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プレッシャーとの勝負

今回はオニキ君にスポットを当てました。結局ウメハラさんすごいの感想にまたなってるんですが!笑
今回の画像を選ぶ為にアーカイブを見直してました。勝った時にウメハラさんの方を振り向いたオニキ君を見て、もうね、なんかね、熱いものが込み上げてきました。
今回はそんな回です!
読んだ後是非アーカイブ見てくださーい!

『対空100本ノック』

第7節の3週間くらい前から僕にはある課題が課せられていた。
もちろんウメハラさんから出された課題だ。

その内容は【対空100本ノック】である。

対空とは相手のジャンプ攻撃を迎撃する事だ。

このゲームはコンピューターに動きを覚えさせて同じ技を繰り返し出させる設定をする事が出来る。
ウメハラさんはコンピューターのジャンプ攻撃を迎撃する、対空練習を最低でも1日100回はやるようにと指示をくれた。

もちろんやった。
第7節までの約3週間ほぼ毎日やった。

やり続けたがなかなかコレが上手くならなかった。コンピューター相手なら出来ても対人となると難しかった。

ウメハラさんはこう言っていた。
〝相手が飛んできたら反射で対空出るように身体に染み込ませてください〟

部活みたいだな、、

そんな風に思った。
相変わらずウメハラさんの指導は地道で自力をつける教え方をしてくれる。

言われた通り練習を続けた。
しかし反射で対空が出るようには、なかなかならない。
そして大した上達を実感できないまま第7節当日を迎えてしまった。

『第7節』

第7節辺りまで来ると僕の勝負への意識はまるでアスリートだった。

収録現場へ向かう朝、シャワーを浴び目を覚ます。げん担ぎをするように国定戦で勝った時のパンツを履き、同じインナー、同じズボン、同じ靴で収録現場に向かった。その道中もイヤホンで音楽を聴き気分を高めた。聴く曲は気分が高まる前向きな曲だ。『勝ち曲』という、なかなかイカした題名のフォルダに入っている曲をリピートで流す。

ビギナーの素人のくせに生意気にもアスリートのようなルーティーンめいた行動を取りながら現場に向かった。

ビギナーの本業でもない芸人ですらこんな感じなのに、プロの選手の大事な試合前は想像を絶する苦労とかあるんだろうなと、この時は感じたりもした。

現場に到着。

気合いが入りすぎて入り時間の1時間程前に楽屋入りした。そしてチームメンバーを待つ間、備え付けのゲーム機で練習に励んだ。

しばらくしてオニキ君が来た。
オニキ君に

「今日の試合どうしたらいいと思います?」

とざっくりとした質問を投げかけた。

するとオニキ君はこう答えた。

「相手はジャンプ攻撃が多いので対空出せれば勝てますよ」

(この子はおとなしそうな顔して簡単に言ってくれるぜ。その対空が不安なんだよなぁ)

とハイクラス目線の物言いに嘆きそうになったがそんな事は言ってられない。
だったら相談しよう。

「対空練習したけどイマイチ不安で、、対空出来ないかも!って時どうしたらいいです?」

するとオニキ君
「だったらバックジャンプして逃げるのもアリですね」

と瞬時に解答をくれる。
頼りになるわぁ、、

という事で対空の不安な穴をバックジャンプで埋める作戦で行くことにした。
あとは本番中のウメバイスに頼ろう。
それしかない。

あれだけ気合いを入れまくって来たはずだったが結局他人に頼るという、ある意味いつも通りのルーティーンで収まった。

『試合開始』

試合開始の時刻がやってきた。
相手チームは板橋ザンギエフさん率いる板ザンオーシャン。ビギナーは木村君。

ビギナー戦開始。

木村君はオニキ君が予想していた通りの動きだった。
ジャンプ攻撃を多く仕掛けてくる。
対空の不安な僕はとにかく飛んで逃げ回った。
2人共とにかくピョンピョン跳びまわる試合内容になった。
絵面的には逃げ回って対空が出来てない感じにはなった。
だがこの作戦がわりとハマった。

大きな連続ダメージをもらう事なく、うまく逃げながら1セット目を取る事が出来た。

1セット目終了後ウメハラさんは、珍しく笑顔でアドバイスをくれた。

「対空さえ出来れば怖くないです。ジャンプと対空さえすればむしろ有利です」ニッコリ

対空さえ出せば?!簡単に言ってくれる。それがむずいんだ。

デジャブ。
オニキ君もウメハラさんも同じ事を言う。
しゃあない。ならやるしかない。対空を。
練習の成果を見せるのはココだ。

とにかく対空に全神経を注いだ。
するとどうだ。
決まる。対空が決まり始める。
もちろんミスはあるものの対空は出来ている。

対空が決まる度めちゃくちゃ嬉しかった。やってきた事は無駄じゃなかったと感じた。強力な必殺技や連続技が決まるより遥かに嬉しい気持ちになった。

そしてなんとか2ラウンドを先取し勝利する事が出来た。ウメハラさんやオニキ君の言う通り対空を意識したら勝つ事が出来た。

この時は国定戦のように驚きの
「やった!勝てた!」
ではなく
「練習して来て良かったぁぁぁ」
としみじみ勝利を噛み締めた。

僕にとって積み重ねた努力が実った思い出深い一戦となった。

『メンタル』

さあ第7節ハイクラス戦前まで振り返ってきた。ココからは第8節のハイクラス戦までオニキ君メインで振り返りたいと思う。
何故かと言うと第8節のネモオーロラ戦直前にウメハラさんがしたオニキ君への声かけが非常に衝撃的だったからだ。

時間を少し戻そう。
第7節の試合前。僕は気合いを入れるも緊張の入り混じった状態でスタンバイしていた。
でもその緊張状態を自分の中で〝良い状態〟だと考えていた。

この第7節を迎える前に僕は緊張についていろいろ調べた。緊張でプレイに悪い影響を及ぼしたくなかったからだ。
調べた中で以下のような記事を見つけた。

〝緊張は悪いことばかりでは無い。緊張状態は集中力を上げる効果もある〟

これは良い事を知れたと思った。
緊張をプラスに受け入れられるし集中出来るのはゲームをやる上で助かる。
僕は緊張しないように意識するのではなく、緊張を受け入れて、これが良い状態なんだと考えるように意識した。

第7節の試合前スタンバイ中。
僕はオニキ君に

「緊張しますねぇ」
と話しかけた。

するとオニキ君は

「そうですねぇ」
と言葉通り緊張した様子で返してきた。

おっ!これは調べた事を伝えるチャンスだ!そう思った。

先程書いた、緊張は集中力を上げるらしいという話をオニキ君にした。
オニキ君はなるほどと言った感じで聞いてくれた。

効果はあったかどうかは本人にしかわからない。

ナガシマVS木村のビギナー戦が終わり続いてはハイクラスの試合だ。

オニキVSもっちゃん
オニキ君はストレートで負けてしまった。

試合前、緊張について余計な事を言って意識させてしまったか!と若干僕は気にした。

このゲームは技を出すためにコンマ何秒での判断が必要とされる。メンタルが関係しないわけがない。
何かしらの悪影響を少しでも、ほんの少しでも与えてしまったか?
言葉をかけるのも慎重にならなければ。
そう反省した。

続いてエクストリーム戦。
相変わらずウメハラさんが試合で纏う空気は凄まじい。何度見ても覚醒ウメハラさんには圧倒させられる。
ウメハラさんは呼吸で集中力を高めたりメモでの確認をいつも通り変わらぬ日常と言った感じで行う。
一朝一夕で緊張と向き合う僕とは大違いだ。
これが日常なのだろう。
今まで何度も何度もとんでもないプレッシャーと戦ってきたから淡々と集中力を高める事が出来る。
これがトッププロ。恐ろしい、、

ウメハラさんは見事勝利した。流石だった。

『第8節』

第8節の相手チームはネモさん率いるネモオーロラだ。
ビギナーは奥村さん。
そしてハイクラスは勝率一位のあんまん君。あんまん君はハイクラス最強の呼び声が高い選手だ。

この時点でのオニキ君の勝率は2勝5敗で三連敗中だった。

試合直前のスタンバイ中。収録の都合上、若干の待ち時間がある。そこで僕は何を話そうか悩んだ。

(オニキ君に他愛もない話でもしようか)

(いや、下手に何か言ってメンタルにどう作用するかわからない)

(何より本人が連敗中でプレッシャーに感じている筈だ。変に刺激も出来ない)

(かと言って無言で待っていても緊張感は増していく)

結局僕はしょうもない小ボケをしてよくわからない空気を作り出す事しか出来なかった。

するとここでウメハラさんは思いもよらない言葉をオニキ君にかけた。

「オニキくん。ここは勝ってもらわないとキツイかな」

え???
耳を疑った。
オニキ君はただでさえ負けられないとプレッシャーに感じている筈だ。そのオニキ君にウメハラさんは追い打ちをかけた。

〝勝ってもらわないとキツイ〟
そんな事言って大丈夫?!
余計に萎縮しないかな?
オニキ君が心配になった。

この節までのウメハラさんを見ているとわかるのだが本当にこの言葉は意外だった。
これまでのウメハラさんは
「実力さえ出せたら大丈夫だから」
と安心させるような言葉をかけていた。
だがここに来て
連敗中でプレッシャーを感じているであろうオニキ君に!
最強の敵とこれから戦おうっていうオニキ君に!
更にプレッシャーをかけた!!

衝撃だった。
オニキ君の表情を見ても、どんな感情かは読み取れなかった。
ただいつもより静かになった印象をうけた。

いろいろ気になったが気持ちを切り替えた。
オニキ君の事は考えたって仕方がない。
自分の試合に集中しよう。

ビギナー戦開始。

ビギナー戦は危ない場面もあった。しかしウメハラさんとオニキくんのアドバイスで勝つ事が出来た。
途中ウメハラさんにコンボを頑張りましょうと言われたが全然思うように出来なかった。試合には勝てたが、言われた事が出来なかった為、悔しさが残る試合となった。

さあ続いてハイクラス。
オニキ君のメンタルは?
動きは?試合内容は?
あらゆる意味で気になるこの試合。
僕は祈るように後ろで眺めていた。
大丈夫かな?
のびのびやれたら良いな。

そんな事を考えている間に試合は始まった。

動きは良さそうに見える。

ん??

あれ?

あれれ??

1セット目をストレートで勝利。

続く第2セット。

お?

うそぉ!!!

まじか!!!!!

なんと、最強のあんまん君に1ラウンドも取らせる事なく2セット連取でオニキ君は勝った。試合内容的にもかなり集中していたように思えた。
めちゃくちゃカッコ良かった。あのプレッシャーを跳ね除けて最強のあんまん君に勝った。そして何よりオニキ君は自分との戦いに勝ったのだ。

そしてこの後がすごく感動的だった。
ウメハラさんは
〝よくやった〟と言わんばかりにオニキ君の肩をバシバシ叩いて喜んでいる。
よくあのプレッシャーを跳ね除けたと、プレッシャーを敢えて与えたウメハラさんも嬉しかったはずだ。

胸が熱くなった。

オニキ君すごい!
そして試合前あの言葉を選んだウメハラさんもすごい!

しかし、なぜウメハラさんはプレッシャーをかけるような言葉をあの場面で選ぶ事が出来たのだろうか。
連敗中の相手を更に追い込む。なかなか出来る事ではない。そのせいで崩れる可能性も考えられる。

どこまで計算してウメハラさんがあの言葉をオニキ君にかけたのかは計り知れない。

おそらくだが、ウメハラさんは今まで何千、何万回プレッシャーと戦ってきた経験から答えを導き出したのだと思う。
ウメハラさんの勝負勘みたいな物、もしくは経験則から敢えてプレッシャーを与える事を選んだのだろう。

ウメハラさんのくぐってきた修羅場を垣間見た気がした。
日常のように、いつもの生活習慣のように集中力を高めて切り替えたり、オニキ君への声かけの言葉選びでウメハラさんが相当な道のりを歩んで来たのが伝わった。

すごい。すごすぎる。
これがトッププロか、、、、

第8節にして最高にアツい試合を見る事ができた。

だが僕の中でこれを超える、とても胸を打たれる試合が第9節にあろうとはこの時知る由もなかった。

つづく

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