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Wasted Youthやろうの一言

全感覚祭がさっておよそ5日経った。今でも胸がいっぱいである。

手前がやれ。

発表があってから日に日に落ち着かなる心。
前日はしこたま寝てやろうと思っていたのに4時間くらいしか寝れなかった。昼寝も大してできず。めちゃくちゃ緊張していた。

なんでこんなに緊張してんのかって、そりゃ夜中だし、外だし、ホスピタリティなんてあったもんじゃない、そんなフェスだと思ってたからだ。
まあそれは間違ってた。誰一人としてオーディエンスではなく、祭りへの参加者だったから。テメェでやりやがれ。だった。

私は友人後輩恋人を連れて5人で会場に向かった。会場について少しうろうろするも事前発表のステージの数とどうも合わなかった。一個たりねぇ。どこでやるんだ?って思ってた。マップもないし。自分でやれよって、話なんだな。祭りに参加する意気込みが足りなかったことを痛感した。

人の波に、渦に溺れる

渋さ知らズを前の方で見て、旧時代の音楽のあり方というか、極めて荒々しくプリミティブなショウに感動していると、間髪入れず後ろから「音出しするから目と耳を塞いで下さい」と。

太鼓がボコボコとなり始めて、人が一気に動き始めた。切腹ピストルズが始まる。始まると言うか、地続きだった。人の波に押されてって言う表現、たまにみるけど本当に人の波だった。
本気で抜けようと思えば抜けれたものを、連れは前に行くと。スルスルと人を避けて前へ前へ。
いきなり独りぼっちになってしまうんじゃないかって思って、これから何が起こるかを考えずに、そして押され流されるがままにあっという間に2列目ほどの前に追いやられる。
そこからはもっともっとプリミティブな空間に入っていった。そこはもう地獄か天国か。
まるですり鉢で当たられるゴマのような気分になった。
もう、揺られる押される。身が削れていく中で視界に広がるのは濃密なリズムを体から発する漢たち。強烈すぎる。
怖くて、人がいるのに独りぼっちで、だけど踊る体。意味がわからない。良いも悪いもなく只ひたすら揺れる人の群れ。途中、目の前の人が視界から消えた。でもすぐに引き上げられる。目の上を太鼓が通り過ぎていく。歪んだ三味線の音が体を通り抜ける。連れは最前で余裕綽々といったふうに踊ってて、俺は生きるために踊った、拳を、声を上げた、といった具合だった。
すごく長く感じた演奏が終わり、最前に行った連れと合流する。ケロッとしていた。びっくりだいつも。

束の間カレー、広がる音


体が暖まり切っており、寒さなんて一切感じなかった。全感覚祭で暖をとるには、最前で暴れるしかないらしい。その一瞬は暖かくいれる。

そのあとはいきなりトップギアの演奏に身を晒してしまったから、一度休憩に。改めて会場をうろついたり、タバコを吸ったりした。
オライビさんの祭壇とも呼べる展示があった。GEZANにとって彼女の存在はかなり大きかったのだろうと。今回の全感覚祭は彼女とこれからもずっと一緒にいるための祭りだったのだと思う。
ライティングや不思議な動線にまるで異世界に迷い込んでしまったかのような錯覚を得た。森、草原、海。不思議な場所だった。
後になって知ったけど、全感覚祭はビタビタに横付けしたトラック5台で出来てたらしい。なんでアイデアなんだ…

有刺鉄戦も見たかったが、無理だった。
踊ってばかりの国の音出しが聞こえてきて、全感覚ステージのある広場へ。
いきなり疲れ切ってしまい、この先まだ数時間あることも考えて、後ろでゆったりとみることにした。
今年で見るのが3回目になった踊ってばかりの国の演奏は、冴えてた。というか、いっつも冴えてる。安定して素晴らしい演奏をしている。
特段普段聞かないが、流石に3回も見ると曲を覚える。!!!は好きな曲で、濃密でゆったりとした音が広場いっぱいに満ちて心地が良かった。
今回もboyの演奏はなかったけど、それで幸せを聞くことができた。後輩たちに囲まれて冬に演奏したから。音源がないから比較はできないけど、おそらくかなりゆっくりな演奏で、眩しい光を音に乗せて遠くまで照らす演奏に心が清らかになったね。

連れが鎮座は前で見たい、と言うことで踊ってばかりの国の終盤にはかちこみステージ側へ。そしてやはり踊ってばかりの国が捌け終わる前に鎮座のトラックが始まる。
そして鎮座もギュウギュウの観客に囲まれてしまった。
当たり前だがウマ過ぎる。すげぇカッコよかったが、普段聴かないからここでずっと聞くのは辛いな、と思っていたら、一緒に来ていた友人が人の波に押されて俺の横まで流れてきた。面白すぎて周りの目を気にせず笑ってしまった。だって友達がいきなり流されてきたんだから。笑ったっていいよね。
鎮座を友人と脱出して、セミファイナルジャンキーへ。演奏は高倉健。サブスクで調べても出てくるのは本人で、このバンドのことなんて何もわからなかったけど、見に行った。
この時の演奏は音が小さくてクタクタになった自分にはちょうど良かった。ハードコアやってたけど。
最前でモッシュとも呼べない何かを見届けた。暴れるなあと。何も考えなくてもいいんだなあって少し思った。そのまま少し休み、腹ごしらえをしようとカレー屋の列に。
この祭りに来ている人たちのほとんどはGEZANは間違いなく見るだろうと。そのためにそこにあった小一時間は丸々飯屋がフル稼働する羽目になっていた。どこも行列。
実は昼間にシンボパンを買いに行っていた。ソワソワしすぎてたし、家からすぐそこにあったからね。
結局丸々並んで、ぱっと食べてGEZANに向かう。

パンパンに膨れ上がった気持ちの行方

なんの曲をやるのだろうか。時間も長くはないし、全感覚祭だし、候補は無限にあった。body oddで暴れるのか、JUST LOVEに魂を捧げるのか。優陽で前に進むのか。予習しようと意気込んだものの、なんだかんだ祭りの前に聞いていたのはGEZANばっかりだったからね。
全然予想は一個も当たらなかった。silence will speakの曲を抜いたセットだった。そして新曲は2つあった。ガッツリレゲエに影響を受けた曲と、エレクトロに接近した曲(こちらはおそらくstand by meという曲だろう)だった。この夏の暮れ、マヒトはフィッシュマンズに帯同していたから影響があるのだろう。
もう一方の曲は、おそらく直近で書いた曲なのだろう。JUST LOVEの詞を書いたことを引用していたり。誰かの話し声がサンプリングされていたり。コーラスの雰囲気はあのちから続いてきたものに聞こえた。詞に「君」がいたが、オライビのことなのだろうか、とかいろいろな想いが巡る曲。
どちらもこの先のリリースが楽しみである。

ここでMC。全感覚祭は暴れたいっていうやつのための祭りでもあったけど、自分にとって不都合で、トリミングして無かったことにしてしまいたいような気持ちも連れて行きたいと思ったとマヒトは話していた。

ありがとうございました、とマヒトがまっすぐ言い放ってドラムロールからend rollが始まる。素晴らしい引きに感じた。美しかった。
演奏が終わり、喋れなかったからといってロスカルが話始める。だがマヒトはそれを「wasted youthやろう」と言い放って遮った。ロスカルは「変わるの最高」と叫んで、傾れ込むように演奏を始めた。
いつもに増して荒々しい演奏だったし、マヒトは長くサーフしていた。

ここからは個人的に感じたこと。全感覚祭は普段いろいろなことを我慢している人たちが集まる祭りだと思うんだ。そういう人たちが、素直な表現を素直にやれる人たちを見て、まるで自分が言えないことを声に出してくれているかのような気持ちになって、踊る。それに自覚的であってもなくても別に構わない。
対して表現者はその人たちのために表現するのではなく、彼らは自分の気持ちに従順に生きているだけだと思う。だけど、踊ってくれた方がやっぱり嬉しいのかなって。俺は大学で音楽表現の真似事やって、踊ってくれた方が嬉しかったし。
マヒト、十三月はこの祭りを一か月で仕込んだから、やりたいことを最大化できなかったのかなって。マヒトは全感覚祭で暴れたい奴ら、踊りたい奴らの気持ちを無視し切れなかったし、ここ数ヶ月で溜め込んだ気持ちの表現を、無限に動く心と脳から溢れる気持ちが抑え切れなかったのかなって。だから、彼らがセッティングしたやれる範囲をはみ出て行く勢いがあって、それがwasted youthに繋がったのではと感じた。素直な気持ちが「wasted youthやろう」という一言に繋がったのかなって。
限界をはみ出し超えて行く煌めきに立ち会えたことを本当に嬉しく思う。

祭りの後

そのあとのことなんてたいして何も覚えていない。もとより体力ないし、やっほーの音意味わかんないし。ほんとはWetnapも天国注射も見たかったけど、遠くから流れてくる音を聴くことしかできないほどに気持ちも体力も使い切ってしまった。

朝を迎える前に引き上げようと話をして、タクシーが来るのを待った。その時、Bobに似た誰かを見かけたけど、何も考えてなかった。そしたらなんてことない、朝まで残った人へのご褒美happyがあったらしい。悔しいね、気持ちも体力を使い切って尚、全感覚祭はまだ俺らを連れて行こうとしていたのか。ついて行きたかった。

南武線に揺られ立川、マイホームについた。電車を降りるとあたりは明るかった。
23年生きてきて、こんなにいろんな感情を突っ込まれたのは初めてだった。体力的な限界と、精神を積極的に解放してすり減らして行く快感があった。

いつもライブやフェスが終わると気持ちを忘れたくなくてこうやってnoteにぽちぽち字を打ち込んでいる。毎度書き漏らした感覚があるが、今回は半分も感じたことを書けてない。あまりにも知らない感情や出来事に出会いすぎた。
これから先この感覚に出会ったときは、名前を呼べるようになりたい。

今度の全感覚祭はいつなんだろう。また、またあの祭で心身を燃やしてもらいたいと思う。

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