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記事91:日本語ラップ100選②

後悔しかしていない、日本語ラップ100選の2回目。1枚あたり2行くらいの所感を書いて終わりにしようと思っていたのだが。思っていたのだが!

11. DABO『PLATINUM TONGUE』
この歳でこのクオリティのデビューアルバムを出せるという。後にも先にもこの人だけだろうと思う。日本語ラップでNAS『ILLMATIC』にあたる1枚が何か?と問われればこれだろう。
MACCHOもそうだけど、この時期にすでにHUNGERをフックアップする嗅覚も素晴らしい。当時ほぼすべての人がHUNGERを初聴だっただろう。そして聞いたことのないラップにぶっ飛ばされただろう。

12. DJ HAZIME『AIN'T NO STOPPIN' THE DJ』
DJが出してるアルバムから1枚は入れたいな、と思って選んだのがこの1枚。先行シングルでニトロ8人が客演したシングルが500円で出ていて、期待値を高めてくれたっけ。たしかCCCDで、当時PCで取り込むことができなかった。懐かしい。
ニトロ客演の曲はまぁ、8人でHAZIMEを紹介するみたいな何ともいえない内容なんだけど特別感はやっぱり満載だ。
M-3『RETURN OF THE CHANNEL 5 feat. DABO, SUIKEN, K-BOMB』もそうだが、独自の人脈のあるDJはやっぱり強い。意外な組み合わせのM-6『いのちのねだん feat. RHYMESTER』が名曲すぎて、RHYMESTERの新しい魅力を再発見できたのも良かった。

13. DMR『ANTI-MACHINE-SYNDROME』
これを100枚に選ぶのは日本で僕だけだろう。METEORが大好きで、次世代のNIPPSきた!と思っていたものだ。
ROY(現・環ROY)のラップスタイルもこの頃の方が好きかもしれない。パンキッシュMCとか言われてて、宅録品質なもんで叫びすぎて音が割れてるけどそのままCDになってるという。アルバムを1000円で聴けるなんて、このレーベルに貧乏高校生がハマらないわけがなかった。
ラップしたい奴、録音してけよ!CDにして出しちゃるぞ!っていうノリもたまらなく大好きだった。おかげで有象無象のMCがわんさか参加してて、いまも活動してる人の方が少ないぐらい。

14. Dos Monos『Dos City』
DMRからいきなり方針転換だ。つくづくヒップホップは懐の深いジャンルだ。トラックもラップも全部気持ち悪い。でもアルバム1周終わったら2周目、3周目といきたくなる。曲が脳に直接流れてくる感じがする。こんな感じのグループなのにライブパフォーマンスがしっかりしているところも評価ポイントだ。
僕の敬愛するTakatsukiというラッパーが「最近日本のヒップホップ聴いてないけどこれは繰り返し聴いてる」と『in 20XX』を紹介していたことで知った。これはすごいぞと思ってヒップホップ仲間にも連絡したけど、総じて反応は良くなかった。そのうちの1人が言った「ごめんちょっと追いつかない」という反応が今でもお気に入りだ。人にオススメされたものが自分の好みではないときに使っていきたいフレーズだ。

15. EAST END『Beginning of the Endless』
ダヨネの人たちだ。再始動のアルバムは盟友わんさかのお祭りの様相で、賑やかで楽しい。M-10『チョコレートシティ feat. Rhymester』の2組の絡みの安定感はさすがという他ないし、M-12『No Future feat. RIP SLYME』ではすでに売れまくっているRIP SLYMEが、「そりゃ売れるよね」というラップスキルを披露してくれる。MCばかり呼ぶのではなく、M-13『DJ大会 feat. F.G.DJ ALL STARS』ではFG所属のDJが全員集合してスクラッチを聞かせてくれるというのもポイント高い。DJも実力者揃いだよね、としたり顔でFG好きと語っていたあの日よ。

16. EVISBEATS『ひとつになるとき』
自分のトラックに合うラップがうまいのか、その逆なのか。とにかく自己プロデュース力に長けている。韻踏合組合を脱退後はトラックメイカーとしての活動がメインになっているけど、この人のラップが大好きだ。日本語ラップファンはみんな「ちょうどYeah!」って言う。みんなだ。
『ゆれる feat. 田我流』も入ってる。これなんかはもう、日本語ラップで100曲選べと言われても入れる人がほとんどだろう。

17. FEBB『The Season』
たしか相棒のJJJと同時期にソロアルバムを出して、出た当初はJJJのスタイルの方が好きだなーと思っていた。でも後から繰り返し聴きたくなるのはこのFEBBのアルバムの方だった。自身のソロでは外部プロデューサー曲が多いけど、トラックも不穏でヒップホップ的で、とてもいいものを作る。
つるむ仲間が悪かったな、としか思えなくて、亡くなったことが本当に惜しい。ソロアルバム2枚と、GRADIS NICEと組んだ実質ソロを2枚残してくれただけでもありがたい。永遠にかっこいい。

18. Fla$hBackS『FL$8KS』
いやだからアルファベット順の呪いよ。JJJもFEBBもKID FRESINOもトラック・ラップ共にイケイケというおかしな3人組。残念なのはこのアルバム出た頃はまだKID FRESINOがちゃんとラップを始めてなくて、トラックメイカー/DJとしてしか参加していないこと。グループ名を冠したM-7『Fla$hBackS』はFRESINOトラックで、3人の共作として抜群の出来。
FRESINOが本格的にラップを始めた頃にはグループとしての活動が止まってしまっていて、3人揃ってラップをしているのは知る限りで5曲しかない。その5曲でプレイリストを組んで今でもたまに聴いている者です。もっと聞かせてほしかった。

19. Fragment『vital signs』
日本語ラップ界にはこのアルバムがあるぞ、と僕は死ぬまで言ってるかもしれない。トラックだけ聴くとヒップホップらしさは薄いのかもしれないが、参加メンバーを見れば明らかだ。環ROYもS.L.A.C.K.もMIDICRONICAも空也MCも素晴らしい仕事をしているが、このメンツ、この質感のトラックの中で輝くM-11『母ちゃん feat. 神門』は神門の外仕事だとベストワークだと思う。馬鹿にされがちなヒップホップの「産んでくれてありがとう」ネタでここまで書けるのは神門しかいない。

20. GAGLE『3 MEN ON WAX』
THA BLUE HERBだけじゃない、地方から成り上がったグループ。いい具合に力の抜けたラップと洗練されすぎてるトラックのせいで忘れがちだけど。GAGLEのアルバムはどれも甲乙つけがたく、再生回数でいえば最新作の『VANTA BLACK』なんだけどこの『3 MEN ON WAX』には天下の『雪ノ革命』が入っているので。GAGLEには珍しいかもしれない、地方で活動することの矜恃と東京で戦うことの苦悩を真面目に歌い上げる。すべての活動は仙台に雅を持ち帰るために。ここまでヒップホップな曲があるだろうか。

2回目、昨日よりはいい長さに収まったんじゃないか!?まだまだまだ続く…

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