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『さよならTSUTAYA西新井店』1.「ピアニスト」

僕は2004年、おそらくそれくらいから、ずっと西新井で生きている。
多分、生きている場所としては、
この足立区の西新井が一番長くなってきている。
そこで、僕がずっと利用していたTSUTAYA西新井店が、
今年、2018年2月一杯をもって閉店することになった。
この一連の投稿は、呼吸のように借りてきたdvdを一本づつ紹介することで、なにか、TSUTAYA西新井店に関することを書き残しておこうと思い、徒然と書き連ねる次第だ。



最初は、ミヒャエル・ハネケの映画にしようと決めていた。
というのも、なぜか、西新井店には、異常なほどにミヒャエル・ハネケ作品が充実している。
おそらく、存在しないのは「隠された記憶」だけなのではないか。初期作品の「セブンス・コンチネント」「ベニーズ・ビデオ」「71フラグメンツ」の感情の氷河化三部作(と言われている)から、最新作の「愛、アムール」まで…あ、そういえば、「白いリボン」もないか。「白いリボン」はTSUTAYA王子店で借りたはずだ。会社に一番近いTSUTAYAになる。それまで一番近かったTSUTAYA東十条店も、西新井店より先につぶれていた。

TSUTAYAの相次ぐ閉鎖についてはこの投稿に詳しい。

この記事を見て、東十条店の閉店を知ったが、まさか最寄りの、西新井駅にほぼ接続しているに近い立地の西新井店がなくなるなんて、ちょっと想像してなかった。

「ピアニスト」は、過保護な母親にピアノだけを教えられ、ピアノ教師として生きる30代後半の女性と、それに恋しアプローチする金髪のイケメンの物語だ。だが、ひねくれ者のハネケが、普通のラブストーリーを綴るわけがない。主人公の女性は完全に愛に対する観点がずれ、それが壮絶な人間関係のやりとりを産み出していく。

僕はそういえばちょっと前に「海月姫」を借りたのだった。僕には珍しく、途中で見るのをやめてしまった。
dvdには、本編の映画以外に「新作情報」として予告編が流れる。それがすべて日本の甘ったるい恋愛映画だったので、完全に胸焼けしてしまい、本編も、結局は都合よくありきたりの「恋愛」に嵌め込まれてしまうのが見えてきた時点で、時間の無駄だと感じてしまった。原作の漫画を読んだ方がいいだろう、と。人並みにのんこと、能年玲奈は好きなのだが。

「ピアニスト」は、一方で、恋愛だった。当たり前の恋愛映画とは違う、七転八倒の恋愛。性からも逃げず、愛というもののネガもポジも見れる。もとからハネケの映画に虚飾はないのだ。だから何人かはそれに面食らう。大分ハネケ映画を見て、面食らってきた自分から言わせれば、この「ピアニスト」はハネケ諸作の中ではカラフルで、ポップと言ってもいい。ラストシーンも、ある意味では爽快でさえある。


それにしても、ここまでハネケ映画を、TSUTAYA西新井店に揃えた人物は誰だったんだろう。それも、ハネケ映画のように謎めいてる。目の前には、韓流ドラマの棚がごっそり消えた、なにも置いてないdvdラックがある。たしか、「ファニーゲーム」を見て本格的にハネケを見ようとする前に、見たのはハネケが監督した、フランツ・カフカの「城」だった。それも、あと一ヶ月もたたず消えるだろう。

3/3に、ハネケの最新作「happy end」が公開される。
それまですべてのハネケ作品を僕は見るだろう。
理由はよくわからない。
ハネケのことだから、きっと、一筋縄ではない「happy end」を見せてくれるだろう。
この店の「happy end」も、ありがちなものにしたくなかった。だから自分はこの投稿をしてるのかもしれない。






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