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人はどれだけ直感に従ってしまうのか。教育研究の大切さの話。(修士2週目)

修士課程2週目が終わりました。今週は体力的にも精神的にもキツく感じることが多かったです。過眠症を疑っています笑。

ケンブリッジ大学教育学部ではMPhil(1年間の修士課程)の学生を対象にResearch Methods Strandを必須科目としています。このクラスでは、自分の専門コース(私の場合は国際教育開発)とは別に、主に教育に関する研究及び研究方法について勉強します。

教育分野では研究者と実務者(先生など)の間にギャップがあることが問題視されているようです。ケンブリッジ大学教授であったDavid H. Hargreaves氏は、1996年にTeaching as a Research-based Profession: Possibilities and Prospectsを発表し、教育研究が実践に活かされていないことに警鐘を鳴らしました。教師を医者と比べ、医者が実験や研究に基づいて処置を決めるのに対し、学校現場では個人の経験に基づき教育が行われているという主旨の内容でした。ちなみに授業では、この文献を批判したHammersley氏のEducational Research and Teaching: A response to David Hargreaves’ TTA lectureならびに、Hammersley氏の批判たいして反駁するHargreaves氏の In Defence of Research for Evidence‐based Teaching: A rejoinder to Martyn Hammersleyも読みました。(研究者たちのやり合いが文献として使われるのおもしろい笑)

研究が何のためにあるかといえば、やはり実践に活かすためであると思います。授業の中で、人間がどれだけ直感に従い間違った選択肢を選んでしまうのかテストがありました。

以下の文を読み、Xさんはどのような人である可能性が高いか選択肢からひとつ選びなさい。

「Xさんは助産師になるという決意をし、学校を卒業した後助産師になる訓練を受けました。Xさんの両親は、この決断をあまりよく思っていませんでした。Xさんの友人には助産師さんを目指している人はおらず、Xさんがなぜこのような決断をしたのか不思議に思いました。Xさんの患者さんは、Xさんに出産のサポートをしてもらうことに初めはびっくりしますが、最後には満足なサポートを受けられて満足しています。」

1. 男性    2. 伝統的な家庭で育った男性    3. 女性    4.高学歴の女性





Thinking Time for You!





授業では学生が個人個人でリモコンを使い答えました。スクリーンに映し出された皆の回答をみてみると、意外とばらけていました。この答え、実は3の女性なのですがなぜかわかるとすごく騙された気持ちになります。笑

まず、男性女性というカテゴリーに伝統的な家庭で育った男性、高学歴の女性が含まれるため、(この2つは男性女性よりも細かいカテゴリー=ランダムでピックアップしたときにこのカテゴリーに当てはまる可能性が低い)セオリー通りに言えばXさんは50%--50%で男性もしくは女性である。しかし、現存する助産師のマジョリティが女性であるため、男性よりも女性である可能性が高い(助産師人口の中からランダムでピックアップしたときに、女性である可能性が高い)。よって女性である可能性が一番高いとなります。

答えが発表されてからの学生間のざわつきが面白かったです。直感を過信するのはよくないね笑。そのための研究であり、研究方法の学習だと思います。

おわり。


参考文献

Hammersley, M. (1997). Educational Research and Teaching: A response to David Hargreaves’ TTA lecture. British Educational Research Journal, 23(2), 141–161. https://doi.org/10.1080/0141192970230203

Hargreaves, D. H. (1996). Teaching as a Research-based Profession: Possibilities and Prospects. The Teacher Training Agency Anual Lecture 1996, 1–12
Hargreaves, D. H. (1997). In Defence of Research for Evidence‐based Teaching: A rejoinder to Martyn Hammersley. British Educational Research Journal, 23(4), 405–419. https://doi.org/10.1080/0141192970230402

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