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king of pop 2018/9/9 Artist紹介➆  SUPERBEST インタビュー 【音楽を愛し信じ続けるover30達の、愛という狂気のカンタービレ】

このバンドの音源は、ひとつしか貼らない。この、king of popのバンド枠に入るべきバンドとして選んだのは、昔、wearerというバンドを率い、
「東京の夜が廻りだす」という曲を作り、「叶わない夢…」と歌っていたYKという男と、その昔ソロのアルバムを出していたトムソー13世という2人を中心とした、新しいバンド、その名もSUPERBEST。因みにトムソー13世氏のアルバムがsnoozerに掲載されたのは2003年。そしてYK氏の名刺ともいえる、「東京の夜が廻りだす」を発表したのも、今から数年も前。そう、この二人は、大好きな音楽を、何度も何度も再編成し、違う名前を持ち、やり直している。何度も、音楽という愛する人に告白を繰りかえすかのように。

「あなたがすき」
この言葉を、あなたは人生で何回言ったろうか。その口で。
情けないことに、たぶん自分はこの言葉をはっきりと人に語ったことはない。この口で。この言葉で。今好きな人にも言えていない。

どんな世界になっても、この言葉から、愛なんていう疑わしい、それでいながら人を、サークルを、社会を、際限なく降りまわす狂気のウィルスのような感情はなくならない。愛という言葉に、どこまでも人は感情的で、身勝手だ。だけど、このSUPERBESTの曲のリリックからは、「伝えたかった」「届けたかった」という言葉がこぼれ出す。やりたかったことは、楽しいことは、常に過去。その失意が殺意に代わるかのように狂おしい感情を代弁するような、塗りたくった壁のようなエレクトロニック。
人を愛することを気軽にでき、人を楽勝で傷つける時代は過ぎた。
それは時代が楽だったからだ。
平均所得は落ち込み、情報は美しい恋愛物語と顔を見せ続け、恋愛というゲームはとてつもなくいびつになった。誰もかれも完璧を求め続け、自分にベットする前に打ちひしがれる。愛、それは男女間だけじゃない。音楽への愛、社会への愛、あらゆるものへ言えることだ。

だけど、この、「あなたがすき」という、この事実だけは疑えない。
それが何かを起こすかもしれない。多くのものを傷つけるかもしれない。

それでも、このSUPERBESTは歩き出した。決意したのだ。
そんな年上を、俺が応援しないわけがない。
この1曲で信頼に足ると判断したのだ。
がっつりと話を聞くべきだし、むしろ一度YK氏と話した時、かなり90年代のポップスの話で盛り上がった。それは、実はspotifyでは浮かび上がってこない、日本の音楽の一側面であり、そこを聞きつつ、snoozerの「のだなカンタービレ」よろしく、2人の「邦楽」ヒットをうかがった。気合が入りすぎて遅くなりかつ長文からで申し訳ない。でもな、表現の愛ってのは、愛ってのはな、語りだすとうるさいんだよ、コミュ障ってやつは。ひひひ。
ではおっさんたちのだべりに付き合ってほしい。

not in serviceの邦楽ロック(この世代ということで)3枚
①WANDS/時の扉
②L⇔R/doubt
③moon child/MY LITTLE RED BOOK

YKの邦楽ロック3枚
①TM NETWORK/ CAROL ~A DAY IN A GIRL'S LIFE~
②CHAGE and ASKA / SUPER BEST II
③SPIRAL LIFE/Freaks of GoGo Spectators2 -Sell Out-

トムソー13世の邦楽ロック3枚
①Dragon Ash/Mustang!
②馬渡松子/バラブシュカ
③スピッツ/名前をつけてやる

―まずこれは…なんですかこれ?

YK「これ、TM networkが初めて出したコンセプトアルバムで、キャロルって女の子が、ロープレのゲームのファンタジー世界に入り込んで、それでTM nerworkをモデルにした3人の戦士とその子が出会って、世界の平和を取り戻す、みたいな内容なんですよ」

―すごいな(笑)

YK「ドラクエとかも流行ってましたからね。そういう西洋系ファンタジーみたいなものが世の中に浸透していた時代なんで。さらにメディアミックスも展開してるんですよ。木根さんが小説買いてて。シングル曲も、「逆襲のシャア」の曲とか、シティーハンターとか…。名曲そろいで、」

―へー。今だとアニメのタイアップとかあったらそのイメージが強くなっちゃうけど、それらの曲を入れてコンセプトアルバムを作るのが熱いですね。

YK「その頃からメディアミックスに関心があったんですよね。ダンスミュージックを売るために、アニメとかとメディアミックスするんだっていう。
ビートはテクノとかエレクトリックなんだけど、中身は少年少女のことを歌うんだ!っていう、アニメとかにも関心を伸ばして、なんていうんですか、<青春テクノ>みたいなものを打ち出したんですよね。でもそれが一部ではTMだっせえみたいなものを作り出してしまった、みたいなアルバムでもあるのかな。」

―メディアミックス作品、流行りましたもんねえ。俺も好きなアニメはメディアミックスしてた作品多いですよ。天地無用!とか…あと今になってハマってる、パトレイバーとか。

―あ、ちなみに、僕のセレクションがこれです(と自分のセレクションを見せる)。ここらへんって、なんか、買えなくないですか?(笑)

YK「わかる。俺もL⇔Rとかもって来ようと思ったけど、なくて!(笑)めちゃくちゃ家の中も探したんですけど!」

―spotifyみたいなサブスクリプションサービスも、あんまにそこらへんコンプリートしてないんですよね。moon childはあるけどL⇔Rはなし。ナンバーガールとかでさえも「SAPPUKEI」より前のものはない。国内のラップのインディーっぽいのはないですね。

YK「ミスチルがサブスクリプションサービスやったとき、チャート独占してましたよね(笑)」

―あれ絶望でしたねー(笑)。

YK「でも、not君のセレクション見てても、ここらへん、世間の情勢も絡んでるなあって気がして、1995年以降の。バブルはじけて。L⇔Rとかがポストミスチルだって言われて、何万枚も売れて、もてはやされたけど、だんだん落ち込んで、みんな最後に暗い作品が出てくる。「doubt」とか…兵どもが夢の跡みたいな感じですよね。それがJPOPのある種の敗北を見た気がします。」


―WANDSもどんどん人が消えていって、オリジナルメンバーいなくなったじゃないですか。それがなんか印象に残ってて。

13世「WANDSもどんどんグランジ化していくんですよね。」
YK「「Secret Night」とかかな。」

―みんなニルヴァーナの影を背負うように(笑)

13世「みんな、ポップであることがカッコ悪いみたいな空気になってきて(笑)、オルタナとかは、明らかにコード進行、今までと違うなって」
YK「ナンバーガールとかね。だから、JPOP」
13世「音楽アカデミー系とうか、学理に則っていた人がどんどんいなくなったみたいな。それがなくてもいけるぞ、って人たちがどんどん増えてきた」

―それがいわゆる「98年の世代」かもですね。TMGEとか。…ではトムソーさんのをって、それ、馬渡松子ですか!?(笑)


―馬渡さんはなー(笑)。幽遊白書大好きだからなー(笑)めちゃくちゃ世代ですよ。あ、でも「デイドリーム・ジェネレーション」しかないや(笑)


13世「ヴォーカルスタイルが独特で、半音階とか、面白くて、歌いこなしが独特なんすよ」
YK「メロディが変だよね すごいところで変調したりするし」
13世「音外れてない?ってとこまで(笑)」

―他に、今の音楽家でそういう独特な歌いまわしする人います?

13世「ちょっと前は…近いかなって感じたのはaiko。」
二人「あーー。」
13世「このメロディにこのメロディ打つかっていう。この…階段っぽいっていうか、ここまで上げてここまで下がるか」
YK「aiko節ってのがありますからね。」

―タナソーも大好きですしね。


―次は…「Mustang!」Dragon Ash!

YK「前はパンクだったもんね」
13世「むしろ、シューゲイザーなんすよ。このリヴァーヴ感がすっごい好きで…。これ、ドラゴンアッシュなの!?って思っちゃうとかも」
YK「降谷さんって、宅録派だったんですよね。」
13世「そう、だから、全く同じMTRを買ったりして。で、そのDragon AshのKJ氏が敬愛してやまない…Spiral life。」

―これ…俺知らないな。

YK「おおっ、Spiral lifeを通ってない!?」
13世「僕ら二人はめちゃくちゃ影響を受けましたね。」
YK「メンバーの一人が車谷さんっていうAIRを後に結成した人で、渋谷系の異端児みたいな、でもかなりロック寄り。スマパンとかの影響とかモロに受けてる。」
13世「もう一人の石田小吉さんは、スピッツのプロデューサーとかやってるんです」


YK「こう並べてみると、アンダーなものがオーバーになってきた時代って感じなのかもなあ。」

―ロックが多めですが、では趣向を変えて、打ち込みとかで最近好きなものってありますか?

13世「今は…ダブステップとかですね。au5とか。ポストダブステップみたいな奴です。あと、XXYYXX。サイドチェインのかけ方とか独特で」

―YKさんはどうですか?

YK「僕はね、トムソーくんの教えてくれる曲を素直に聞いたりとかで(笑)」
13世「あと最近のトロピカルハウス…BPM100くらいは気持ちいいです。」

―kygoとかodeszaとかですか。

13世「あとベタですけど、Martin Garrix。発想が面白いなあって。ドロップで、盛り下がるけど、ガッツリ踊れる。」

―いい感じのbpmの遅さって話で、SUPERBESTの曲だとまさに「あなたがすき」がいいなあと思ったんですよね。115くらい。

YK「二人の共通認識で125bpmくらいのはもういいだろっていう気持ちがあるんですよ。それを押さえて110、100前後くらいで、気持ちいいグルーヴを作っていきたいんですよね。」
13世「あとこだわりとして、極力ハイハットを入れてないんですよ。」
YK「ドラムはスネアとキックしか入れてないっすよ。四つ打ちの裏にハイハットなんてオワコンでしょ!っていう」
13世「ハイハットらへんがあるところをシンセで埋め尽くしたい」

―トラップミュージックについてもなんか消化しようとしてるんですよね?

13世「今練習してる曲は、トラップと、jukeとか、ああいう感じを目指してますよ(笑)」
YK「そこらへんも取り込んでいきたいんですよね。あとタナソーに言われたんですけど、プロダクションとかわかったから、新しくやろうとしていることはオッケーだから、もっとクラブにいけ!って(笑)」

―トラップの歌い方の独特なとこも吸収してほしいすね。フューチャーとか(笑)

13世「ヒップホップのトラックメイカーは、コード感が独特なんですよね。すごいなって思います。」


―まだ会場限定EPとかですけど、アルバムを出そうとはしてるんですよね?

YK「勿論!アルバムは来年くらいかなって。理想はまずアナログを、レコードストアデイに狙って打って、ツアー回れたらいいすね。DJの人に、もっと知ってもらいたいなって気がしてる。」

―ファーストアルバムを作るとき、現状、どのアルバムの間と間にはさみたいかっていうのを、聞いていいですか?どっかの雑誌みたいですみませんが(笑)YKさんとトムソーさんで1枚ずつで。

YK「僕はやっぱりPassion Pitの1st(『Manners』)ですかね。」

―そのこころは?

YK「やっぱり、ラブソングを歌ってて。音はデジタルだけどライブはすごくフィジカルじゃないですか。」
13世「僕は全くライブのことを考えずに曲を作るんですけど、YKさんは、ライブを前提にいろいろ考えるんですよね。それがいいバランスになってる。」

―トムソーさんはどうでしょう?

13世「…zeddですかね…zeddの2枚目。(zedd「True Colors)」


YK「EDMの好きな若い人にも響いてほしいですからね。でも、俺らと同じ世代の30代の人にも多幸感、エモーションを与えたいと思ってます。その意味でもやっぱりPassion Pitはロールモデルかな。でも自分の思惑をどうトムソーさんが崩してくれるのかが、すっごく楽しみ。」

―新しいフェイズですもんね、すごく刺激になるし、楽しいですよね。

YK「いやー、すげー楽しいですね。」


…以上、非常に長くなって申し訳ないし、読みにくいのはすべて俺のせいによるものだ。許してほしい。だけど、このありきたりな男3人の話にある、縦横無尽、古今東西の音楽の話の中身に、なにか俺の思い描く、ポップの萌芽ある気がする。L⇔Rの曲「STAND」にこういうくだりがある。
「熱狂はさめる 戦いは終わる そしていつも何か拾い集める」
90年代、00年代、10年代と音楽の夢を拾い集めたおれたち。
幾度のバンド、トラックメイカーの勃興と斜陽と終わりをみてきた。
でもいまだ、音楽や、あなたを愛そうという病気を抑えられない。

今一度、「あなたがすき」という曲と、最後にYKが語ったpassion pitの
「the Reeling」の曲に耳を傾ける。「僕を見てくれ!」という叫びと「あなたが好き」だという叫びは、小さい単位から発せられる叫びだ。それが大きなエレクトロニックに取り囲まれ、この社会で生きる誰かを祝福する。その声の意味は届かなくていい。聞こえるか聞こえないかだけでいい。

また何度も愛の病に伏せた音楽家は立ち上がり、新しい場所で歌うだろう。






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