その日、母は旅立った。
びっくりするくらい穏やかな、寝てる時と同じ表情だった。
一瞬、心臓マッサージが浮かんだが、蘇生して苦しい思いをさせることを考えると手が動かなかった。

俺だ。
母が旅立った日から俺に必要だった手配を時系列を並べていこうと思う。
基本的に上から順番にこなしていけば、最低限の手配は済むように書いたつもりだ。

・時刻を見ろ。
これはドクターにも伝えるために正確な時刻を記憶しておくのが望ましい。
実際の死亡診断書に記載されるのはドクターが診断した時刻だが、その時刻を覚えておくに越したことはない。
直後は耳が聞こえているという。
最期のタイミングで語りかける事は多くないかもしれないし、万語を費やしても足りないかもしれない。
それでもいい、ずっと語りかけてあげてほしい。文字通り最後のお別れの時間だから。

・ドクターへの連絡をしろ。
訪問医と綿密に連絡をしているはずだ。
ドクターは最優先で来てくれる。
俺のケースでは、何もしないことが望ましいケースだったが、例えば誤嚥や何かのトラブルでの心停止が予想される場合は応急処置を施せ。
心臓マッサージは必ずまたがって、胸骨を折るくらいの勢いでするんだ。
死亡診断書がでたら、それのコピーを10部程度取るんだ。間違いなく数部は必要になるし、生命保険などで必要だったりと幾つか必要になる。

・訪問看護に連絡をしろ
出来たらドクターへの連絡と同時に行うのがいい。
訪問看護が来てくれる間、ずっと電話でアドバイスや指示がもらえるはずだ。
ドクターの指示があるならそっちを優先する。

・着替えさせろ
死亡診断がされたならば、即時に行った方がいいのは死装束への着替えだ。
死後硬直を甘く見るな。大人が数人がかりになる。
しかし、死後硬直前ならまだ着替えさせることもできる。
一般的な死装束にするのもいいが、今回は夏だったので母は浴衣で送り出すことにした。
祖母の縫ってくれた大事な浴衣で、焼いてしまうのか考えたが、祖母の縫ってくれた浴衣が良いと俺も思った。
着替えについては同性が着替えを手伝うのが良いと思う。
それが愛する家族へのリスペクトだと感じた。

・斎場の空き状況を確認しろ
昨今では予約状況をオンラインで見ることが出来るケースがある。
一般的かどうかはわからないが、斎場は友引は斎場が休みだから気を付けた方がいい。

・葬儀社の手配をしろ
これについては別項でどの程度の金額がかかったか、金額イメージを持ってもらうために記載したいと思う。
しかし、選択に関しては大手の葬儀社にネットで依頼するか、地元の葬儀社に依頼をするかになると思う。
正直、コストを抑えるというなら、どちらに頼んでも大差はない。
俺は地元の葬儀社を選んだが、これは良かったんじゃないかと思う。比較ができないのだが。
しかし、大手の葬儀社は結局地元の中小葬儀社に投げて頭ハネするだけだろうという事は想像に難くなかったので地元近郊に本社のある会社を選んだ。

・親族への連絡をしろ
親族の数が多い人は大変だろうが、昨今であればラインなどで便利に連絡が取れるだろう。
連絡方法はなんでもいい。深夜なら翌朝でもいい。

・坊主へ連絡しろ
菩提寺へ連絡して葬儀に関する日程について問い合わせをするんだ。
昨今は家族葬などで葬儀を行うことも多いと思うが、それでも坊主とは連絡をしろ。
俺の菩提寺は相当、かなり縛りがない菩提寺だが、かなり厳しいことを言う所も多いと聞く。
曰く、葬儀をしていないのに納骨は受けられない。　曰く、戒名を他所で出したのに納骨を受けるのは宗派としてできない　などだ。
全て仏門の前では一緒だろうが！と思うのも無理はないが、彼らも本職で寺院の維持費などもあるのを理解してあげてほしい。
特に昨今ではCovid19環境下における葬儀で県を跨いで僧侶に来ていただくケースは困ることもあると思う。
実際、俺のケースでは、緊急事態宣言環境で僧侶に県を跨ぐ移動は遠慮してもらうため、通夜も告別式も行わなった。
その事は事前に菩提寺に連絡を取り、戒厳令が解除された後に骨葬の形で葬儀を行うことで納得してもらった。

・休め
休めるかどうかわからない。緊張と悲しさで眠れないかもしれない。
それでも、どうであっても、お前は体を横にしなければならない。
目を閉じて横になるんだ。

これらの事をほぼ並列で行う必要があった。
多分、まだ足りないことがある。
それでも最低限、これだけはしておくことで混乱は来さないはずだ。
こんな日が来ないことがいいのだが、それでもいずれやってきてしまう。悲しいことにも人は全てをこなさねばならない。
ここまで来てしまうと悲しみに浸る余裕はなかった。
相当忙しく、こんなに電話がなることは初めてだった。

次回は葬儀社にどの程度の金額を支払ったか。
斎場でどのくらいの金額がかかったか　等の情報を提示したい