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noteをより豊かな街にするために。徳力基彦×最所あさみ×加藤貞顕×深津貴之


7月1日、ブロガーの徳力基彦さん、リテイル・フューチャリストの最所あさみさんがnoteプロデューサーに就任しました! お二人は、これまでどんなことをやってきて、これからどんなことをやろうとしているのか。ピースオブケイクCEO加藤貞顕とCXO深津貴之とともに、インターネットで書くこと、noteが目指す世界について語りました。

インターネットで書き続け、コミュニティを運営してきた二人

加藤 noteを「街」として盛り上げていくために、インターネットでの発信により自身のキャリアを築いてきた強力なお二人を、noteプロデューサーとして迎えることになりました。

まずは、自己紹介をお願いできますか。

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徳力 ブロガーとして15年間、インターネットにものを書き続けています。もともとNTTに就職し若気の至りで転職してしまった経緯があるのですが、やることなすこと上手くいかず苦悩していた自分をブログが救ってくれたんです。ブログを書くことで、仕事に対する姿勢が変わり、ネットワークが広がりました。

加藤 徳力さんと出会ったのはちょうど15年前でしたよね。その頃からブロガー勉強会を主催していらした。

徳力 じつは古い仲なんですよね。ブログを書き始めた2004年当初、サラリーマンの自分がインターネットを通じて、メディアで見る論客と対話できることに衝撃を受けたんです。それまで非対称だった世界がフラットになった。その価値を伝えたくて、有名人の日記ではなく、オピニオンを書いている一般人にスポットを当てる「アルファブロガーアワード」を主催し、書籍もつくりました。

加藤 2003年にブログが始まって、2005年にはブログブームが起きました。

徳力 私自身、ブログがきっかけでアジャイルメディア・ネットワークに就職し、代表まで務めました。ステマへのアンチテーゼとして立ち上がった同社では、企業が既存顧客=ファンとのコミュニケーションを大事にすることで、新規顧客も増えることを証明したくて「アンバサダープログラム」というアプローチを啓発してきました。

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最所 私は「知性ある消費をつくる」をミッションに、noteの有料マガジン「余談的小売文化論」を書き、コミュニティ「消費文化総研」を運営しています。

もともと大手百貨店に勤め、伝統的なやり方だけでなくITも取り入れていかないと未来がないのではという危機感を持ち、ITベンチャーへ転職。そこでオウンドメディアの記事を書きはじめた経験から、会社の公式見解だけではなく、個人として未来の話をしたいと思ったんです。

noteを書き始めたら、note編集部を筆頭に誰かが必ず見つけてくれて、次第に多くの人に読んでいただけるようになって。noteを読んで私を理解したうえで声をかけてくれる人が増えました。出会う人が変わって、自分がやりたいこともはっきりして独立。

noteがきっかけで、私の人生は大きく変わったんです。

加藤 キャリアのタイプや得意分野は異なりますが、お二人の共通点は、ネット上でずっと書き続けていること、コミュニティを運営してきたことですね。

インターネットを楽しくするために、仲間になった

加藤 そんなお二人に、noteプロデューサーとして、僕らは何を期待しているのか。ビジネスに強い徳力さんには、企業内個人や法人に向けて、小売や消費に関わる発信をしてきた最所さんには、小売・ブランドに携わる方々を対象に、「noteをこうやって使うといいよ」というお手本を見せてほしいと思っています。

深津 noteの重要なミッションの一つは、「インターネットを楽しくすること」。インターネットは良くできると、本気で信じている人たちが集まって、場を作っていくことが大事だと思っています。僕も梅田望夫さんの『ウェブ進化論』をずっと信じているし、加藤さんも、徳力さんも、最所さんもインターネットの力を信じている。

加藤 インターネット自体はフラットなものなので、使い方次第で、楽しくすることも、その逆にもできますからね。

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深津 2004年頃のアルファブロガー時代は、みんなインターネットは世界をよくすると信じていた。でも、PV・数字を求めすぎた結果、斧を投げたり、冷笑したり、スキャンダルを狙う人もいて、必ずしもそうはならなかった。志ある人がソーシャル言論空間から離れ始めているので、その流れを止めたい。

徳力 まさに、梅田望夫さんのウェブ進化論信者だった私は、ここ5年くらいはインターネット悲観論者でした。インターネット=人間社会の悪いところが露呈する場所といったイメージになって、諦めてしまっていたところがあった。でも、昨年末にメディアミートアップで加藤さんの話を聞いて、noteで起きている前向きな出来事を知り、見方が変わったんです。

僕は「ブログで人生を救われた」人間だけれど、最所さんをはじめ「noteで人生が変わった」人たちが実はたくさんいることがわかった。それは大きな希望です。

最所 私にとって、インターネットは「良いもの・悪いもの」ではなく、そこに「あるもの」。もっと下の世代は、生まれた時からインターネットがあるから、実世界との境界線がない。

だからそれまで別物だったネット上の人格と実際の人格が重なりつつありますよね。私自身、noteで人を傷つけないことを意識していたら、性格もマイルドになりました(笑)。そんな風に、インターネットと実世界は相互作用があると思うんです。

私はnoteを「やさしいインターネット」だと感じていて、それはもともと集まってきている人の気質もあるだろうし、書き手がnoteのやさしい雰囲気に影響されている部分もあるのかもしれないなと。

加藤 過去の「楽しいインターネット」を知っている徳力さんと、現在の「やさしいインターネット」を使っている最所さんと一緒に、その力を再興して、加速させていきたいですね。

noteに思想を書いて、褒め合って、良いコミュニケーションを加速させる

徳力 インターネットで書くことについて、古い世代は世界に対する情報発信であり「特殊なもの」、若い世代は日常会話の延長線上にあり「プライベートで使う遊び道具」と捉えている節があるかもしれませんね。だから、企業も個人が発信することを恐れてしまうけれど、それではもったいない。

僕は、ブログやnoteは、それまでメディアにしか許されていなかった特権行為が一般の人にも解放された場所であり、自分の思いや考えを置いておける「プルのコミュニケーション」ツールだと思っています。

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加藤 ぼくはもともと編集者だったわけですが、出版社に所属して本をつくっていくと、ビジネスパーソンが著者となって、自分の考えを物体としてまとめたことをきっかけに、その人の人生が変わった場面をたくさん見てきました。思考回路がわかるから、コミュニケーションが加速する。noteでも同じことが起きていると感じます。

だから、「noteでまず何を書いたらいい?」と聞かれたら、「所信表明、自己紹介を書くといい」と答えています。

最所 私自身、社内で発言権がない25歳の頃に書き始めて、社外で評価されたことによって社内でも意見を聞いてもらえるようになりました。独立してからも、自分で営業したことは一切なく、noteを読んで私の思想を理解してくれた方から依頼がきて、今があります。

加藤 すばらしい!

最所 利用者の良い情報の蓄積が信頼につながるクレジットカードヒストリーと同じだと思うんです。自分の経験や思想をnoteに書いて、蓄積していくことが社会の信頼につながっていく。

加藤 なるほど。

最所 組織に属している場合、どこまで書いていいのかわからないという方もいますが、日常生活でもコンフィデンシャルは口にしないと思うので、同じです。また、抽象化して書くこともできると思います。

加藤 そういえば、いろんな企業のいろんな案件に関わっている深津さんは、大抵、人類とか国家とか、かなり大枠の話を書いていますよね。

深津 できるだけ抽象的・普遍的なことを書くようにはしていますね。個別事例を書くときは必ず事前に確認をとります。

徳力 僕は、ブログは「コピーロボット」だと思っています。だから、ネット上で匿名で罵詈雑言を吐くのは間違っている。僕だって、テレビの前で芸能人に悪態をつくことはあるけれど、本人の前では言わないし、社会常識として、会社の秘密をベラベラ喋らない。気負って、過激な発言をしたり、自分を大きく見せたりする必要はないんですよね。

加藤 炎上にもつながりますからね。

徳力 人間の普通のコミュニケーションとして、何をすれば相手に喜んでもらえて、自分にとってもいいことがあるかを考えればいいんです。noteはそのあり方や仕組みで、より良いインターネットの使い方を教えてくれる。インターネットにはチュートリアルが必要で、noteはその役割を果たしていると思いますね。

深津 どんなゲームでも、自然状態を放置すると、みんなの行動が最適プレイに収束します。noteにおいては、その最適プレイが、悪いことではなく、できるだけ良いことになるように設計しています。お題の設定など、PV以外に書く動機をつくり、好きなことを書いて、お互いに褒め合える文化をつくる。

最所 小林秀雄も「褒めることは創造につながる」と言っていて、noteを書くときのポリシーにしています。

徳力 最所さんはまさに、noteのチュートリアルで、すくすく育った印象ですよね。

深津 徳力さんと最所さんにnoteプロデューサーをお願いしたのも、みんなのお手本になってほしいからなんです。

さまざまな文化圏の人が共存するnoteという「街」をもっと豊かに

加藤 お二人がこれからnoteプロデューサーとしてやっていきたいことを聞かせてください。

最所 大きな視点では、ストーリーによってファンとつながる小売のあり方を構築していきたいです。ストーリーは、高尚な思想を一方的に伝えるのではなく、顧客との日々のコミュニケーションによって伝わっていくものです。ブランド自身が語りすぎず、ユーザー自身の解釈で、ブランドのストーリーに自分の物語を乗せていくことができる余白を残す。ユーザーが語りたくなるプロダクトをつくり、語り合える場を用意し、ブランドからも感謝の気持ちを伝える。noteはハッシュタグとマガジンを使ってそれができる場所です。

加藤 ぜひ活用してもらいたいですね。

最所 短期的な売上ではなく、5~10年後に顧客とどんな関係性を築いていたいか。その視点で、個人から大企業まで、それぞれの規模にあった有意義なnoteの使い方を示していきたいです。伴走者として、私自身がフィードバックすることはもちろん、コミュニティを形成して仲間を増やしていこうと思っています。

徳力 実は僕自身、長い間noteを誤解していました。noteは課金システムで儲けるためのプラットフォームだと思っていたから、課金するつもりがない人間は使っちゃダメだと思っていて。ビジネスブロガーの僕には「クリエイター」も「創作」も敷居が高すぎた。でも実際には、noteはその言葉通り真っ白で、誰もが好きなことを書いていい場所なんですよね。

加藤 あくまでもnote(ノート)だから、落書きでもいいんです。

深津 意識高いことだけではなく、くだらないことを書いてもいい。

徳力 だから僕は、エモい文章を書かなくても、いわゆるクリエイターでなくても、noteを使っていいんだと、その裾野を広げていきたいと思います。企業の経営者も社員も、普段仕事でITを使うことがなさそうな職人気質の漁師や庭師も、誰もがnoteアカウントを持っていることが「普通」になるように。

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加藤 いいですね。僕らはインターネット上に、ニューヨークのような「街」をつくりたいと思っています。高層ビルが連なる金融街から、ほとんど中国みたいな中華街、劇場、大自然まで、あらゆる文化圏の人たちが共生している街が理想。noteという名前はすごくジェネラルで、誰もがどんなことも書ける。それぞれ違う人間同士、隣のコミュニティを揶揄することなく、共存していける「街」を本気でつくっていきます。

徳力 noteに関わるようになって一番感動したことは、noteという街づくりに本気でコミットしている人がいることでした。単純に警察を増やして管理しようとするのではなく、街の人=ユーザーを信じて、地道にゴミ拾いをして、割れている窓を直して、インターネットを良くするために力を尽くしている。意外に従来のウェブサービスに足りないのは、こういう地道な努力だと思います。

深津 開発会議でも、PVや売上の話はしていなくて、どうやったらみんなが楽しく書き続けられるか、どうしたら街がもっと良くなるか、綺麗事のような話を超本気でしていますからね。

加藤 これから僕らと一緒に、noteをより良い街に、そしてインターネットをよりよくしていきましょう!


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