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旅するように働く「離島×旅×複業」シンポジウムルポ

11月30日、東京都内で離島百貨店シンポジウム「離島×旅×複業」が開かれました。日本には416の有人離島があります。今回のテーマは「離島を旅するように働く マルチワーカーってなに?」。日本中の離島が連携して新しい働き方や生活スタイルを考えようという狙いです。複業や離島暮らしへの関心の高まりを反映し、会場は超満員。募集開始後、わずか5日で定員100人に達したそうです。
基調講演でNPO法人 離島経済新聞社の大久保昌宏代表理事が離島地域の現状を説明しました。

■生活拠点は3カ所
大久保さんは1カ月の半分は北海道利尻町で街づくりの手伝い、東京都の新島に家と畑を借りています。東京、新島、利尻の3拠点で生活しています。
離島の課題として担い手不足を挙げました。
15歳以上の生産年齢になると島を離れる人が増える⇒教育が衰退する⇒移住定住しても安心して子育てできないという負のスパイラルに陥っています。「島の魅力は人。課題も人」と強調しました。
では、どんな人が足りていないのでしょうか。
①一次産業(農家や漁師)の従事者、観光関連、役場
②既存産業・商店の経営層
③新たな事業を創る起業家層

ほとんど全ての業種でした。理由として大久保さんは①収入が不安定②島の働き方、暮らし方が未知の世界③受け入れ体制への不安ーーの3つを指摘します。
この課題をどう解決すればいいのでしょうか。大久保さんは「ひとつの地域だけでは解決できないことも複数地域が協力することで解決できることもあるのでは」と訴えました。たとえば農業には収穫する作物によって繁忙期と閑散期があります。Aという島の繁忙期に仕事をして、農作業が一段落する季節になれば、繁忙期に入った別の場所で働く。「そういった取り組みをサポートしたい」と話しました。

続いてパネルディスカッションです。コーディネーターは佐藤正一さん(国土交通省国土政策局離島振興課課長)。パネリストは加藤遼さん(パソナ ソーシャルイノベーション部部長)、牛山博宣さん(東急電鉄 住宅開発部賃貸住宅推進課課長)、山内道雄さん(前海士町長)、大関太一さん(NPO法人 利尻ふる里・島づくりセンター)といった方々。

旅と複業が課題解決のキーワードとなるという視点で議論が交わされました。
■離島を課題解決の先進地に
人口減や少子化…離島は日本の課題先端地になっています。「離島が抱える課題を解決できれば、日本の将来の課題解決の先進事例となる」という声が聞かれました。離島で都会、いや世界の仕事ができれば働き方改革が離島から始まっていくのかもしれません。
労働人口が現在の6600万人から2030年に5900万人に減る一方、フリーランスは現在の1100万人が2000万人になります。パソナの加藤さんは「個人で働く人が増え、1人が複数の仕事をする時代になる。離島は個人で働くマルチワーカーが多い」と指摘しました。前海士町長の山内さんは「住まいの確保が難しいが、民泊(の活用)もこれからの道ではないか」と話します。
離島の仕事とはどんなものがあるのでしょう。利尻ふる里・島づくりセンターの大関さんは利尻島で昆布を干すアルバイトを一例として紹介しました。午前3時から5時半まで収穫した昆布を干す作業で時給は1800円。1日3時間働いて5000円を超えます。漁師の家にホームステイすれば生活費は少なくてすむそうです。私も興味を持ちました。

■情報入手の方法は
実際に移住してみたいと考えた場合、どのようにして情報を収集すればいいのでしょう。会場から「離島といってもいろんな島がある。その島にゆかりがないと選択が難しい。どうすればいいか」と質問が出ました。
これについて大関さんは「各地で移住フェアをやっている。寒いところが好き、暑いところは苦手など自分の基準を持って探せばいい」とアドバイスしました。利尻町では移住希望者が手ぶらで暮らしを体験できる1泊1500円の「お試し暮らし体験」もあるそうです。

最後の交流会では海士町の「岩がき」、答志島(三重県)の「カキのオリーブオイル漬け」、粟島(新潟県)の「キンバソウとろろ」など、全国から集めたおいしいものが振舞われました。
離島は自然や食べ物といった魅力に満ち溢れています。旅するように働くということが、これまでの働き方の定義や概念を変えることになるかもしれません。

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