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西新宿 思い出横丁


22歳でフリーターだった僕の楽しみは通勤時間に読む『cakes』の恋愛小説の切ないコラムを読むことだけだった ある日いつも通り更新されたコラムをよんでいたら 最後のページに「読者と文通をしたいのでどなたか気軽にDMを送ってください」と書かれていた すぐさま一通のDMを送った 岡崎京子が好きだった彼女とは馬が合った 代表作は『リバース・エッジ』と思われるが 僕達は思春期真っ盛りの男女が繰り広げる『東京ガールズブラボー』が好きだった



新宿の花園神社から徒歩13分 集合住宅に住んでいる彼女は音楽雑誌『音楽と人』を欠かさず購入していて ディオールの香水をつけていて バンドマンが好きで 僕より2歳上で知性的でミステリアスな女性だった そう感じた理由はたくさんあるんだけれど 彼女は僕が知らないことをたくさん知っていてその度僕は彼女の色に染まっていたんだ いまでは彼女が好きだった江國香織の『東京タワー』や『すみれの花の砂糖づけ』はボロボロになるほど読んだ



たいして好きでもなかった音楽 そこまで気に入ってなかった洋服 キンキンに冷えたいうほど美味しくなかったハイボール 新宿西口駅から徒歩二分の思い出横丁 君が好きだろうなってものを僕が好きになる努力ならできたんだ 「わたしたちぴったりだね」 そう言ってもらえるなら好きな色に変えてもらって結構だったんだ



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