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のびのびTRPG×忍殺TRPG「イーブン・イフ・デス・ドゥー・アス・パート」

これは何?

これは、のびのびTRPGというボードゲームを用いてシナリオの大筋を決めてニンジャスレイヤーTRPGのシステム…というか雰囲気を使って肉付けしたものです。


~前回までのあらすじ~
ストリートニンジャのアイアンアイドルは、モータルの友達3人といつも楽しく活劇を繰り広げていた。繰り広げているうちに、モータル3人は死んだ。
アイアンアイドルは次の友達を探そうと日常に戻った。死んだモータルの内2人、マユとマリーは別々のタイミングでニンジャとして復活した。
マユはひょんなことからアイアンアイドルへと繋がりそうな手がかりを得た。

前回のエピソード。まあ。読まなくても。ね!


登場人物之絵


アイアンアイドル


本名モギ・マユ。ニンジャネームはドールフレンドリー


本名マリー。ニンジャネームはシヒ(死避、死火など)


以下本編


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

アイアンアイドルのコピー商品を作っておびき寄せようとしていた謎のニンジャ。それが誰なのかを探るために、地元では有名なヤクザクラン、ヘルコンニチワブラッドの手を借りることにしたマユ。

「…なるほど。話はわかった。そいつの情報に心当たりがある。ただ情報ってのはタダじゃあねえ。お姉ちゃんもわかっているとは思うがな」

黒い革張りのソファに腰掛ける尊大なニンジャは、葉巻の紫煙をマユの顔に吹きかけた。

「わかってる。それで、何をすればいいの?」

「とあるミッションをやってもらう。中国地方の森の洞窟をリゾートに変えるってビズがあるんだが。そこに住み着いたニンジャのせいで頓挫しそうになっている」

尊大なニンジャは己のニップレスを剝がしながら続ける。

「そいつを排除したら情報をくれてやる。どうだ?良い話だとは思わないか?情報に一銭もかからないんだ」

「やる。それでしか教えてくれないんでしょ。やるよ」

「ハッハ!ニンジャの詳細も聞かずに受けるとは命知らずな姉ちゃんだ!よっぽど切羽詰まってんのか。まあいい。その度胸、気に入った。オイ!あれ持って来いや」

尊大なニンジャは子分ヤクザに巻物を持って来させ、テーブルに置いたそれを14本の指で嫋やかに転がし展開した。そこには草書体でいくつもの項目が書いてある。

「こいつはメニュー表だ。バズーカ、ワザモノの刀、サイバネ義手…なんでもござれ。好きなものを売ってやる。格安だ」

「へぇ、優しいんだ。じゃあ…わたしは…。ん、このニンジャって項目は何?」

「そいつに目を付けるとはお目が高い!それは最近追加したんだ…限定一品、使えないニンジャだがバズーカくらいには役立つはずだ。ドラッグが無いとジツが使えねぇから、湿気ったバズーカだな!ハハ!」

尊大なニンジャは義眼代わりに差していたロリポップキャンディを激しくしゃぶり、一瞬で食べ終えた。その棒を指の間で器用に回転させ、無言でマユに選択を迫る。

「じゃあ…そうだね。このニンジャってやつにしようかな。」

「決まりだ!ならそのニンジャは洞窟の近くに置いておく。現地集合ってわけだ。もちろんミッション失敗ならこの話はナシ。死んでも文句言いっこナシ。もっとも死んだら文句は言えな…いや、最後まで言うのはやめておこう。成功したらまた来い。」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


迷彩柄のバケットハットにポケットのたくさん付いた迷彩ベスト、カーキのハーフパンツにニーハイハイソックスという出で立ちのニンジャが森にいる。中国地方の指定されたポイントに到達したマユだ。

「え~電波悪…。本当にここで合ってるのかな。」

大まかに指定されたポイントの付近をウロついていると…バイオバンブーで作られた棺のようなものが無造作に置いてあった。

「え、もしかしてこれが…?ニンジャ?」

恐る恐る近づくと、中の存在が気配を感じたのかガタガタと棺が揺れる。棺のロックを外すと、中にいたのは銀髪ロングヘアーでTシャツ姿のやつれたニンジャだった。

「ド、ドーモ。ドールフレンドリーです。あなたが湿気ったバズーカ?」

「ドー…モ。シヒです。湿気った…?とにかくスシ…かメン・タイ…」


マユは対ニンジャのイクサで食べるつもりだったトロ・スシをベストのスシタッパーから出して、渋々シヒに食べさせた。食べさせているうちに気付く。段々と生気を取り戻していく顔が、かつての友と酷似していることに!

「え、えー!!!マリーじゃん!え、ほんとに?」

「あ、え…ん!?マユか!?嘘だろ!?お前ニンジャになってたのか?」

「それはこっちのセリフだよぉ!うそ~!」

マユはマリーに熱い抱擁をする。

「ってことはアカリももしかしてニンジャになってるのかな!?」

「いや、あいつは…」

「あ、そうなんだ…」

『…聞こえるか?』

マユの耳に付けられていたレシーバーに無線が入る。

『籠が開いたのを確認した。無事合流できたようだな。では早速ミッションを開始しろ。』

マリーもニンジャ聴力でそれを聞き逃さない。

「ミッションってなんだ?そもそもなんでお前がここに?」

「かくかくしかじか…」

「ふむふむなるなる…」

「じゃあ行こう!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


洞窟へと向かう道中、2人はツタや葉をチョップで切り払いながら積もる話を続ける。


「マリーもさぁ。すぐに捕まったわけじゃないんでしょ?なんでアイアンアイドル=サンとかわたしのこと探してくれなかったの?」

「お前知らないのか?わたし達がレーザートラップで死んだ時にアイアンアイドル=サンがなんて言ったか。」

「え…?知らないけど。」

「また友達作り直しか、だぞ。それで去ってったんだ。そういう存在だったんだよわたし達は…っと、着いたぞ。これがその洞窟じゃないか?」

「そんな…」


2人の前に岩の壁があり、その壁に大きな穴が空いている。ショックで気落ちしているマユをマリーが先導し、穴の奥へと入っていく。
明かりの無い道をニンジャ視力で探索していくその道中マユは、今までアイアンアイドルに向けて感じていた絆も一方的な感情だったことや、一度消えた希望の火がまた灯ったと思ったらその火自体が道標たりえないものだったことなどで、悲しみの感情を味わっていた。

道中には現場作業員の死体が落ちている。一人。二人。進む毎に増えていくその死体は、どれも突然命を失った様で、下を向けばその幾つもと目が合う。通常のミッションであれば残虐なニンジャがいるに違いないと用心するところだが、マユの頭の中ではそんな事は些事だった。

「ねえマリー」

「なんだ?」

「アイアンアイドル=サンって…わたし達のこと、どう思ってたのかな。もう新しい友達できたのかな。」

「さあ」

「わたし達って…もう、要らないのかな」

「アイアンアイドル=サンに聞けばいいんじゃないか?」

「そう…だよね。そっか。そうだよね。」

人間の友が死んでいくのはどんな気持ちか。悲しいのか、慣れているのか。死んだ友を思い出しては悼んでいるのか、はたまた忘れ去っているのか。全てはアイアンアイドル本人に聞かなければわからない。
会って、確認せねばならない。

「そうだよね!うん!」

マユは自分の両頬をリズミカルに2回叩き、ようやく現状に集中することができた。
丁度その時、2人は吹き抜けとなっている空洞の壁際に出た。空洞の最奥の壁は巨大なパイプオルガンとなっており、石の舞台には黒い襤褸包帯を巻き付けた病的なまでに痩躯のニンジャがいた。
こちらのニンジャ存在を感じ取っているのか、下にタタミ50枚以上離れた場所から高笑いで迎えていた。

「クックック…!よく来たな…と言いたいところだが、お前らが今から俺の糧になるのが楽しみで仕方ねェ…。糧とまともに話をする気なんて起きねえが、礼儀なんでな…ドーモ、ブラックパワーです。」

マユとマリーは前宙で石舞台の前に着地。アイサツをする。

「ドーモ、ドールフレンドリーです。」
「ドーモ、シヒです。」

石舞台の上と下で睨み合うニンジャ!その間にカラテが張り詰める…!誰がイクサの火蓋を切るか…!最初に動いたのは、ブラックパワー!

彼はくるりと踵を返し、巨大パイプオルガンの鍵盤部分に行き、狂ったように弾き始めた。
ぽかんと飽きれて顔を見合わせるドールフレンドリーとシヒ。
すると…おお!なんたることか!死者の群れが洞窟の至るところから覚束ない足取りで出てくるではないか!

「イヤーッ!」

その内一体へ向けてスリケンを投擲するドールフレンドリー!頭部に命中!

「アバーッ!」

しかしその影からユラリともう一体!その死体に向けてシヒが投擲!

「アバーッ!」

命中!

「え、シヒ=サンってクナイ・ダート派?」

「こっちの方が美しいだろ」

2体倒したところで焼け石に水…ならばさらに水をかけるべし!

「「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」」

「「「アバーッ!」」」

「イヤーッ!イヤーッ!…ねえ!ちょっとシヒ=サン!これ!終わんなくない!」

「イヤーッ!確かにな!相手の数ももうヤバイ!」

「絶対あのブラックパワー=サンやった方がいいと思うんだけど!一心不乱に弾いてるし!」

「よし!決めるか!あれを!」

「え!?あれって何!?」

シヒはクナイ投擲を止め、バック宙で戦線を離脱!ラリアットのポーズでブラックパワーへと襲い掛かる!ドールフレンドリーも慌ててバック宙!ブラックパワーの丸まった背中にタッグでダブルラリアットだ!

「「イヤーッ!」」

「グワーッ!」

脊髄破壊!勢いで鍵盤も破壊!飛び散る黒鍵と血と白鍵!

倒れ込んでうずくまるブラックパワーを見下ろす2人。

「ちょっと!無かったでしょ!合体技とか今まで!」

「わかってできたならいいだろ?それよりこいつ、見てみろ」

ブラックパワーの黒い襤褸布をよく観察すると、それは化学繊維であることがわかった。たった今壊したパイプオルガンも新品同様だ。

なんだそういう感じねと溜息を吐いて、ブラックパワーを踵で踏むドールフレンドリー。

「君ねぇ。どっかのカネモチのボンボンか知らないけど、こんなことしちゃだめでしょ~?ヤクザクランがね?君どっか行けって。言ってるの。ここ人の敷地なの。ワカル?」

「アッハイ…」

「そんでねぇ?どうせUNIXとかも揃えてるでしょ?ここ。カイシャクしてあげないから有り金全部出してよ。そうしたら洞窟の外までは連れて行ってあげるからさ」

「アッハイわかりました…」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


後日、ヘルコンニチワブラッド・ヤクザクランの応接間に来たマユ。マリーは来ない方が揉め事にならないだろうと判断し置いて来た。尊大なニンジャが革張りのソファに腰掛ける。

「よくやった。まずはそう言わせてくれ。あのガキ、弱いんだがカネモチの子だからな。手を出せなかったんだ。助かった。湿気ったバズーカも役に立ったか?」

「そういうのはいいから。こっちは言われたことをやった。情報を頂戴。」

「わかったわかった。そう急かすな。姉ちゃんの言ってたヤツの情報は突き止めた。俺の舎弟だよ。」

「エ?」

「オイ!入ってこい!」

ノックの後、上半身全体に渦巻く鰻の彫り物を入れた筋骨隆々な男が入室してきた。

「ドーモ、お初にお目にかかります。イエローイールです」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


本編終わり

余暇:4日
名声+1
報酬:万札10×2人分
(万札はブラックパワーの口座から出た報酬)


のびのびTRPG(今回はスチームパンクを使用)で使用したカード

場面カード「暗黒街の主」
頼み事を聞いてくれる
→闇カード「武器商人」
好きな武器をなんでも

場面カード「死者の目覚め」
ミイラが襲ってくる

場面カード「現われた総帥」

あとがき

  • 最初はソウカイシンジケートのニンジャにクエストを受注するはずだった。でもソウカイヤのニンジャで情報屋みたいな役割してるニンジャって思いつかなかったり、最後にそのニンジャの舎弟とわかるというシーンに繋げようとしたら今後二人はソウカイヤに目を付けられる存在になってしまうと思ったりなどなどして、その辺のヤクザクランからクエストを貰うという形にした

  • 読者がまだそのキャラについて何も知らない、地の文からデティールを読み取ろうとしている時に地の文が淡々と異常なことを伝えるのが好き。なので冒頭のヘルコンニチワブラッドヤクザクランのニンジャでそれをして遊んでいたら、最後これの舎弟としてあの恐ろしいニンジャが出てくることになってしまって、わろた

  • 待ち構えるニンジャ存在のジツを死者を操るジツ持ちにしようと思い、久しぶりにニンジャのメンバーシップに入った。それもPLUS+TRPG+DHGの全部のやつに!逆噴射先生のマガジンも読みたかったからね。で、シノビとカゲのプラグインを見直したら死者を操るジツ(この場合だと読み替えできそうなのが★★ブンシン・ジツ)が結構ジツ値無いと持てないものだった。かつそれを使えるだけの精神力もあるとしたら回避ダイス持ちまくりで戦闘が長引くなと考えた。ので、厳密なジツとかじゃなくただのびのびTRPGスチームパンクの書いてあることに従って、クローンヤクザの代わりに死者がいるってだけの扱いにした。

  • 本名を知ってる程親しい仲のニンジャ同士(フジキドとカタオキとか)が戦闘中とそれ以外で呼び方、変えてたっけな…とわからなくなったので、日常パートでは本名、戦闘パートではニンジャネームで呼び合うというプリキュアと同じ方式にしました。

  • 『ドーリー・アイアン』までは律儀に判定とか戦闘の近接・非近接とかやってたけど、前作から完全にそういうのやってない。本当にニンジャスレイヤーTRPGの雰囲気だけを使ってやっている。それに、のびのびTRPGで決めた話もそれが本筋じゃなくなってる。マユの葛藤とかそういうものが主題になってきちゃってる。

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