「医学部を目指す君たちへ―医学に興味を持てますか?―」仲野徹 阪大医学部教授

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)
Web医事新報登録日: 2021-02-18
コーナー: 特集 特集-その他
日本医事新報特別付録 医学部進学ガイド「医学部への道2022」より

大阪大学医学部で病理学の総論―いろいろな病気の生じるメカニズムーを教えている。教科書は英語の原著、世界的に定評のあるRobbins Basic Pathologyで、試験ではその指定教科書のみを持ち込み可にしている。英語とはいえ教科書は持ち込みできるのだし、それほど難しい問題を出している訳ではないが、非常に厳しい科目と恐れられている。それでも、どうしようもなく不出来な学生しか不合格にしていないので、留年は年に一人させるかどうかといったところだ。

赫々たる受験戦争の勇士がこのていたらくか、と思わざるをえない学生がけっこういる。3年生に教えているのだが、医学部に入ってからほとんど知識が蓄積していない学生が毎年20~30人ほどはいるだろうか。もちろん勉強する学生はしっかり学んでいるので、たぶん、3年生が始まった時点で、トップとボトムでの医学知識の差は10倍どころか100倍ほどあるとにらんでいる。

医学部の専門科目では、まず解剖学、生理学、生化学、遺伝学など、生命科学の基礎から学び始める。病理学は、それらの知識が身についているという前提で教えていく。だから、最初の2年間を不勉強で過ごしていれば、とてもついてくることはできない。

学生から鬼だのなんだのと言われるが、こちらから言わせれば、入学後に勉強してこなかった学生が悪いのだ。高校で生物学を学べば誰でも知っているようなことを、阪大医学部の3年生にもなって知らないのが例年2割近くもいるというのは問題外だ。教える方の責任と言われればそれまでだが、情けなさすぎる。

阪大医学部の学生でさえそうなのかと思われるかもしれないが、阪大医学部の学生だからこそそうなのではないかという気がしている。なまじ頭が良い、いや、そうとは言うまい、なまじ大学入試で問われる二つの能力─パターン認識と記憶力─に優れているからではないか。だから、一夜漬けでなんとかなってしまうために、知識がまったく定着していかない。嘆かわしいことだ。

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仲野 徹(なかの とおる)
1957年大阪府生まれ。阪大医学部卒業後、京大医学部講師などを経て、阪大大学院・生命機能研究科および医学系研究科教授。主な著書に「こわいもの知らずの病理学講義」「みんなに話したくなる感染症のはなし:14歳からのウイルス・細菌・免疫入門(14歳の世渡り術)」。日本医事新報にて「なかのとおるのええ加減でいきまっせ!」を連載中。

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