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『旅の空』ネパールの旅 憧憬のヒマラヤの向こうに 12

11日目 トゥクラ(4620m) → ロブチェ(4910m)

 2つ目のピークであるカラパタールを目指す過程でもう一泊を要したのは、ロブチェである。エベレストを見るために、世界中から登山者が集まるこのロッジは、人も多く賑わいを見せていたが、不思議と誰とも話す気が起こらず、何枚も手紙を書いて夜を過ごした。ただ、ここから見えるヌプツェは、ひと味違う美しさで、いつもの夜のトイレも苦痛じゃなかった。


12日目 ロブチェ(4910m)→カラパタール(5545m)→ディンボチェ(4410m)

 人は様々な理由から不機嫌になる。ある時は疲れていて、ある時は気に障ることを言われて…。しかし、そのときぼくは、生まれて初めて、ただ寒いというだけで不機嫌になっていた。冬は厳しく冷え込む北見で鍛えられたのに、いい加減冷え切った身体に吹き付ける寒風は、ぼくを黙らせるのに十分だった。

 山に入って12日目、いよいよ二つ目のピークであるカラパタールへ向かう。とにかく寒い。明け方から歩き始め、しばらく歩いていると、ようやく太陽が昇ってきた。「カモン、サン! (Come on Sun!)」、ラクパさんが叫ぶ。全く同感だ。いやぁ、太陽ってすごい。じわじわとそいつが昇ってくると、確実にあたりが明るくなり、身体が温かくなってくるんだ。

 カラパタールは、エベレストのベースキャンプ近くにあって、エベレストやヌプツェの展望台となっている。ゴーキョピークからの眺めのほうが品は良かったけど、こちらはさすがに間近で見るだけあって、迫力はものすごかったです。参りました。

エベレスト(左)とヌプツェ(右)


 その日の夕方、ディンボチェに着いて、久しぶりに顔を洗った。洗面器一杯のお湯で顔を洗い、その残り湯で手と足を洗う。10日以上も洗っていなかった身体は、すぐにお湯を茶色く濁らせた。いつもは飲むためにしかもらえないお湯を、それ以外のことに使える。そんな「贅沢」を満喫し、ぼくらはさらに新たなピークを目指した。

アマダブラムを背景に

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