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『白の闇』ジョゼ・サラマーゴ

#ポルトガル文学 #ジョゼ・サラマーゴ

視界が真っ白になるという謎の失明感染症が発生し、パンデミック状態にある世界。その中での人々の様子を描いた作品。

白の闇F

本当に良かった!!フィクションであるのに怖いくらいリアリティがありました。常に緊張感のある物語が進行していきます。

なぜこんなリアリティがあるのだろう、と考えてみたとき、それは極限状態に置かれた人々がとる行動の野蛮さ、残忍さ、自己中心さ、弱さ、愚かさ、苦しさ、悲しみ、そうしたものが私たちが現実に持っているものと変わらないからだと思いました。文化的、理性的な面の下にある、原始的でお世辞にも綺麗とは言えない人間の一面がまざまざと描かれます。

現在(2020年)コロナ禍に置かれた私達はその状況と物語状況を否応なくとも比べてしまうでしょう。コロナ、このパンデミックに何らかの意味があるのだとしたら、与えられているのだとしたら、人間性というものについて考えてみろ、ということなのかもしれない。少なくとも、きっと白の闇はそういう理由で町を襲ったのかもしれない。

物語の終わり方もとっても気に入りました。こういうエンディングだからこそ、「白い悪魔」(=感染病) は目的を持ってこの世界を襲ったのだろうと感じました。

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