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【書評】「日本の慣例的風邪診療をひっくり返した!」と記憶されるであろう,凄い本が出た。(『Phaseで見極める!小児と成人の風邪の診かた&治しかた』)

書評執筆者:小川滋彦(おがわしげひこ)
小川医院 院長/石川県保険医協会理事・PEG・在宅医療学会 理事/日本内科学会認定 総合内科専門医
1984年 岐阜大学医学部卒業。同年,金沢大学第2内科入局
1990年 石川県済生会金沢病院消化器内科医長
1991年 消化管ホルモンの分泌動態に関する論文で医学博士(金沢大学)の学位取得
1996年 小川医院 副院長
2001年 現職

「日本の慣例的風邪診療をひっくり返した!」と記憶されるであろう,凄い本が出た。

永田風邪_218-219

著者の永田氏は,保険医協会よろず勉強会の感染症シリーズ講演でお馴染みの先生である。
著者は,これまで誰でもが診てきた風邪患者に対し,なんとなくしてきたその診療スタイルや検査&採血結果の解釈,画像検査の適応基準,や抗菌薬の使い方はもとより,対症療法薬としての風邪薬などにも真摯に向かい合うことで,目の前の患者に最善を尽くすことを徹底する事から始め,最新の文献を読み漁り,エビデンスを抽出し,自身の臨床で実践検証し,積み上げてきた。
また,日々の診療だけでなく,他の医師・すべての医療従事者に熱く語りかけ,その知識と経験をアウトプットし,学びのシェアを15年にも渡り,1人で継続してきている。閉鎖的・封建的な石川県において感染症倶楽部を立ち上げ全国に発信している風邪を含む感染症教育のパイオニアであり,インフルエンサーである。
その確固たる信念は,新型コロナウイルスも一感染症として乗り越えられるのだという勇気を与えてくれる。実際,02月06日には『新型コロナウイルス感染症の見極め方』レクチャーを全国WEB配信開催され,全国から900名に及ぶ参加者となり大盛況となったときいている。

レクチャー風景

本書は,その経験と知識をもとにそれらを言語化した書籍となっており,感染症をまったく勉強していなかった医師であってもスーッと頭に入ってきて引き込まれてしまう。
読み進めていくと,その資料性と文献の豊富さに驚かされる。まるで,風邪のハリソンの教科書を手に取った充実感がある。

永田風邪122-123

そして,本書は「今」の集大成というだけではない。
巻末付録部分にある著者のホームぺージにアクセスをすると,そこには診療時に患者さんへの説明として使えるリーフレットや,本書をベースとした著者によるレクチャー動画が見られる。
そして,それらはこれからも改訂されたり,追加されたりするのだ。
さらに、そこから著者に質問したりもできるなど,いたせりつくせりの現場感いっぱいのリアリティが溢れている。

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このような小児〜成人〜高齢者にわたり,発熱風邪診療の臨床推論に基づいた診断学と治療学,薬理学を実践し,西洋医学だけでなく,漢方診療,栄養学診療などにまでにわたった知識と経験を町医者/外来診療目線,外科医目線で書かれた書籍は,他に類をみない。
これをたった1人で書き上げたというのである。もはや,感嘆でしかない…。
重症感染症や稀な疾患などに対して,病院目線,感染症専門医目線からの書籍は,いまや多くの類書がある。しかし本書のような,発熱・風邪診療の最前線である外来での現場目線からの書籍は,日本初ではないだろうか。開業医,外来臨床医のバイブルとして,歴史に刻まれることであろう。
我流になりやすい発熱風邪診療。1人でも多くの開業医に手に取ってもらいたい書籍である。

Phaseで見極める!小児と成人の風邪の診かた&治しかた
著:永田理希(希惺会 ながたクリニック院長/感染症倶楽部シリーズ統括代表)
体裁:B5判/370頁/2色刷
発行日:2021年03月05日
ISBN:978-4-7849-6291-4

書籍カバー

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