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Guest house MARUYA

干物と飲み屋も魅力なふだん着な熱海の顔


Guest house MARUYA(以後マルヤと表記)は、静岡県熱海市、JR熱海駅から海に向かって15分くらい下った熱海銀座商店街の中にあるゲストハウスだ。以前はパチンコ屋だったという広い館内を改装してつくられた。

開業にあたっては古い建物を活かして新たな価値をつくっていく「リノベーションスクール」という枠組みを利用して、そのプロジェクトのひとつとして進められた。ワンフロアの宿だけれど、かなり面積は広く、間口の広い入り口とそこから先につながる広いリビングが印象的だ。

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ここをつくったのmachimoriという会社を率いる市来広一郎さん。もともと学生時代までは熱海で育った。家族で当時数多くあった企業の保養施設の管理をしており、人がよく出入りする環境だったそう。その後学生時代には熱海を離れたのだけれど、とにかく子供の頃に育った熱海のまちが大好きだった。その後、熱海は一時期大低迷時代を迎える。大型ホテルなどの廃業などで廃墟ビルなども出現し、まちが荒んでいくのをとても悲しく思っていたと聞いた。

マルヤのある熱海銀座商店街は、歴史の古い干物屋やお土産屋などが並ぶ由緒正しい通りだったけれど、駅からもやや遠く、車では通り過ぎてしまうだけなので、団体客メインのホテルが潰れ、昼夜出歩くことが減ったと同時にテナントも減っていく一方。

その空き店舗をリノベーションスクールという仕組みを使い、銀行融資だけでなくクラウドファンディング、みんなでペンキ塗りをするなどの共同作業を通じてオープン前からファンを増やした。

開業にあたっては、地元商店街との連携を考え「熱海名物の干物を自分でBBQグリルで焼いて食べられる朝食」というサービスを考案。これがとても旅人にも地元の商店にも好評で、人気のコンテンツとなった。

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熱海にはなかったゲストハウスという業態。マルヤができたことで、今まで熱海という老舗観光地に目がいかなかった若い世代に目を向けさせ、物理的に外から人が来て泊まってもらうという起爆剤になったことはまちがいない。

でも、お話を聞いていて印象に残っているのは、市来さんがゲストハウスオープンよりもずっと前から熱海に戻り、塾の講師などのバイトをしながら観光協会と関わるなど、本当に地道にすごく時間をかけて、まちの人と深く密接に関わりを持ち続けたこその成功だということ。

市来さんの書かれた『熱海の奇跡』という本にもその経緯は書かれているが、数字とグラフで表されたV字回復の裏にはそういう大きな情熱と努力が隠れているのは間違いない。

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マルヤはその周辺にカフェ(今は軒先で営業)やコワーキングスペースなどの関連施設があるのと、熱海のディープなまち歩きができるツアーがあることも特徴のひとつ。「泊まると熱海がくせになる」がキャッチコピーで、日常の暮らしの一部のように、もうひとつの日常として、楽しんで欲しいという思いが込められている。

熱海は歓楽街としての歴史も古いから、飲み屋とかスナック街みたいなのもちゃんと残されていて、そういう「一見さんでは入りにくい」居酒屋や寿司屋などもマルヤで聞いた!という呪文を唱えたら(笑)大歓迎してくれるというお店も多い。文豪が通った喫茶店や御年80を越える方がやっている現役ジャズ喫茶があるなど、昭和レトロ(それもだいぶ古めの)を感じられるお店も近くにあって、そういう場所をうろうろと散歩するのも楽しい。

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マルヤのベッドはカプセルタイプなんだけど、普通のドアがあって、中には壁紙が貼られていたり、カプセルなのに和室っぽかったりと、かなり他ではみなユニークなつくりになっている。

奥の方にあるシャワーと洗面台は、もともと池だった?かのような岩の塊みたいなのが残されていたりだとか、昔の姿を想像しながら滞在するのも楽しいかもしれない。

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スタッフのみなさんもそれぞれユニークな活動をされている人も多く、ひろーいリビングでくつろぐのもよいけれど、ぜひここではスタッフに話かけて、おすすめのお店や散歩コースを聞いたり、夜ディープな飲み屋にハマるために泊まりにきたりするといいんじゃないかと思う。

近くに元映画館だった「ロマンス座」という施設があるのだけれど、今度はその上階にホテルのような個室メインのまちやどと呼ぶ宿泊施設をつくることになったそうだ。

マルヤのリビングも使いつつ、スッキリと外がみえる個室が揃うようなので、マルヤとはまた違うタイプのゲストがやってくるはず。そうなったときにこの商店街やまちの様子がまたどんなふうに変わっていくのか、これからもとても楽しみにしているのだ。

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