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書店員が年末年始におすすめする本。また、読書とビジネスパーソンについて

たとえば「教養主義」と呼ばれる言葉がある。教養主義といえば、『三太郎の日記』や『善の研究』が刊行された大正時代や、岩波文庫を読む旧制高等学校生を想定するのが通念的な理解とされる。また、農村文化と都市文化の文化資本の差異も、教養主義の根底にはある。したがって、農村と都市の生活様式の格差が縮小するにつれて農村的エートスが払拭され、都市型社会への変化が進むことにより、教養主義も変わっていくことになる。都市型社会への変化は、大学キャンパスから教養主義文化を駆逐していくことにもなった。すなわち、読書人口の減少等である。読書中心主義である教養主義は、大衆化とともに衰退していくことになった。

しかし、読書中心主義の教養主義は衰退したが、これからの社会にとって読書などによる教養や知識などは、ますます重要性が高まることも予想される。教育コストの上昇等により学校では実用的な学問が中心になることも考えられるが、「良い問いを立てる」こともビジネスや社会課題の解決などにとっては重要である。その際、リベラルアーツをしっかり学んでいることも大切になるだろう。たとえば、マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ氏やFacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏は読書家で知られる。

年末年始は忙しい人も多いだろうが、当記事で話題になっている書籍などを読んでみるとよいかもしれない。


1. 書店員がおすすめする本

当記事では八重洲ブックセンター本店、リブロ汐留シオサイト店、三省堂書店有楽町店、青山ブックセンター本店、紀伊国屋書店大手町ビル店の5つの書店のビジネス書担当者が、年末年始に読んでおきたいビジネス・経済書をそれぞれ2冊推薦している。2018年刊行の本から選んでいるとのことだが、ビジネス書担当者の推薦本は次のとおりである。

(1)八重洲ブックセンター本店

・田中靖浩『会計の世界史:イタリア、イギリス、アメリカーー500年の物語』(日本経済新聞出版社)
・渡辺順子『世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン』(ダイヤモンド社)

(2)リブロ汐留シオサイト店

・田中靖浩『会計の世界史:イタリア、イギリス、アメリカーー500年の物語』(日本経済新聞出版社)
・成毛眞『amazon 世界最先端の戦略がわかる』(ダイヤモンド社)

(3)三省堂書店有楽町店

・スコット・ギャロウェイ『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』(東洋経済新報社)
・川島蓉子・糸井重里『すいません、ほぼ日の経営。』(日経BP社)

(4)青山ブックセンター本店

・前田裕二『メモの魔力』(幻冬舎)
・クリスチャン・マスビアウ『センスメイキング』(プレジデント社)

(5)紀伊国屋書店大手町ビル店

・ボブ・ウッドワード『FEAR 恐怖の男』(日本経済新聞出版社)
・白川方明『中央銀行』(東洋経済新報社)

2. ビジネスパーソンの読書の実態調査

ビジネスパーソンの読書について、楽天株式会社が運営するオンライン書店「楽天ブックス」が実施した『ビジネスパーソンの読書の実態調査』をもとに、読書時間などのグラフを作成してみた。

まず、ビジネスパーソンの1日の読書時間をみると、(1)「15分未満」(39.4%)、(2)「15分~30分未満」(26.7%)、(3)「30分~1時間未満」(22.3%)、(4)「1時間以上」(11.6%)となっている(下図参照)。

次に、ビジネスパーソンが読んでいる本のジャンル トップ5をみると、(1)「小説・物語」(64.3%)、(2)「ビジネス書」(28.0%)、(3)「漫画」(27.1%)、(4)「ノンフィクション・エッセイ」(25.8%)、(5)「歴史・地理」(24.8%)の順となっている(下図参照)。

最後に、ビジネス書を読んでいる異性へのイメージについてみると、(1)「意識が高そう」(37.3%)、(2)「仕事が出来そう」(21.7%)、(3)「真面目そう」(20.7%)、(4)「頭がよさそう」(20.0%)、(5)「好奇心が強そう」(18.2%)の順となっている(下図参照)。

可処分時間の使い方として、たとえばテレビやYouTubeを見たり、SNSに投稿したり、外でのエンタメを楽しむ人などもいるだろう。時間のゆとりが減っている場合、ながら需要も考えられる。ある程度のまとまった時間が取れない場合、読書をしようと考える人も少ないだろう。このような読書のながら需要のひとつとして、オーディオブックと呼ばれる「聴く本」を活用する方法も考えられる。オーディオブックはランニング中、電車や車での移動時間や家事の最中など、「ながら」でも利用できるものだ。

3. まとめ

2017年3月28日「働き方改革実行計画」が決定され、「働き方改革」や「学び直し」が注目されるようになった。働き方ではRPAの活用、アジャイル型の働き方、学びでは大人の学び直しなども話題となった。

2018年末に家の大掃除をするとともに知識やスキルを洗い出し、読書などにより知識等をアップデートして、2019年は新しい引出しを増やせるようにしたい。


年末年始はふるさとに帰省される方もいらっしゃると思いますが、皆さま良いお年をお迎えください。

4. 参考(「心に残る2018年度経済書ベスト3」)

SNSのツイッター上で経済学者の方々が心に残る2018年度経済書ベスト3を挙げていたため、読書などのご参考になれば。

安田洋祐大阪大学准教授が挙げていた著書は、ビジネス編では『「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明』、『経営戦略原論』、『チャイナ・イノベーション』の3冊。

伊神満イェール大学准教授は歴代「ベスト経済書」20年分のツイートを。


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