだダメ

〇:ま、まだ...?

〇〇は美月の言葉の意味がわからなかった

美:今、それを言われちゃってももう少ししたら離れ離れになっちゃうじゃん?

〇:は、はい

美:そしたら私一人ぼっちになっちゃうじゃん、私が〇〇に言ったことだけど私のほうが寂しくて死んじゃいそうだもん...笑

美月は少し涙を浮かべながら言った

〇:み、美月さん...

美:だからさ、私が一人ぼっちにならなくてすむ状況になったら、その言葉聞かせてほしいな

〇:美月さん...待っててくれますか...?

美:うん!私はずーっと待ってるよ




〇:お、もう桜咲いてんじゃん

初々しさを感じる春にほんのり桜が香る


〇:今日から夢の東京生活か〜!

大学入学を気に上京してきたのだ

〇:家の物買ったり、街の探索したりやりたいことはいろいろあるけど、まずは...





美:〇〇久しぶり〜!

〇:美月さん、久しぶりです

美:もうこっちには慣れた?

〇:いやまだ今日来たばっかりなんで...笑

美:ふふっ


〇:美月さん

美:ん?

〇:もう美月さんを一人ぼっちにはさせません

美月はただ〇〇を見つめて頷く


〇:美月さん…



好きです。



end.

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