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手のぬくもり

昼前、
所用のために家を出た。

気温は3度。

寒がりだけど、
ふだんと同じくらいの服装をした。


家を出て思った。
「手が冷たい」


手袋を持ってくればと思いながら、
両手をポケットに入れて歩く。

家を出てすぐ、
カップルと思しき2人の男女が
前から歩きてきた。

手袋をした2人の手は繋がっていた。


流れ的に嫉妬をする場面だが、
そんなことはない。

前から歩いてきた女性のことが
好きなわけではないし、

前から歩いてきた男性に
恨みがあるわけでもない。

2人が幸せそうに歩いてるのも
それはそれでほっとするもので、

目の前にしあわせが広がっていることは、
少なくとも嫌いではない。


ただ、思うことがあった。
「手が冷たい」


2人の手は、おそらくあたたかいのだろう。

少しだけ、自分の手に意識がいく。
それ以外、何も変わらずすれ違う。


途中、自販機であたたかい飲み物を買った。
それを握って、手をあたためる。
バス停に着いても、手をあたためる。

ようやくバスが来た。

バスに乗ると、案の定暖房が暑い。
着込んでこなくて良かったと、
上着を脱ぐ。

かじかんだ手も、
少しずつ動くようになってきた。
もう手は冷たくない。

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