なにわ男子「ねぇ」―なにわ男子の存在証明

なにわ男子2ndアルバム「POPMALL」シリーズ
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ずっとこの曲の話がしたかった

「I know」「マジック」と勝手に続けてきたPOPMALLシリーズですが、そもそもはこの「ねぇ」の感想を書きたくて始めたところ、あります。
というか一回長々とTwitterじゃなくてXに書き連ねたんですが、いきなりすぎたのとなんかよくわからんけど多分誰にも刺さらなかったのとで、だいぶスルーされました。
でも、ここは俺のnoteだ、なんでもやらせてもらうの精神の元、今一度ここで「ねぇ」への熱い思いを綴っていきたい。
POPMALL収録曲について書くにあたり、絶対「ねぇ」の記事は最後でなければならない。絶対だ。と思っていたので、無事ここまでモチベーションを保てたという安堵感で既に締めに入りそうですが、頑張ってやっていきます。

本当は今すぐこの画面を閉じてTSUTAYAに行ってほしい

ジャニーズ、サブスクないからさ。
本当だったら曲のリンクとか貼りたいけどできないからさ。

とにかく、私のnoteで下手に前情報入れるより、今すぐTSUTAYA行くか友達にPOPMALL借りるかして、曲を聴いてほしい。
なんならPOPMALL買ってほしいけど。

なぜなら、この曲にはちょっとした仕掛けがあるからだ。
(まぁ公式で試聴したら分かる部分ではあるんだけども)
じゃ、今から曲聴いてきて?



聴いた?
じゃ歌詞のリンク貼るね?
聴く前に歌詞読んだら台無しだからね?

○○○で王道キラキラアイドルソングを歌う

一応まだ伏字にしてみた。

イントロ、本当に物理的に「キラキラキラ〜」という音から始まり、Tu Tu Lu Tu Tu Tu Lu Tu…と、今女子ドルでもこんなど正面からアイドルやんねぇぞぐらいのアイドルイントロが展開されていく。
そして歌い出し

  “しょ~もない話をしてる時間さえ
   胸がときめくよ わらけるくらいに”

藤原丈一郎・西畑大吾のデロ甘ボイスが軽快に歌うが、若干の違和感を覚える。
そして次でその違和感が確信に変わる。

  “アイスクリーム頬張ってる姿を見て
  「幸せや」なんて 不意に呟いてしもた”

しもた!!
この子たち(大西流星・長尾謙杜)しもたって言った!!!
そう、見出しの◯◯◯は「関西弁」のことだ。
なんだそんなことかよっていわないで。
ちゃんと前情報なしで曲頭から聴いて、王道キラキラアイドルイントロっていう盛大なフリの後、
「わらける」で、おん?ってなって
「しもた」で、おおおー?!ってなるの、めちゃくちゃ楽しかったからね?
多分作り手としても、最初っから関西弁バリバリにしなかったのはこの盛大な振りオチを狙ってやっていると思う。
さすが関西。

過剰な関西弁とのミスマッチ

なにわ男子は過去にも関西弁曲を歌っている。
「なにわの男子やねん」「妄想っちゅーDiscooooooo!!」がそうだ。
だがこれらは所謂トンチキソングというやつであり、王道キラキラアイドルソングを関西弁で歌うのとは訳が違う。

ジャニーズWESTの「乗り越しラブストーリー」は、関西弁できちんと正面から恋愛ソングを歌っているが、「ねぇ」はこれともまた少し性質が違う。
「乗り越し〜」はメンバーの重岡大毅が作詞したこともあって、年相応の男性の使う自然な関西弁のラブソングになっている。

対して、「ねぇ」はどうか。
歌詞ページをもう一度見てみれば分かると思うが、「しもた」「いらへん」「べっぴんさんやで」…
私は関西人じゃないけど、今時の関西の若い男の子が「べっぴんさんやで」なんて日常で使う訳ないということ位は分かる。
作詞者を調べてみたら、関西出身の方だった。
つまり意図的に、過剰に、関西外の人間がイメージするアイコンとしての関西弁に寄せているのだ。
なにわ男子が関西弁ネイティブであるのは誰しも知るところだから、王道アイドルソングなのに…というフックを成立させるためには、キラキラ感も関西弁もここまで振り切らないとバランスが取れないということなのだろう。

コッテリ大橋・キラキラ高橋の両輪

そしてこの曲でも歌割りの妙が存分に発揮されている。
1番Bメロ、関西弁ソングですよ〜のネタバレが済んだところで、なにわ男子随一の関西のおばちゃんボイスの持ち主大橋和也の登場だ。

  “余計なものはホンマにいらへん”

一気に充満するお好み焼きソースの香り。そこに突然フローラルの風が流れてくる。

  “素敵なMy sweet lady こっち向いて”

高橋恭平だ。恭平すげぇよ恭平。
「I know」でも言及したが、高橋恭平は与えられた役割に対して、予想の斜め上を行く歌唱で打ち返してくる。

大橋和也がコテコテ感を完璧に演出し、素晴らしい仕事をしたところで、高橋恭平が圧倒的王子様歌唱で引き戻す。
この2人の押し引きが曲のバランサーとなり、曲の雰囲気をあっちにやりこっちにやりと自在に傾けて、聴き手を楽しく揺さぶってくれる。

ユニゾンパートは除外し、ソロ部分にだけ着目すると、大橋和也には絶対に関西弁パート(強烈な関西弁セリフ絶叫含む)しか割り振られていない。
なんなら、Cメロの Ah〜 までもが軽くこぶし効いた関西ノリになっちゃっている。
彼の歌唱力ならもっと別の声色のAhも余裕で歌えるはずなので、これも意図的にやっているところだろう。

対照的に、高橋恭平には意地でも関西弁をソロで歌わせないという制作陣の熱い思いを感じる。藤原丈一郎もソロパートで関西弁を歌ってはいないが、高橋恭平の場合

  “素敵なMy sweet lady こっち向いて”
  “You are my everything 思い出を沢山集めよう”

と、関西弁どころか英語歌っちゃっている。
ずるい。ずるいけどカッコいい。それがまたずるい。

かくして、大半のなにわ男子メンバーの本領であるかわいい歌声を存分に発揮しつつ、コッテリとキラキラの両極端にジェットコースターのごとく振り回しながら聴くものを楽しませる「ねぇ」という名曲が爆誕した。

なにわ男子の存在証明としての「ねぇ」  

コッテリとキラキラの両極端と書いたが、これはまさに、なにわ男子の形容詞そのものだろう。
「ねぇ」は、これまで築き上げてきたなにわ男子ブランドという無形物を具現化した曲なのだ。
つまり、彼らの存在証明だ。

これまでPOPMALLはなにわ男子の音楽性を拡張する試みのアルバムであると書いてきた。
その通りに、挑戦的な「I know」があり、メタ構造の「マジック」があり、ツイスト調の「Super Drivers!!」があり…とバリエーション豊かな曲がある中で、このなにわ男子の存在証明「ねぇ」を終盤に入れてきた。
私は平和主義で楽観的で、自分に都合のいいオタクだ。だからこの曲は、
「なにわ男子がデビューして少しお兄さんになり、またこれから音楽性が変化しても、このキラキラコッテリアイドルである今を忘れない」
という意思表示に感じてしまう。

今回のPOPMALLのプロモーションの中で、リーダー・大橋和也がアルバム中もっとも好きな曲としてこの「ねぇ」を挙げていた。
自身のダンススキルを存分に発揮した「LAI-LA-LA」でも、
大橋担大歓喜の口説き文句を歌った「I know」でもなく、
コッテリなにわ感演出担当という役割を担ったこの「ねぇ」を、だ。

今年4月、なにわ男子公式Instagramに上がった大橋和也のダンスレッスン風景のリール動画は、現時点で553万回と過去最高の再生回数を記録した。
もともと高く評価されてきた彼のダンススキルだが、これまでのアイドルソングと全くジャンルの違うHiphopど真ん中を踊ることで、それがファンの共通認識を上回るものであると知らしめられた。
それと共に、よくある話だが、「もったいない」という声がちらほらあった。
(彼自身が選んできた道に対してもったいないと第三者が言う感覚は、ちょっとよくわからないが。)

そんな目で見られることもある、甘すぎるエッジの効いた「なにわ男子」の、存在証明と言える曲を、グループをスキルで牽引している大橋和也が最も好きな曲と語った。
他のメンバーはわからない。だが少なくともなにわ男子のリーダーは、今のなにわ男子のキャラクター性・音楽性に誇りを持っている。自信を持って提供したいなにわ男子の楽曲だと思っている。

これが、第三者の「もったいない」へのアンサーではないだろうか。
これまでそして今のなにわ男子に魅力を感じ、応援しているファンと、他でもないなにわ男子自身への大いなる肯定ではないだろうか。

「ねぇ」と、これからと。

アイドルと未来の約束をしない、と言うのが私のモットーだ。
いつまでもかわいいキラキラアイドルでいて、というお願いがどれほど酷でハードルの高いものかはわかっているつもりだ。
けれども、これからなにわ男子が歩みを進めていく中で、「ねぇ」を歌えるのは自分達だけなのだと、自分達にしか持てない武器があるのだと言うことを、誇っていて欲しいと。そう願わずにはいられない。

今週末、初めてなにわ男子の現場に行く。
きっと、「ねぇ」も歌うだろう。
(ネタバレ全力回避しているので本当に何も知らない)
彼らが楽しく「ねぇ」を歌えば歌うほど、私は泣いてしまうと思う。
そして大橋くんの全力セリフ「可愛すぎや〜!!!!!」で笑って。
また、泣くと思う。
彼が「ねぇ」を愛してくれる今を思って、これから先もたまに泣くかもしれないと思う。

最後感傷に逃げてしまったが、POPMALLは今のなにわ男子ができる挑戦を全てした上で、どんな武器だってカラフルに染め上げてしまうような、なにわ男子の輪郭線の太さを思い知らされる名盤だ。
正直、4000〜5000字の記事3本書けるほどのものが来るとは思っていなかった。
これを読んでくれて、まだPOPMALLを聴いていない方には是非聴いてほしいと思います。
ー逆に、POPMALL聴いてなくてこの3本の記事読んだ人いるのかな。いないな。
みんな!POPMALLもっかい聴こ!!

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