松本山雅2018シーズンのまとめーその2

スタッツ編

全体的には悪くないものの若干アンバランスな数字になっている。シュート数は2位ながらもゴールが10位で効率の悪さが見える。その原因はシュート成功率17位の決定力不足。いい形を作ってシュートまでは行きながらも決まらないシーンが多かった。特に高崎のシュートが枠に行かず天を仰ぐシーンが多々見られた。1トップで体を張り続けたことのありコンディションの良い試合の方が少なかったとは思うが決めるところで決められたらもっと楽な試合運びができただろう。

そのほかに攻撃面で目立つ数字は枠内シュート5位、コーナーキック2位、スローイン5位あたりか。特にコーナーキック2位は押し込むことができている証拠であり相手最終ラインとの勝負にまで持ち込めている面は評価に値する。またドリブル11位自体は特筆に値しないが16シーズン19位、17シーズン21位に比べると飛躍的に伸びている。前田直輝、前田大然、石原、セルジーニョの働きが大きいことがよくわかる数字である。

守備面では被ゴール1位、被シュート成功率1位は立派な数字である。被シュートは9位なのである程度は打たれるがシュートブロック&セーブで防ぐことができている証拠である。クリアが8位で幾分高いもののタックル17位、インターセプト20位であまりボールへのアタックはしていない。ソ連軍よろしく縦深陣地を敷きゴール前に引き込んで跳ね返す。そして伸びきった補給線(背後のスペース)をつくカウンターで敗走させるのも史実と似ている(笑)。誰がいったか知らないが山雅的3421と反町監督の戦術をソ連軍(ソリマチ連邦)と唱したのは慧眼である。

人とボールの動き方

上の図は選手の配置と役割を示したものである。実線が人の動き、点線がボールの動きを示している。ビルドアップは基本的に左サイドから多い。特に浦田、藤田、石原、セルジーニョでひし形を作りパスコースを確保するのが常套手段である。プレーエリアのリーグ平均からの差分からも左偏重になっていることがわかる。アタッキングサードに押し込んでからは石原によるカットインからのシュートやセルジーニョのボールキープからのショートパスやシュートがフィニッシュの形になっていた。

右ではあまり見られなかった構造だが、飯田の足元の技術が足りないことや、大然には相手最終ラインの裏を取らせたい狙いもあったので左右非対称の構造になっている。右のWBが岩上の場合は大きなサイドチェンジやアタッキングサードに押し込んでのクロスなど中長距離のボールが多かった印象である。石原と岩上の違いが左右非対称の攻撃パターンの違いとも言える。

守備での印象

守備面でもシーズン初期と終盤では変更があった。特にシーズン最初期はゴール前ではマンマーク要素が強く、相手に自由を与えない意図が感じられたがそこを躱されるとぽっかりスペースが空くことがあり、あっさり失点病による不安定さが見られた。それが改善され出したのがホームでの甲府戦からあたりである。人に付く部分とスペースをケアする部分の役割分担ができるようになり漸く守備が安定し始めた。

また、後半戦に入ったあたりから新しいコンセプトでの守備体系を取り入れるようになった。これまでは1)343での前プレ、2)523を敷いてミドルゾーンで待ち構える、3)541でPA前まで退きクロスやシュートを跳ね返す。の3段階で守備体系を構築していた。基本になる発想はライン(線)で、ラインを構成する選手間やライン間の距離の遠近で空くスペースができたりしていた。新しいコンセプトというのは面と線で守る動き方である。実際に行われたのはボランチ2人と前線3人による5角形を5人の最終ラインと合わせた複合系である。

元々のアイディアはサークルディフェンスと言うらしいが10人のフィールドプレイヤーが7角形+3センターの図形を構築し、ボールの位置に合わせて角度を変えるものである。これの特徴は各選手の移動距離が短いこととカウンター時にかけられる人数が多いこと。素晴らしい守り方のように見えるが弱点がありサークルの外側への対応が弱いこと。特にGKとDFの間のスペースを突かれると一気にピンチになってしまうためあまり普及していない

そこで開発されたのがラインと多角形を組み合わせた複合系である。詳しくは知らないがドイツのクラブでアンカーを置く532を採用し、前の32で5角形を作り、その5人がサークルディフェンスの原理で角度を変えるやり方をとっていると聞いた。それを応用したのが山雅の523での線と面を合わせた複合系である。1トップと2トップの違いがあるので5角形の上下が逆さまになっているがやりたいことは同じで、先ず5角形で相手のビルドアップを阻害、うまくいけばカウンターを仕掛ける。逆にビルドアップ阻害に失敗してもその背後に5人のラインがいるため横幅は確保できてる。ラインの裏を取られるとピンチになるのは変わらないが、それでも5人いるので誰かがついていくことでケアする。と言うのが18シーズンの山雅の守備の最終形態で、これが機能したことが無失点試合を多くできた要因だろう

それでも弱点はあるもので5角形の外側はやはりケアしきれない。特に正確なサイドチェンジがくると非常に対応し辛い。J2ではこのサイドチェンジを蹴れる選手はいなかったがJ1だと普通に狙われると思われる。これをどう対処するのか反町監督の腕の見せ所だろう。

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